2022年6月19日 13:10
「元気でね」想いが心からあふれるとき、言葉のふくらみとなって現れる
チェックインを済ませた娘と日常のたわいもない話をしながら、ああ、またしばらく会えなくなる……と胸の奥がきゅっとします。
「もう、入ろうかな」
「もう?」
「ボーディングまで、あと30分」
検査場に入るとき、ぎゅっとハグをして娘が言いました。
「元気でね」
私も伝えたいことがたくさんあるのですが、思いは胸の中をぐるぐると回り、言葉にしたら泣いてしまいそうで、ただ抱き締めていました。私も「元気でね」と言うのが精一杯。
検査場の入口には、私と同じように子どもを見送った親たちが、姿が見えなくなってもずっと佇んでいました。
「元気でね」
わずか5文字の中にどれだけの想いがこもっているでしょう。言葉のふくらみ。『言葉の含み』という言い方がありますが、私には『ふくらみ』という表現が優しく響きます。
言葉にできない想い。伝えたいのにうまく伝えられない想い。そんな想いが心からあふれるとき、想いは言葉のふくらみとなって現れる。
「元気でね」という言葉には祈りがあります。「大丈夫」という言葉にも祈りがあります。
「ありがとう」には有ることが難しいことがあることへの深い感謝がこもっています。