2020年1月17日 11:00
震災倒壊した生花店を14年後再開 勇気与えた美智子さまの花束
近所の小学校に避難した森本さんは、テレビで商店街が焼け落ちる様子を見たという。
「翌日、店に行ってみて愕然としました。新装開店のために準備した花を一本も売らんうちに、すべて灰になっていた。当日、業者に支払うつもりでレジに改装費用の600万円を入れておいたんですが、それも全部燃え尽きて。残ったのは、熱でくっついたわずかな小銭だけでした」
もう花屋は無理や。諦めよう。
憔悴しきった森本さんの心に、一筋の希望の光をともしたのが、美智子上皇后(当時は皇后)だった。
震災から2週間後の1月31日、当時の天皇皇后両陛下は焼け野原となった菅原市場をご訪問。
その際、美智子さまは皇居に咲いていたスイセン17本を摘んで自ら花束にしてお持ちになり、焼け焦がれたがれきの上に献花された。
「白いスイセンと、グリーンのラッピングが清楚でね……。私、花屋を20年以上やっていたけど、あんなにストレートに“頑張って”という思いが伝わってくる花束は、みたことも作ったこともなかった。地面にはいつくばって花束に顔を近づけました。焼け焦げたホコリっぽい臭いの中に、そこだけ花の香りがして……。なんて力強んやろう、と。涙がぽろぽろ出てね。