くらし情報『ドレスドアンドレスド 2025年春夏コレクション - 水と記憶』

ドレスドアンドレスド 2025年春夏コレクション - 水と記憶

それを〈水〉の領域と換言してもいいかもしれない。なぜなら水は──先にふれたように──決して明確な形を持たず、ある時は鏡のように留まり、ある時は波打ってはやまない、捉えどころなき流動性に特徴付けられるばかりでなく、此岸と彼岸、生と死を分け隔てる、両義的な存在でもあるからだ。自己と他者、生と死をめぐる水の両義性は、水鏡に映った自分を──しかし自分と認めず──熱愛し、視線を逸らせばその姿が消えることを恐れて飲食をも断ち、果ては死に至ったナルシスを思い起こせば充分だろう。

オーバーサイズの白いシャツの背中には、映画監督アンドレイ・タルコフスキーの父、アルセニー・タルコフスキーによる詩「And this I dreamt, and this I dream」が、黒い刺繍で施されている。その一節もまた、波について語っていなかったか──「Dreams, reality, death - on wave after wave」。波から波へ。波にまた波が重なり、無限に襞を織りなしてゆく。布地という平面が襞を織りなすことで衣服という立体へと造形化されるものならば、水面が静かに細波を立てる、その震えから襞を紡ぎだすところに、ドレスドアンドレスドは自己の形を手繰り寄せているのかもしれない。

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