天皇ご一家とプレーする元プロテニス選手の先駆者人生
住まいは国会議事堂の真裏にある一軒家。
「現在の参議院議員会館がある場所で官舎でした。父は当時、参議院の仕事をしていたようでした」
水泳を習い、2歳上の兄と野球もしたが、両親が特に力を入れたのがテニスだった。父・忠雄さん(故人)は、元全国7位のテニス選手。「子どもが生まれたら、テニスプレーヤーにする」という夢があった。そんな父に引っ張られるように、母・典子さん(90)も出産前からテニスを習い始め、夢中になって、大会にも出ていた。
「直子は将来、ラケット1本持って、世界を飛び回るんだよ」
両親からそう言い聞かされて、幼い日の佐藤さんは、ウィンブルドン選手権の女子の優勝杯・シルバーの大皿のつもりで、家にあるお盆を掲げ、表彰式の練習をしたものだった。
「こんな日常ですから、私はいつテニスを始めたのか、自分でもわからないんです」
物心がつかないうちから、母に連れられて、かつて皇居内にあるパレスクラブに通い、夕方、仕事を終えた父が佐藤さんと兄にテニスを教えた。
「父は『今日は負けても、2年後には勝つテニスをしなさい』と、言うタイプ。一方、短距離選手だった母は、目の前の結果が大事。『勝たないと意味がない』のです」