元ジブリアニメーターの女性が『なつぞら』に抜擢された意味
「宮崎さんは、誰よりも仕事をする。有言実行で、怒ると怖いけど、自分の家の周りのゴミは拾うし、ぜいたくしない。深酒もしない。本当に人として尊敬できます」
舘野さんは、ジブリの制作部門解散を機に、’14年12月、退職。これまでとは全く別の道を歩もうと開いたカフェだったが、店でアニメの展示や個展などを開くうち、アニメファンや制作者、アニメーターを目指す若者たちが集まってくるようになっていた。磯さんが『なつぞら』の台本を抱えてやってきたのは、そんなタイミングだった。
「絵コンテを描いてほしい」「監督をお願いしたい」「タイトルバックだけでも」と、熱心に通ってくる磯さんに、舘野さんの心が動いた。
「最初は、辞退したんです。
ただ、私には原画は描けないけれど、制作を請け負って、演出、原画、動画、美術、仕上げ、撮影と、ふさわしい人を集めたら、素敵なものができるかもしれないというふうに考えるようになりました。新しい才能を見つけて、アニメの世界に入れてあげられたらいいな。そういう形のアニメーションへの恩返しもあるのかなって、いまは思っています。アニメーション監修なんて、考えもしなかったけれど、ジブリで体験したことが、全部、肥やしになっていたんだなぁって」