生きる力とは体力や気力、精神力だけではない 食べて、笑うことの大切さ
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
生きる力〜食べて、笑って、どんなときも
失恋をしてもお腹が空く。こんな自分に気づいたとき、生命力とはこういうことなのだと思ったことがあります。
儀式のように泣くだけ泣いて泣くのに疲れて、(なんか食べよう。お腹が空いて死んじゃう)とお米を研ぎ始める。
ごはんの友は何があるかな、と冷蔵庫を開ける。そして、そんな自分の滑稽さを笑う。
すると生命力はさらに強まります。
上智大学の名誉教授で死生学を日本に広めたアルフォンス・デーケン先生は、「にもかかわらず笑う」ことが大切だと説いています。
悲しいにもかかわらず笑う。苦労をしているにもかかわらず笑う。笑い、ユーモアは生きる力になる、と。
私はそれに加えて「にもかかわらず食べる」ことも大切だと思うのです。
母が亡くなった日、私は大鍋いっぱいのカレーを作り、ごはんを5合炊きました。まずみんな食べることなど考えなくなる。
親戚が弔問に訪ねてくる。もちろん手をかけたものなど作れない。
そう考えると、カレーがいちばん適当なのです。マーケットに行き食材をたくさん買い、黙々と野菜を刻み、鶏肉を切り、大鍋でぐつぐつと煮込む。淡々と、黙々と料理をする。
このような日にもお腹が空くだろうと考えて作っているのですが、同時に自分の気持ちを落ち着かせるために料理をしていたのです。
母が亡くなったという非日常の中に、食事という日常が紛れ込む。カレーを食べている間、非日常という緊張が解けて何気ない日常の会話が交わされ、時には笑いが起こる。
つい数分前までは涙ぐみ、悲嘆にくれていたというのに。そして食事が済むと重い空気がそれぞれの胸に流れ込み、非日常へと戻っていくのでした。
生命力、生きる力はいろいろな場面に現れます。失恋してもお腹が空く。にもかかわらず笑える。生命力、生きる力とは体力や気力、精神力だけではないのですね。
本能というのか、野性というのか、その時々の「思うがまま」「感じるがまま」に抗わないことも、生きる力となるのです。
空腹なまま苦難は乗り越えられない。
乗り越える力にも栄養が必要なのです。そしておいしく食べられること。
空腹を満たすだけでなく、おいしいと思えたとき、生きている小さな喜びを受け取れるのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」
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