上野千鶴子さん「自由や平等は学問とともにある。任命拒否はあなたの問題」
学問への政治介入は、今後さらに露骨になっていくはずです」
上野さんはこの問題が学者だけの問題ではないと、警鐘を鳴らす。
「たとえば、家父長制という言葉、ジェンダーという言葉、ドメスティックバイオレンス、セクシュアルハラスメント……。これらは学問を通して日本語に定着していった言葉です」
これらの言葉が、それまで“あたり前”とされていた女性への差別や暴力を可視化した。
「私たちジェンダー研究者は、調査し、研究し、データをまとめて、有無を言わさぬ形で社会を説得してきました。学問によって社会を変えてきたんです」
男女平等だけではなく、言論の自由も、民主主義の発展にも、学問は大きな役割を果たしてきた。しかし、学問の自由が阻害されることによって、そうした流れが停滞したり、場合によっては後退してしまうことになりかねない。
「この問題を見過ごすと、あなたの自由がなくなり、言いたいことが言える社会ではなくなるかもしれない。決して対岸の火事だと思わないでください」
そう力強く語った上野さん。
学問は政権のためではなく、私たちのために存在するのだ。
【PROFILE】
上野千鶴子
社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)