野口五郎デビュー50周年 ステージは“戦友”西城秀樹さんと共に
『Happy Birthday』を観客全員が歌うなか、舞台袖からケーキを乗せたワゴンを押して出てきたのは、サプライズ・ゲストの野口だ。
西城さんは心底、驚いて、「なんだよ」と、照れた。握手をした野口は思わず言った。
「恥ずかしいけど、いままでやったことないけど、やっていい?……抱いていいか?」
一瞬、戸惑ったが、西城さんも笑みを浮かべた。ファンが歓声をあげるなか、抱き合った、そのときの感触を思い出したのか、野口の目に涙が光る。
「何であんなこと言ったのか。抱いた感触は……。つらいから思い出したくないけれど。
彼がどんな思いであのステージに立っていたのか、僕は自分の体で感じていました。そこまでして、このステージに立ちたかったのか、と。あいつの男として、アーティストとして、父親としての生きざま、すべてを感じ取った一瞬でした」
ふたりの交流は、西城さんが亡くなる直前まで続いた。
「おーい。体調はどう?」
「寒いときはちょっとね」
そんな短いやりとりの電話がしばらく続いた。
訃報は突然、やってきた。2年前の5月16日だった。すぐには現実を受け止め切れない。
しばらく心にぽっかり穴があいた感覚だった。