2016年3月30日 21:00
パリコレクション俯瞰、過去、現在、未来へ【2016春夏 Paris collection:横井由利】
デザイナーの宮前義之は、研究室にこもり日夜研究に明け暮れる科学者を感じさせる。3Dスチームストレッチ、ベイクドストレッチと足を止めることはない。21世紀の形が少しづつ見え始めたといわれる今、ファッションは目に見えない、奥深いところで大きな進化を始めているようだ。Arts & Craftsルネッサンス初期には、芸術家という職業は存在せず、後世に名を残す芸術家も職人として仕事をしていたという。ヨーロッパでは芸術と職人技は同じ線上にある。クチュールメゾンにとって職人技を継承することは、最重要課題の一つだ。伝統は人の手と感覚の伝承により生き続けるものだけに、職人のパトロンとなり、仕事を発注することで資金的な援助を行う、パトロネージュの精神は生き続けているのだ。ヴァレンティノ(VALENTINO)は、アフリカの捺染、ウッドビーズ刺繍などのアフリカの部族に伝わる工芸をオートークチュールの域に昇華させ独自の正統派の美学を披露した。
片やメゾン マルジェラ(Maison Margiela)のデザイナーに就任したジョン・ガリアーノは、綿密なクチュール技を使いながら、アバンギャルドな表現法でコレクションを構成し、これからの職人によるクチュールへのアプローチをより豊かなものにした。