2019年2月8日 06:00
『放射能測定マップ』著者が伝える農家の苦悩、五輪の影
本にまとめようという話が持ち上がったのは、各地の測定データがたまってきた’17年ごろ。
「それまでデータサイトでは、数値の意味は語らず、見た人たちに判断を委ねてきました。汚染があるとわかっても避難できない人が多いので、私たちはひとつの解釈を示すことで、そういう方たちを、苦しい立場に追い込むのではないかと、心配したからです」
そこで、今回の本にも「危ない」とか「大丈夫」とかいう主観的な言葉は使わずに、数値が語る事実を、客観的にまとめることに努めた。
「とくに“汚染”という言葉を使うかどうかで議論になりました。メンバーから、『住んでいる場所が汚染されている』と言うと傷つく人もいるんじゃないかという意見が出たんです。それに、メンバーの中には、東北で農業をしながら測定をしている人も何人かいて。土壌汚染を言うと、農産物が売れなくなる、と……」
一方で、農家にはきちんと測って、汚染されていないものを消費者に提供したいという強い思いもあった。
「農家さんは板挟みですよね。
汚染という言葉を使わないと、的確に伝えられない。だから、農家さんの苦悩も、きちんと本の中で伝えようということになりました」