2020年1月17日 11:00
震災倒壊した生花店を14年後再開 勇気与えた美智子さまの花束
あぁ、こんな真心が伝わる花束を作りたい。そのためにもう一度、花屋を再建したい、と強く思ったんです」
若い頃から働きづめで、やっとここまできた。震災で過去も未来も全部失って、残ったのは600万円の借金と罹災証明だけ。当時45歳だった森本さんにとって、再起は難しく思われた。
あの花束を目にするまではーー。
ここから、再建への戦いが始まった。
被災者用の仮設住宅は抽選で、なかなか当たらない。森本さん夫妻は、避難所になっている近くの小学校の校庭にクルマを停めて、2年もの長い間、車上生活を送った。
「家もないし、働く場所もない。車上生活しながら、露店で花を売り始めたんです」
森本さんは、付き合いの深い花市場に頼み込んで仏花を仕入れ、それをクルマに積んで近所の墓苑のそばで販売するようになる。本来ならば墓苑の前で花を売ることはできないというが、「震災で花がないときやから、と墓苑の偉い人が目をつぶってくれて」と森本さんは語った。
日々節約しながら地道に開店資金を準備し、迎えた2009年12月。兵庫区で、「花恋」の再オープンを果たした。震災から14年目の冬だった。
「また地震が起きたらどうしよう、と思ったらオープン前日は怖くて怖くて。