2021年12月11日 18:15
エキシビション「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」六本木で、古代〜現代の貴重な指輪を展示
これにより、中世の建築が再発見され、華麗な彩色を施した装飾写本などにもあらためて光が当てられることになった。そうした中世への関心は、墓地や廃墟と化した修道院、城、大聖堂などを舞台とする暗黒(ノワール)小説にも見ることができる。
本章では、そうした動向を参照元のひとつに生まれた、現代のゴシック・ムーブメントを着想元とする指輪を紹介。十字軍を現代的に再解釈し、深い紫色に彩られるアメジストを騎士の剣で装飾した指輪や、中世の城塞をモチーフとしたもの、薔薇で飾られた棺桶を表したものなど、“此処ならぬ何処か”へと誘うかのような指輪の数々を目にすることができる。
「ヴァニタス」の系譜
一方で「ヴァニタス」とは、「死を忘れるな」を意味するテーマだ。17世紀ヨーロッパのバロック文化に花開いた「ヴァニタス」は、この世の存在は神聖な死のための必要条件に過ぎない、というキリスト教の思想を反映したものであり、18世紀にはこれを反映して髑髏や骸骨をモチーフとした指輪が数多く製作された。
「ヴァニタス(空虚)」の章では、この考えを映しだし、個人の遺毛を収めた「哀悼の指輪」などを紹介。また、第二次世界大戦後のアメリカで退役軍人のバイカー集団から生まれ、1950年代から60年代にかけて興ったバイカーの指輪などにも着目し、髑髏のモチーフを大胆に表した作例の数々を展示している。