意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「戦争犯罪」です。ルールはあっても、現実的には大国を裁くのは難しい。国連憲章では、他国への侵略行為、戦争は禁じられています。しかし、戦争になった場合も最低限守るべきルールが、ジュネーブ条約(赤十字条約)によって国際的に定められました。まず、民間人への攻撃は禁止。市民の暮らしの要になるインフラを故意に攻撃することも禁じられています。また、無差別攻撃を目的とする兵器、クラスター爆弾や焼夷弾、化学兵器や生物兵器、毒ガス、対人地雷も使用は禁止されています。兵士を含め、病人や負傷者は手当てを受ける権利が保障されており、それらの人々を助ける赤十字の関係者や施設は、中立的な立場のため攻撃してはいけません。捕虜への拷問や残虐行為も禁止。これらのルールを犯した場合、戦争犯罪になります。また、特定の民族や人種を意図的に根絶やしにするような民族虐殺(ジェノサイド)も禁じられています。ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻では、数々の戦争犯罪の証拠が挙がっています。自転車に乗った民間人を殺害したロシア兵は、明白な戦争犯罪だとして、ウクライナで終身刑が言い渡されました。国家間の紛争を解決するために設立されたのが国際司法裁判所(ICJ)。ウクライナ政府はロシア政府をICJに訴えましたが、ICJは国連の司法機関で、執行は国連安全保障理事会が担います。しかし安保理の常任理事国であるロシアは拒否権を持っています。そのため、ICJがロシアを戦争犯罪を起こしている国と認定しても、実際には裁くことは難しいのです。もうひとつ、国連から独立した国際刑事裁判所(ICC)があり、人道に対する罪や戦争犯罪に問われる、組織のリーダーや個人を裁きます。ICCは、ウクライナでのロシアの戦争犯罪に十分な証拠が揃っていると述べています。しかし、ICCは警察機関を持っておらず、犯罪者の逮捕はその国の警察機関に働きかけます。ただ、ロシアもアメリカも中国も、ICCには加盟していません。そのため、戦争犯罪が立証されても逮捕する手立てはないのです。そもそも戦争を起こさないための知恵を、諦めずに出し合うしか解決方法はないのだろうと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年7月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月03日※写真はイメージですひとり自然の中で過ごして楽しむソロキャンプブームが続く。だが、その一方でさまざまなトラブルも。事前の知識や準備が足りないことで起きるケガや事故だけでなく、性被害に遭ったというケースもあるという……。特に初心者が陥りやすいトラブルを専門家に聞いた。女性ソロキャンパーの防犯問題さわやかな気候の中、アウトドアを楽しむ人も増えるこの時季。特にコロナ禍で、『密』が避けられるとして人気が急上昇したのがキャンプ。中でもひとりでキャンプを行う「ソロキャンプ」人口が増えている。だが空前のブームを前に、女性ソロキャンパーが不安を覚えるのは防犯問題だ。キャンプ歴3年の会社員、後藤美樹さん(30代・仮名)は、過去のゾッとした出来事を語る。「以前、ひとりでキャンプに行ったとき、テントを設営していたら中年男性に『テント立てられる?教えてあげるよ』と声をかけられたんです。親切心からの言葉かもしれないし、角を立てたくないので、やんわり断りました。けど夕方に焚き火をしていたら“あぶなっかしいな〜。正しいやり方、教えてあげる”としつこく話しかけてきて」『教え魔』に遭遇してしまった美樹さん。夜には、信じられない出来事が起こった。「私が寝袋で寝ようとしていたら、その男性がいきなりテントを開けてきて“夜は気温が下がるし、危ないから気をつけてね!”って言うんです。あまりの恐怖に、なかなか寝つけませんでした」場合によっては、住居侵入や軽犯罪法など自治体の条例に触れる可能性もある言動だ。美樹さんが遭遇した『教え魔』は残念なことに数は多い。さらには、ソロキャンプ中に性被害に遭ったというケースも……。鍵がないテントでひとり過ごす女性のソロキャンプは、やはり危険なのか?ソロキャンプの普及活動をする「日本単独野営協会」の代表理事、小山仁さんは語る。「この後藤さんの例は、同じ男性としても腹立たしいです」そう憤る小山さん。実はソロキャンプの最も大きなリスクはケガやヤケドだという。東京都の塾講師・小島洋子さん(30代・仮名)はソロキャンプ中の事故を明かす。「ナイフで木を削っていたら手をざっくりと切ってしまい……。血がたくさん出て目の前が真っ暗に……」幸い近くに別のキャンパーがおり、助けを求めて搬送された。数針縫う大ケガだった。洋子さんだけでなく、ガスバーナーやガスコンロを使用する際、使い方をよく理解せずに着火。火が消せなくなり、パニックでボンベを爆発させてしまった事故も起きている。どちらも一歩間違えれば命にかかわる大惨事となる。「女性ソロキャンパーに限らず、です。薪割りの際に斧でケガをする、焚き火のヤケド、ナイフで手を切るなど、初心者のケガの事例は実に多いですね。また風の強い日に焚き火をして、周囲に燃え広がってしまうなど、火の不始末も。あわや消防車が出動……なんてケースも少なくありません」(小山さん、以下同)季節によっては、熊やイノシシなどの野生動物に遭遇する危険性もあるという。「あくまでキャンプは、自然が相手のアクティビティー。特にソロキャンプは、自分のことは自分で面倒を見るのが大原則のため、最低限のスキルが必須です。初心者のうちは、何度かベテランのキャンパーに同行して“こういう日には焚き火をしたらダメなんだな”など経験を積んでから臨むとよいでしょう」そこで小山さんは具体的な注意点を挙げる。「管理者が常駐しているキャンプ場を選ぶのが安心です。予約やチェックインの際には、管理者にひとりで泊まることを伝えて、緊急時の連絡先も確認しておきたいですね」先に挙げた『教え魔』など人とのトラブルを防ぐには?「管理棟の近くや人通りの多い場所にテントを設営しましょう。特にトイレへの動線がいい場所なら人通りもありますし、便利。設営する前に両隣、近隣キャンパーに挨拶をして、その人たちが女性なのかファミリー層なのかもチェックすれば、対人トラブルや盗難の防止にもつながります」テントまわりの防犯対策も忘れずに。「テントはダブルチャックのものを選び、チャックを南京錠で留めておけば、外から勝手に開けられることもありません。もしテントがダブルチャックでなければ、テントの最下部に南京錠用のループを事前に縫い付けておくのも一案。またテントの入り口に人感センサー付きのライトを置くと安心ですね。男性用の靴をテントの前に置いておくと、複数人で泊まっているよう装うことができます」テントに泊まるのが不安なら車中泊するのもありだ。「男性にしつこく声をかけられた際には、フレンドリーに接することなく、“後から彼氏や夫が来る”と対応する、いわば嘘も方便です。また『教え魔』対策としては、“キャンプ経験が豊富な彼氏や夫に教えてもらう予定がある”など伝え“今、あなたに教えてもらう必要がない”ことを理解させるのも効果的です」最悪の事態も想定して、防犯ブザーは必携だ。「出かける前に、ほかの人の迷惑にならない場所で防犯ブザーがちゃんと鳴るか確認しましょう。ホイッスルもよいですが、実際には呼吸を整えて、大きな音を出さないといけないのでブザーよりもハードルが高い」小山さんはうっかり犯しがちなミスも指摘。「地面で直接焚き火をして、片づけずに帰る“焚き逃げ”の問題です。“よく炭は自然のものだから土に還る”と言う人もいますが、炭は自然に還りません。燃え残った炭は自治体のルールにのっとって処分するのが原則です。みんながこれをすると、いずれキャンプをする場所が消滅してしまいます。“来たときより美しく”という言葉を念頭に、マナーを守ってキャンプを楽しみたいですね」ソロキャンプデビューもこれで安心!ここまで数々の防犯対策を列挙してきたが、ソロキャンプでは、なにかと女性側が自衛を強いられる男女不均衡な現状は否めない。小山さんは次のように思いを語る。「これはほかの社会問題でも言えることなのですが、ソロキャンプでの女性特有の問題は、その当事者にしか見えないことが山ほどある。女性のソロキャンパーが増えれば、女性が女性のために問題解決を図ることもできる。全体の女性比率を増やすことも喫緊の課題です」小山さんたちが運営する日本単独野営協会の普及活動の一環に「ソロキャンプスタートアップ支援制度」がある。「熟練の支援員が付かず離れずの場所で待機し、わからないことや困ったことがあったときだけ、アドバイスや指導をする制度です。必要に応じて声をかけてもらえたら、支援員が対応します」そんな小山さんらの活動のかいもあってか、最近では中高年女性のソロキャンパーも増えてきたようだ。埼玉県在住の池野恵子さん(50代・仮名)も2年前にソロキャンプデビューを果たしたひとり。「昔は家族でキャンプをしていたのですが、息子が大学生になって子育ても一段落したタイミングで、ソロキャンプを始めました。自然の中、ひとりでテントの中でゴロゴロして、誰にも遠慮せずにダラダラできる時間は最高です(笑)」妻として母として、これまで家族のために働いてきた恵子さんも、ソロキャンプで本来の自分自身を取り戻しているのだ。「どんなに慣れた人でも自然の力の前では無力です」と、小山さんは語る。どこへ行くのも、何を食べるのも自由。そんな時間と自然をめいっぱい満喫するためにも、備えを万全にして、ソロキャンプを楽しみたい。お話を聞いたのは…日本単独野営協会 小山仁さん ●代表理事。ソロキャンプの普及促進に関する活動や情報交換などを行う。同団体の会員数は全国で約2万人。ソロキャンプの第一人者として講演やメディア出演も多数。〈取材・文/アケミン〉
2022年05月19日※写真はイメージです近ごろ、世間を騒がせている芸能界での「性加害」。報道された加害者の中には、思春期の娘の父親という立場の者もいた。もし自分の家族が性暴力の加害者となったら……。ある日突然、「性犯罪者の娘」になってしまった少女たちを待ち受けていた現実とは。加害者家族を支援するNPO法人『World Open Heart』理事長・阿部恭子さんが伝える。自分を責める家族「ママはいいよね、パパと血が繋がってないから……」娘のひと言に、優子(仮名・40代)は深い自責の念を感じた。中学校の教師をしていた優子の夫は、教え子にわいせつ行為をして逮捕された。娘を守ることを第一にすぐ夫と離婚し、旧姓に戻って母子ともに人生をやり直すことにした。必死に前を向こうと娘を励ましてきたが、思春期に負った心の傷は、計り知れないほど深刻だった。優子の娘・理沙(仮名・10代)は、リストカットをしているという。「あたしはクズの娘なんだなと思って……」優子が理沙に事情を聴くと、父親の事件に関するネットの掲示板の書き込みを見たのだという。「クズ」「変態」「生きる価値無し」等、罵詈雑言が並ぶサイトには、「家庭があるなら家族も同罪」という意見に賛同が集まっており、「家庭が上手くいっていれば教え子に手を出す必要はないだろう」という書き込みまであった。優子は、ネガティブな情報にアクセスしないよう理沙に言い聞かせても、「被害者が苦しんでるのに、のうのうとはしてられない」と、まるで自分が罰せられなければならないかのように、世間の反応を見ては自傷行為を繰り返すのだった。理沙は高校に電車で通学しており、ラッシュ時の満員電車で痴漢に遭遇することもしばしばあった。友達の間でも「痴漢」や「変質者」の話題は日常茶飯事であったが、父親の事件後、こうしたすべての会話が自分に対する非難に聴こえるようになり、その場にいられなくなってしまった。周囲に知られていなかったが、いつか公にされてしまう日が来るかと思うと生きていられなくなるような不安を感じていた。「人に知られたくはないけれど、隠していることにも罪悪感があります。本当の私を知ったら、みんな逃げていくんじゃないかと……」多くの加害者家族が抱える罪責感である。しかし、罪を犯したのは父親であり、子に責任はない。子どもに罪を背負わせる社会であってはならない。理沙は、同様の経験をした加害者家族との出会いを通して自分を取り戻し始めている。尊敬する父による強姦事件たとえ親がいかなる罪を犯しても、子どもが必ず拒否反応を示すとは限らない。亜美(仮名・10代)の父親は、地元で「名士」と呼ばれる存在だった。亜美は幼いころから父によく懐いており、身近でもっとも尊敬する人でもあった。そんな父がある日突然、女性を強姦したとして逮捕されてしまったのである。父親は当初、容疑を否認していたが、余罪が次々に発覚し、複数の被害女性が浮上したことにより、地元では大きなスキャンダルとして連日、人々の話題の的になっていた。亜美と弟は、父方の祖父母の下に避難したが、自宅には抗議電話や嫌がらせの手紙が殺到していたという。亜美は、父親の事件報道には必ず目を通していたが、父親は無実であると信じていた。「父から暴力や暴言を受けたことはありませんし、女性に暴行するとは考えられないんです。きっと何かの間違いだと思います」亜美の母親は、夫の逮捕の影響で迷惑をかけた人々にひたすら頭を下げる毎日に限界を迎えてしまった。夫からは、せめて裁判が終わるまでは離婚を待ってほしいと懇願されたが、とても持ち堪えられる精神状況ではなかった。母親は離婚に伴って自宅を処分し、実家の近くで援助を受けながら新しい生活を始めることにした。そこで、子どもたちを呼び寄せようとしたところ、亜美は母親との生活を拒否し、祖父母の下に残って弟だけ母親の下に戻ることになった。亜美は父の無実を信じており、母の離婚に賛成できなかったからである。裁判で父親は、女性たちと性行為があった事実は認めたが「同意があった」と主張した。しかし、弁護側の主張は一切認められず、厳しい判決が下り、収監されることになった。亜美は、父に何通も手紙を書いていたが返事が来ることはなかった。刑務所に面会に行っても父から面会を拒絶されていた。亜美は、おそらく母親が父に娘と接触しないよう止めているのだと考えていた。現実を受け入れられない娘事件発覚からすでに2年が経過していたが、判決にも世間の評価にも納得できない亜美は、当団体に助言を求めて訪れた。亜美の父親は無実なのか。「優秀だし、気さくな人なので信頼されていました。ただ、女性に関しては心配なところもありました……」父親の友人は、子どもからは見えない男としての問題行動を度々目にしていた。同僚たちと飲みに行った先で気に入った女性を見つけると、強引に自分の側に呼んで独占しようとすることがしばしばあったという。亜美の父親のストーカー行為によって店を辞めたホステスの話もよく耳にしていた。地元の名士ゆえに、敵に回せば怖い存在であることから、泣き寝入りした女性も多いのではないかと話す。父親の無実を晴らしたいとまで主張している娘を、当の本人はどう思っているのか。筆者は受刑者となった父親に、理由を説明してほしいという手紙を出していた。すると受刑者から、娘にどう伝えればよいのかわからず、悩んでいるという手紙が返ってきた。亜美の父親は、家庭に満足できず、離婚して他の女性と人生をやり直したいという願望があり、自分について来てくれる女性を探していたという。女性の感情より、自分の感情を優先したことは認めており、現在は反省しているとのこと。親の責任として、子どもには真実を話すべきだと伝え、筆者も同行の上、亜美と父親は対面した。亜美は父親の告白に衝撃を受けていたが、面会は事件への「区切り」になったと話す。父親との関係が良好だった亜美は、事実を知っても父親への情は変わらず、母親との修復は難しいという。事件は、家族を分断させてしまうこともある。見逃されてきた性犯罪このように、被害者だけではなく、加害者家族もまた好奇の目に晒され、嘲笑の的になり、屈辱的な日々を過ごしている。近年、「#Metoo」など被害者が声を上げる運動が世界中で起きているが、かつて性被害に鈍感だった社会の中で、被害者は沈黙を余儀なくされ、未だに泣き寝入りせざるを得ない人々も少なくはないはずである。被害者が告発しやすい環境と事件の影響に苦しむ子どもたちのケアが必要だ。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。
2022年04月22日映画監督の園子温(その・しおん)さん、俳優としても活躍する映画監督の榊英雄さん、さらに俳優の木下ほうかさんの性行為強要疑惑が立て続けに一部週刊誌で報じられ、芸能界はもちろん世間に大きな衝撃を与えています。2022年4月13日には、俳優の橋本愛さんがInstagramのストーリーズ機能で、一連の問題に対するコメントを投稿。性被害や性暴力の被害者が受ける傷の深さ、告発する難しさを自身の言葉でつづっています。橋本愛「その思いを踏みにじるような言葉を投げかけないで」橋本さんは、性行為強要疑惑が報じられた後、「被害に遭った時に声を上げればよかった」「なぜ今更、告発をするのか」というコメントを見かける機会が多かったといいます。そうした考えを持つ人たちに対し「同様の被害に遭ったことがないのかな、と思いました」とし「もしそうならば、それはとても幸せなこと」「どうかずっと分からないままでいてほしいと思うほどです」と正直な思いをつづりました。一方で、なぜなのかが知りたいと思う人に対しては「分かってほしい」といい、こうも続けます。言えないんです。言葉を発そうとすると、たとえば口に汚物を塗りたくられたような感覚に。記憶を思い返すだけで、人の糞を無理やり口に、体内に捩じ込まれたような感覚に。とまで言えば、どこか体感として伝わるでしょうか。または全身を虫が大量に這うような感じ、もあります。耳や、口、鼻、目、に、虫がわらわらと侵入してくる感じ。です。感覚は人それぞれですが、私自身の感覚を表すとすれば、これが一例にあたります。たとえば窃盗なら、盗まれたものを取り返したい、そして、どこかで「取り返せるのではないか」という希望が持てるのだと思います。きっととても怖いしショックだけれどこの場合警察や然るべきところにすぐに相談される方は多いのではないかと思います。けれど、性被害は、一生、何があっても取り返せないんです。たとえ加害者が逮捕されようと、罰せられようと、どうなろうと。だから一番は、記憶を消すしかないんです。ai__hashimotoーより引用あまりにも生々しく、リアルな表現が並ぶ、橋本さんの投稿。被害者が受けた苦痛と嫌悪感、癒えることのない傷を負った絶望感が強く伝わってきます。また、だからこそ言葉にして被害を告発することは難しく、橋本さんはそれでも今回、声を上げた人たちを思い「それでもどうにか何かを変えたいと、なんとか言葉にしてくれた」とし「その思いを踏みにじるような言葉を投げかけないで」と訴えかけました。最後に「被害者の方々の気持ちは、全部私の想像なので、間違ってることもあるかもしれません。でも、私自身が想像した体感に、ウソは1つもありません」とつづった橋本さん。この投稿は反響を呼び「とても大きな意味がある投稿」とさまざまなコメントが寄せられました。・被害者に寄り添う姿勢が伝わってきた。・橋本さんの投稿で、勇気をもらった人も多いのではないだろうか。・影響力のある橋本さんがいうことで、被害者の苦痛が伝わってほしい。悲しいことに、性被害や性暴力は映画業界、芸能界に限った問題ではありません。今も誰かが被害を受け、声を出せずに苦しんでいるのです。被害者が受けた傷は癒えることがなく、過去を変えることができなくても、それでも被害を告発したその勇気は、もっと尊重されるべきではないでしょうか。そして、この声が大きくなり理不尽な被害を受ける人がいなくなることを多くの人が願っています。[文・構成/grape編集部]
2022年04月14日2022年4月4日、映画監督である園子温(その・しおん)さんに性的関係を迫られたという、複数の女性の証言を、一部の週刊誌が報じました。また、同年3月には俳優や映画監督として活躍する榊英雄さんや、俳優の木下ほうかさんの性行為強要疑惑が報じられています。原作者「映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」同月12日、作家の山内マリコさんと、柚木麻子さんが、「映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」という声明を発表しました。過去には、山内さんの作品『ここは退屈迎えに来て』『あのこは貴族』や、柚木さんの作品『伊藤くん A to E』が映画化されています。山内さんたちは、「物語がスクリーンに映し出される感動は、作者として何物にも代えがたい幸せ」とつづりました。一方で、「その作品がいかなるものであっても、自分の生み出した物語である責務を負う」と訴えています。原作者の名前は、映画の冒頭にクレジットされ、その作品がいかなるものであっても、自分の生み出した物語である責務を負います。映画制作の現場での性暴力・性加害が明るみに出たことは、原作者という立場で映画に関わる私たちにとっても、無関係ではありません。不均等なパワーバランスによる常態的なハラスメント、身体的な暴力、恫喝などの心理的な暴力等が、業界の体質であるように言われるなかで、今回、女性たちが多大なリスクを背負って性被害を告白したことは、業界の内外を問わず、重く受け止めるべきと考えます。声をあげてくださった方々の勇気に応えたく、私たちは、連帯の意志を表明します。原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。ーより引用また、「映画業界の内部にいる人たちは声を上げづらい状況にあることを目の当たりにした」という、山内さんたち。映画業界と特殊な関係性を持つ原作者だからこそ、連帯し声を上げられると考えたことが、今回の声明を発表したきっかけだそうです。今後は、契約の段階から適切な主張を行っていくとともに、万が一、被害があった場合は原作者としてしかるべき措置を求めていけるよう、行動するそうです。映画界が抱える問題は、出版会とも地続き声明では、「映画界が抱える問題は、出版界とも地続きです」ともつづっています。これからは、出版界のハラスメント根絶のためにも、声を上げていくという、力強い意志を表明しました。声明には、数々の作家が賛同しています。山内マリコ「さすがにここでアクションを起こさないのは」声明とは別に、山内さんは自身のTwitterで、このように想いをつづっています。ステートメント【原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。】公開しました。小説家は自作が映画化される際、蚊帳の外というか、直接なにか意見を言える機会はとても少なく、言っても反映されることはまずない無力な存在(わたしだけか)ですが、 — 山内マリコ (@maricofff) April 12, 2022 一連の性加害報道を受けて、さすがにここでアクションを起こさないのはどうなんだと思い、映画化経験のある知人作家まで、という小さな括りで賛同者を集めました。— 山内マリコ (@maricofff) April 12, 2022 また、「ここから何かが変わることを心から望みます」ともつづりました。山内さんたちの力強いメッセージに、ネットからも賛同の声が上がっています。・映画ファンとして、賛同します。勇気ある行動に拍手を送りたい。・声を上げることは大切なことだよね。一時的なニュースとして話題になるだけじゃなく、いい方向に変わっていかないと。・「素行は悪いけど、あの人の作る作品は素晴らしいから」ということがなくなることを祈ります。・素晴らしい、大切な一歩だと思う。作品を楽しむ側も、ハラスメントに対しては厳しい声を上げたいね。まずは、原作者として声を上げた18名の作家たちの勇気ある行動に拍手を送りたいですね。そして、この声明が、映画業界や出版業界のみならず、さまざまな業界によい影響をもたらすことを願います。[文・構成/grape編集部]
2022年04月13日大人気マンガシリーズ、今回は永遠の厄年2人組(@eiennoyakudosi)さんの投稿をご紹介!「SNSの罠で不登校になった話」第11話です。ライブ配信をしながら自宅に突撃されたお兄さん。このことは学校に報告しましたが口頭注意で済まされてしまいました…。停学期間が終わり…出典:instagramクラス中に…出典:instagramお兄さんに説教…出典:instagram停学期間が終わり学校に行くとクラス中、誰一人としてお兄さんの味方はいませんでした。別室登校で頑張って学校に行きましたが毎回教師に説教をされ、学校に行けなくなってしまいました…!次回の配信もお楽しみに!(lamire編集部)(イラスト/@eiennoyakudosi)本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。"
2022年03月14日榊英雄監督《あれから4年。今もなお、声をあげられない人、自分が被害にあったことにも気が付かない人、何もなかったかのように忘れたフリをし過ごしている人、様々な人が苦しみを抱えています。》《被害に遭ったことに気が付かない方が良かったのか、と思うこともたまにあります。でも、気が付く前だって十分に苦しくて、でもその苦しみがなんだかわからなくて、気がついてしまった今も当然苦しみは消えなくて。》3月9日、フェミニストとして活動する石川優実さんが更新したインスタグラムには、自身も性被害を受けた過去が綴られた。そんな経験を“Me Too”として発信する石川さんだが、かつてはグラビアアイドル、女優として芸能活動をしていた女性でもある。同日の『文春オンライン』では、《「性被害」映画監督による性加害を女優が告発》というショッキングなニュースが配信されていた。4人の女優が同一人物から「性的行為を要求された」「立場を利用して身体の関係を持たれた」と、性的被害を受けたことを告発したものだった。その“加害者”とされたのが、俳優で監督業も務める榊英雄氏。3月25日に公開される映画『蜜月』でもメガホンをとったのだが、テーマが「性被害」であることも被害者の神経を逆撫でしたのだろう。同作は公開中止の措置が取られている。SNSに即、“鍵”をかけた榊氏当の榊氏はというと報道後に即、自身のツイッターに“鍵”をかけて非公開に。後に発表したコメントでも、真っ先に謝罪の意を示したのは被害者女性ではなく、プロデューサーやキャストら映画関係者。ワイドショー芸能デスクも「本当に反省しているのか」とあきれ返る。「その女性たちにしても“事実の是非に関わらず渦中の人とされてしまった相手の方々”と称したり、また記事に対しても“事実であることと、事実ではない事が含まれて書かれております”などと、猛省を口にしている割には、自分が“加害者”扱いされていることに納得していないのが見え見え。おそらく榊さんにしてみれば、相手女性とは合意の上で、むしろ“売られた”という身勝手な思いを巡らせているのでしょう。業界の悪しき習慣とでも言いますか、監督と女優という力関係を大いに利用したのでは?」実は、石川さんは2022年2月に自身のブログにおいて同様に、映画界には地位関係を利用した性的搾取が実在し、自らも出演映画の“監督”から性行為を要求されて応じたことを明かしている。この時点では名前が伏せられていた“監督”だが、大河ドラマにも出演経験がある俳優兼監督であることを明かしていた。《今のいままで私は、この出来事を「対等な関係で行われたセックスをした話」だと認識していました》当時の彼女は、“監督”に対して抵抗や拒否したことはなく、むしろ自分から望んでいるかのような態度をとったとある。それは、周囲から“それも役者の仕事”と教え込まれ、弱い立場である自分に断る権利はないと思い込んでいたからだ。同ブログでは、他にも似たような被害にあった女性のツイッターの文面を引用して、加害者が“監督”であることを示唆。また、2016年に『週刊大衆』12月12日号が報じた《高畑裕太出演ドラマ監督ーー若手女優強制○○悪ラツ手口》(○○は編集部伏字)という記事も添えていた。高畑裕太出演ドラマで監督を務めた2016年8月に強姦致傷容疑で逮捕(後に不起訴処分)された高畑裕太。彼が出演していたドラマの監督が、若手女優に対して「地位関係を利用した性的搾取」をしていたことをすっぱ抜いたもの。記事中では“X氏”とされていた人物だが、石川さんは“監督”から楽屋で《ああいうのは絶対にやったって言っちゃだめなんだよ》との、罪を認めた高畑への“ダメ出し”を聞かされたことを明かしている。この頃に高畑が出演していたのは『侠飯〜おとこめし〜』(テレビ東京系)で、逮捕されたことにより途中で降板。そして同ドラマの監督を務めたのが榊氏だ。「石川さんは2017年12月にも、グラビア時代に受けた性被害を《#Me Too》というタイトルで告白しています。飲み会の席で“喜ばせろよ”とセクハラ発言をされたり、実際にテレビ局のプロデューサーにホテルに連れていかれたことなど、やはり弱い立場で受けた性被害です。このブログ記事への反響は大きく、これをきっかけにジェンダー平等を志すようになったという石川さん。以後は被害女性が泣き寝入りすることなく、強く立ち上がれる社会を作る活動をしているようです」(ウェブライター)「榊氏は病気、病院に行って欲しい」そして報道翌日の3月10月、新たに更新したブログには《榊英雄氏に関する週刊文春の報道を受けて》とのタイトルで、『週刊文春』の取材を受けたことを明かした石川さん。榊氏の被害者であることを勇気を持って名乗り出た形だ。取材を受けた経緯や、榊氏が文春取材に《相手の女性から近づいてきて関係を持ちました》との身勝手なコメントに対する反論。そして被害者としての葛藤などを綴った中で《榊氏に思うこと》として強烈な苦言を残している。《気軽に言うべきではないと思いますが、私は榊氏は病気だと思います。依存症的なものではないですか?今回の報道をきっかけに、一度病院に行ってほしいです》被害者女性の声は、榊氏に届くことはないのかもしれない。
2022年03月10日こんにちは。子育てアドバイザーの河西ケイトです。先日、オンラインでの研修で参加していたお母さん方から「子どもが性犯罪に合わないためには、どうしたらいいですか?」と相談を受けました。子どもを守るために私達大人ができることはどのようなことでしょうか。今回は「性教育」についてお話したいと思います。スキンシップ前の声掛けで「自分の身体は大切」という感覚を養う皆さんはお子さんとスキンシップを図っていますか? スキンシップは子どもの不安な気持ちを安心に変えるために、とても必要なことです。しかし、不用意に予告なく行うスキンシップは子どもの心を傷つけることになることを知っていますか? 私達大人もいきなり抱きしめられたり抱っこをされたら、びっくりしますよね。それは子どもも同じです。私は保育士時代に、子どもの人権を常に考えながら仕事をしていました。例えば、0歳児だろうが1歳児だろうがおむつを交換するとき、着替えをさせるとき、どんなに忙しくても子どもに一言「先生がおむつ変えてもいいかな?」と聞くようにしていました。周りの先生からは「忙しんだからさっさと脱がせて変えればいい!」と言われていましたが、「私達大人がいきなりパンツを脱がされたらどうか? 子どもだから許されるわけではない!」と先輩たちと常に戦ってきました。もちろん、やり取りの中で子どもからの返事はありませんが、実はこうした会話を子どもとすることで、子ども自身が自分と他人の境界線を学ぶきっかけにもなるのです。また、オムツ替えでは便が出た際も「いいうんちが出たね」「すっきりしたね」など肯定的な声がけをして、排泄を取り替えることがマイナスではなくプラスになるような配慮をしています。そうすると、パンツに移行する際のトイトレでも、恥ずかしがらず排泄があったことを教えてくれるようになります。「プライベートゾーン」を教える「プライベートゾーン」を教えることも、自分の身体を大切にすることにつながります。プライベートゾーンとは、水着で隠れる部分と、口のことを指します。私は3歳の担任をした時、必ず子どもたちに対して、このプライベートゾーンのことを教えていました。紙に裸の人間の絵を描いてクラスの子どもみんなに「人の前に出るとき、どこを隠せば良いのか」を質問し、実際に子どもたちが隠す部分に好きな色を塗るという活動を行い、塗り終えたあとに、どうしてそこを隠そうと思ったのか、子どもたち一人ひとりに答えてもらいました。子どもの意見を聞きつつ正しい知識を伝えていくと、今までおままごとコーナに裸で置かれていた人形に対して「これは恥ずかしい姿だ!」と子どもたち自ら洋服を着せるようになったり、プールの着替えではしっかり大切な部分を隠して着替えられるようになったりなどの姿が見られるようになりました。「3歳に性教育は早い!」と思われるかもしれませんが、自分の身体が大切だということを教えるのに、早いも遅いもありません。こうした関わりが、子どもを性犯罪から守ることにもつながるのです。身体の部位をしっかり教えていく子どもが身体の部位に関心を持ち始めたら、性器などの名称とそれらがどのような働きをするのかをしっかり教えましょう。私達大人は、目・口・鼻などの身体の部位に関してはしっかり教えるのに、性に関する部位はなぜか隠そうとします。隠すから余計知りたくなり、自分で触ってみたり、友達のものを触ってみようとするのです。部位の話をしっかりし、子どもが身体を一人で洗えるようになったら、自分の性器は自分でしっかり洗うように声をかけていきましょう。性器をしっかり洗い清潔に保つことは、健康上とても大切なことです。また、性器を親に洗ってもらうことが「他人に触られても気にしない」と繋がる恐れもあります。自分で洗うようにすることで、「ここは簡単に触らせてはいけないんだ」と学ぶきっかけにもなります。そして、性器に触られそうになったら「いやだ!」と大声を出して逃げることを繰り返し伝え続けてください。今回は、性教育についてお話させていただきました。子どもが性犯罪に巻き込まれ無いために、普段からしっかりと正しい知識を伝え続けていく。また、親自身が「自分がされたらどうか」と子どもの立場に立ち、人権を守っていくことも大切かもしれませんね。
2022年02月17日塾講師が女子中学生に過剰なスキンシップを取るようになり……※画像はイメージです性的な暴力をふるうため、子どもに近づいて懐柔する「グルーミング」という手口に今、注目が集まっている。性犯罪に関する刑法改正を議論する委員会で初めて議題に上がり、罰則化に向けた話し合いが続けられているのだ。教師や部活のコーチ、会社員など「ごく普通の男たち」はどうやって子どもにつけ込むのか、その卑劣な実態に迫る!■信頼させることで子どもの依存心を引き出す「大人になってからもずっと違和感や不快感がぬぐえませんでした。あれは『グルーミング』という性暴力だったんですね……」大江里穂さん(30代=仮名)は中学生だったころを振り返り、そう打ち明けた。当時通っていた進学塾の男性講師による被害を自覚したのは、ごく最近のことだ。性的な行為を目的に子どもに近づき、手なずける「グルーミング」への関心が高まっている。昨年9月には性犯罪に関する刑法改正を議論する法務省の法制審議会で取り上げられ、罰則化に向けた議論も進められているほどだ。被害者支援に携わる、目白大学専任講師で公認心理師の齋藤梓さんが指摘する。「グルーミングは(1)親や親族をはじめ、塾講師や学校の教師、部活のコーチといった“リアルで近しい人からの被害”、(2)公園で声をかけてきたなど“それほど近しくない人からの被害”、(3)SNSやネットを通じて知り合った“オンラインでの被害”の3つに大別できます。いずれも被害者が被害を認識することが難しいといわれていて、大人になってから気づいたという人も珍しくありません」被害を受けるのは女の子ばかりではない。男の子も狙われている。「加害者はやさしい言葉をかけたり悩みを聞いたりして、信頼させることで子どもの依存心を引き出します。“きみのことをわかってあげられるのは僕だけ”と思い込ませるのです。そうして周囲から孤立させつつ、徐々に性的な要求を織り交ぜていくのが特徴です」(齋藤さん)どういった手口で子どもを罠に陥れるのか。前出・大江さんの証言をもとにグルーミングの実態に迫っていこう。■エスカレートしていく「スキンシップ」大江さんは中学2年生のとき、同級生の女子に誘われ地元の進学塾へ入会した。40代のベテラン講師はきめ細かな指導に定評があり、教えるのがうまく、雑談もおもしろい。進学実績の高さから保護者の支持も集めていた。根気強く教えてくれる講師を大江さんも信頼していたという。「よく頑張ったな」「おまえはほかの子と目のつけどころが違う」難しい問題が解けたとき、講師はねぎらいの言葉をかけながら大江さんの肩にポンと手をのせたり、頭をなでたりした。成績が上がって「ハグされた」こともある。スキンシップが過剰な気がしたものの、違和感をのみ込んだ。「講師は“熱いキャラ”の人だったので、気にする私のほうが自意識過剰に思えてしまって。そのときは深く考えないようにしました」中2の終わりになると、受験対策と称した「居残り補講」が始まった。最初は数人で受けていたが、徐々に人数が減り、地元の最難関校を受験する大江さんだけ遅くまで残ることが増えていった。「講師に期待をかけられ、特別扱いされることで自信が満たされていた部分もありました。悩みや愚痴なんかも聞いてくれて、親切でやさしい先生だと思い込んでいました」一方、誰もいない教室で講師の「スキンシップ」はエスカレートしていく。肩や頭に触れる回数が増え、時には息づかいが聞こえそうなほど顔を近づけてくる。いつしか補講後、帰り際に「ハグ」されるのが習慣になっていた。ある日、「ハグ」のあと、講師は「いいよな?」と言うと大江さんにキスをして、胸や下腹部を触ってきた。突然の行為に身体が凍りついた。「父親と変わらない年齢の講師が性的な目で私を見ていたなんて……。ひたすらショックでした」それから間もなく父親の転勤が決まり、大江さんは県外へ引っ越すことに。転校に不安はあったが、それ以上に塾をやめる口実ができてほっとしたのを覚えている。大江さんは2年前、ネットニュースでグルーミングという言葉を偶然知り、「気持ちが楽になった」と話す。「講師に襲われたとき、はっきり拒絶できなかった自分を責める気持ちが長い間ありました。うつや不眠、摂食障害に苦しんだ時期もあります。でも、#MeToo運動が起きたり、グルーミングがメディアで取り上げられたりして自分に何が起きたのか初めてよくわかりました。私は悪くない。大人への信頼という、子どもの純粋な心につけ込む卑劣な加害者こそ悪いんです。今ではそう言い切ることができます」(大江さん)■加害者の多くはごく普通の男性大江さんの被害は前述した(1)リアルで近しい人からの被害だったが、ネットの普及に伴い急増しているのが(3)のオンライン・グルーミングだ。被害者から多数の相談を受ける川本瑞紀弁護士は、こう話す。「投網をかけるように、加害者はSNS上で不特定多数の子どもたちに狙いを定めています。NHKがNPO法人『ぱっぷす』と協力し、ツイッターで架空の女子中学生のアカウントを作成した際は、“友達がほしい”とツイートしただけで、男性たちから性的な要求のメッセージが殺到していました。そのようにしてアタリをつけて、反応があった子どもたちと実際にやりとりを重ねていくわけです。ひと晩で数百通ものメッセージを送り合うこともあります」中にはわいせつ行為自体が目的ではなく、子どもに裸の写真を送らせて、児童ポルノを製造・販売する狙いでグルーミングが行われることも。反社会的勢力の資金源となっているケースもある。「組織的犯罪を除けば、グルーミングを行う加害者の多くはごく普通の男性です。彼らは自分のやっている行為に罪の意識がない。素直でかわいい彼女がほしい、これは恋愛だ、と真剣に思っているんです」(川本弁護士、以下同)前述したとおり、法制審では現在、グルーミングに処罰規定を設けるかどうかの議論が行われている最中だ。「今の日本にはグルーミングそのものを取り締まる法律はありません。子どもを相手にわいせつな行為や性交をしたとき、被害者が13歳未満であれば刑法の『強制わいせつ罪』や『強制性交等罪』に問うことができます。しかし13歳以上の場合、これらの罪に問うためには暴行や脅迫が伴わなければならないのです」いい人を装って子どもを懐柔するのがグルーミング。手なずけていく過程では通常、暴力をふるったり脅したりすることはない。「そのため各都道府県が設置した『青少年保護育成条例』の扱いになり、数十万円程度の罰金ですまされてしまう。学校の先生や塾講師など、被害者との類型的な上下関係を利用した犯行は『児童福祉法』違反に問うこともできますが、前述した2や3のケースでは不可能。これでは被害の深刻さに見合った罰とはいえません。国の法律として整備し、きちんと取り締まるべきです」グルーミングから子どもを守るにはどうすればいいのか。前出・齋藤さんが強調する。「子どもたちが自分で、大人を拒否することや疑うことは難しいです。それでも大人が“知っている人であっても、2人きりになるときがあれば教えてほしい”と伝えておくことは大切です。グルーミングに気づくのは周りの大人にとっても難しいことですが、子どもの様子がいつもと違うな、何かおかしいなと思ったら、子どもを責めずに心配しているという気持ちを伝えてあげてください」
2022年01月31日※写真はイメージですひと昔前は「性暴力」といえば男性→女性という印象があったが、近年は女性による男性への性暴力が公になることも少なくない。もし「母親」や「娘」そして「妻」による性暴力が明らかになったら……。殺人事件も含め、2000件以上の加害者家族を支援してきたNPO法人『World Open Heart』理事長・阿部恭子さんが、加害者、被害者家族の視点から「女性による性暴力」を伝える。■加害者家族は「一歩も外に出られず」和子(仮名・60代)の娘は、13歳以下の男子にわいせつ行為を行った容疑で逮捕された。娘は離婚後、ひとりで子どもを育てており、事件後は和子が孫の世話をしなければならなくなった。「私たちは何を言われても構いませんが、孫に罪はありません……。孫の将来が心配です」和子の家には報道陣が詰めかけ、地域は一時、騒然となった。この地域では数年前、夫婦間の殺人事件が発生したこともあるが、周囲は同情的で静かに見守っており、遺族は転居もせずにここに住み続けている。しかし、和子の娘が起こした事件は、その殺人事件以上に世間の耳目を集め、家族のもとには非難が殺到した。「娘さんいます?相手がほしいなら僕、いつでもやりますよ」「バカ女!犯してやる!」からかいや嫌がらせの電話や手紙が、連日届くようになった。事件から1か月、昼間は一歩も家の外に出ることができず、夜間に車で遠くのコンビニまで出かけ、食料などを買い込んだ。「孫がいなければ、自殺していたと思います」娘がなぜ犯行に至ったのか。たとえ親子であっても、詳しい事情は和子もわからないという。性の問題は、家族だからこそ共有しにくい問題でもある。「娘はカウンセリングに通って、家事育児はこなせるようになりました。しかし、人目を気にして、自宅にこもりがちです」過剰な社会的制裁は、加害者が更生するための社会復帰の妨げになっている。「女性による性犯罪」。その原因が掘り下げられることはほとんどない。彼女らが犯行に至った経緯とは。娘、妻、母親など、加害者の立場や事情はさまざまであるが、ここでは、母親から性虐待を受けていた少年のケースから、加害の背景を考えてみたい。■「父親からの虐待」ではなかった優太(仮名・19)は、父親から殴るなどの暴行を受け、一時、気を失って病院に運ばれた。警察は優太が父親から虐待を受けていたと見ており、逮捕された父親も認めていると報道されていた。しかし優太の話によると、父親から殴られたのは事実だが虐待を受けたことはなく、優太を日常的に虐待していたのは母親だという。優太は両親と妹ふたりと一緒に生活をしていた。母の香織(仮名・40代)は優太を溺愛する一方で、娘の世話をしたがらず、幼いころから優太が妹たちの面倒を見てきた。優太が母親からの性虐待を認識したのは15歳のころだった。父親が出張で帰らない日があり、その日の夜は、母が優太の布団に入ってくるようになった。やめてほしいと母親を突き放すと、香織は優太を叩いたり蹴ったりした。優太は妹たちに知られるのが嫌で、受け入れるしかなかった。優太と父親の関係も良好で、それだけに父に相談することはできなかった。和子の娘の被害者同様、優太もまた、加害者にとっては“思い通りになる唯一の存在”だったのだ。高校卒業と同時に家を出る準備をし、父親の出張の日は夜にアルバイトを入れ、帰らないようにして母親から逃げていたころ、事件が起きた。優太が家に帰ると、両親が怒鳴り合っている声が聞こえた。「あの子よ、あの子が全部悪い!」香織が泣きながら、優太に掴みかかった。優太は怒りが込み上げ、香織を突き飛ばしたところ、父親から殴られ、気がついたときには病院にいた。■息子にのめり込んだ母親「香織からいきなり電話で呼び出され、優太に乱暴されたって言われたんです。まさかと思う反面、大泣きしている香織の様子から嘘だとも思えなくて」優太の父親・優治(仮名・60代)は事件当時のことをそう話す。「この話は、どうしても警察でも話せませんでした」香織はなぜ嘘をついたのか。「優太が離れていくのが、耐えられなかったんでしょう」香織はきょうだいの多い家庭で育ち、なかなか親の目が届かず、学校では成績が悪く問題の多い子どもだったという。心配した両親は、年上のしっかりとした男性のもとに早く嫁ぐのがいいと、香織が17歳のとき、優治と見合い結婚させた。人付き合いが苦手な香織は友人もなく、家庭だけが居場所だった。「香織は女性はすべて敵対視し、母親や姉妹とも仲が悪く、自分の娘も大きくなるにつれ毛嫌いするようになったんです」優治いわく、香織は優太を溺愛し、優太も香織によくなついていたという。「パパ(優治)は娘たちに取られちゃったから、私の味方は優太だけ」香織はそう言って、異常なまでに優太の世話にのめり込むようになっていった。「香織は数年前から、もうひとり子どもがほしいと言うようになりました。男の子がほしいと……。また女の子だったらどうするのか聞くと、”おろす”というんです。そんなことできるわけないじゃないですか」それから優治は、香織とのセックスに抵抗を感じ、避けるようになってしまった。それは香織が優太への性虐待を始めた時期と重なる。香織は優太と子どもを作ろうと思ったのか……。事件後、優治と香織はふたりでカウンセリングに通うようになり、子どもたちはそれぞれ家を離れて生活を始めた。■男性被害者の救済が課題近年、#Metoo運動や性犯罪被害者支援の拡大によって、従来に比べ、性被害を告発しやすい風潮が高まりつつある。しかし、男性も被害に遭い、女性も加害者になるという認識は社会に浸透しているとはいえず、男性が女性から性的被害を受けた場合、男性が被害を告発することをためらうケースも少なくない。したがって、屈辱に苦しみながらも泣き寝入りせざるを得なかった被害者も多数存在するであろう。ただでさえ被害が明るみに出ることが少ない「女性による性犯罪」だが、加害者の更生については、その後の環境によって大きく変わってくる。和子の娘の場合は過剰な社会的制裁により、自宅に引きこもりがちとなり、それが更生への大きな支障となっている。一方で、「父親の息子への虐待」という報道の裏に隠れ、自らの性暴力が表沙汰にならなかった香織は、和子の娘のように社会的な制裁やひどいバッシングを受けることはなかった。よって、夫とともに事件と向き合うことができ、着実に更生の道へと向かっているのだ。社会が今、すべきことは、加害者となった女性に過剰な社会的制裁を加えることではない。男性の被害者も告発しやすい社会環境を作ることである。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。
2022年01月14日自撮りアプリでネズミになる堀雄帆容疑者(本人のSNSより)「情熱があって生徒から信頼されていると思っていました。積極的に生徒とかかわるなど面倒見がよかったんです。しかし、2度目の逮捕を受けた今となってはそれも表面的なものだったと言わざるをえません」と容疑者が勤務する中学の校長は裏切られた思いを吐露する。栃木県宇都宮市の公立中学校で女子生徒A子さんの下着を盗んだとして同県警は11月4日、窃盗の疑いで同校の講師・堀雄帆容疑者(31)を再逮捕した。県警によると、最初の逮捕は10月8日。県内のホテルで10代少女B子さんに対し、18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとする県青少年健全育成条例違反(淫行等の禁止)の疑い。同罪ですでに起訴されており、余罪が発覚したかたちだ。■淫行と下着窃盗を同じ日に地元の社会部記者は言う。「淫行容疑について、逮捕当初の取り調べには否認していた。しかし、下着窃盗については“自分のものにしたくて盗んだ”などと容疑を認めている。あきれるのは同じ日に犯行に及んでいること」前日に中学は夏休みに入り、東京五輪開幕を翌日に控えた7月22日の祝日だった。「通常業務を離れた解放感からか、学校でA子さんの下着1枚を盗み、午後にはB子さんをホテルに連れ込んでいる。B子さんは以前通学していた学校で堀容疑者と知り合って以来SNSでつながっており、警察がB子さんから話を聞いたことをきっかけに逮捕にこぎつけた。起訴状などによると、B子さんに対しては5月の休日にも同様の行為をしていた」(前出の社会部記者)現職教員の2度の逮捕を受け、同校は生徒の保護者あてに事情説明の文書をその都度配布。1度目の逮捕時は、校長が全校生徒に「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。「2度目の逮捕では僕らに何の説明もありません。生徒が悪いことをしたらそのたびに怒るんだから、あらためて謝るべき」(同校の男子生徒)別の女子生徒の保護者は憤りを隠さない。「教壇に立たせる前にもっと厳しく適性チェックをしてほしい。思春期の子どもに“先生から変なことをされていないか”なんて聞けない。もし被害に遭っても言い出せない子だっているだろうし」同校によると、堀容疑者は2019年4月に着任。特別支援学級の担任で、普通クラスで教科を教える機会はなかった。サッカー部の副顧問も任されていた。■女子生徒に“こちょこちょ”「生徒がふざけても怒らず、一緒になってはしゃぐなどノリがよかった。あだ名は名前をもじって“UFO”。男子からは人気があったし、サッカー部の友だちは事件にショックを受けています。でも、女子からは嫌われていました。ちょっかいを出す女子と出さない女子を区別していて、こちょこちょとか触ってくるから」(別の男子生徒)同校を卒業した女子高校生は、「恋愛対象にはなりえないおじさんみたいな先生だった」と人気のなさを裏づける。その裏で生徒の下着を盗み、夏休みが明けてから逮捕されるまで、普段と変わらず生徒と接していたという。堀容疑者は宇都宮市内で音楽一家の長男として生まれた。大手企業に勤務する父親はドラムを叩くのが趣味で、母親は自宅でピアノ教室を開く腕前。姉も楽器をたしなみ、「雄帆くんは自宅2階でラッパをよく吹いていた。休日にはワゴン車に楽器を積んで一家4人で仲よく出かけていました」(近隣住民)という。■エリート街道を進むも…トランペット奏者として英才教育を受け、県内の私立高校音楽科を卒業。東京藝術大学に進み、中学の音楽教員の免許を取得。順風満帆にUターン就職するはずが採用試験に受からず、講師として中学を渡り歩くことに。それでも音楽への情熱は失わなかった。「県立高校の吹奏楽部で指揮をして県代表に導いたこともある。大学浪人時代には、日本クラシック音楽協会が主催するコンテストの金管楽器ジュニア部門で3位になったほど。大学卒業後も、県内の市民合唱団とベートーベンの『第九』を特別演奏するなど音楽家として活動してきた」と県内の音楽関係者。約6年前に両親が大ゲンカして離婚。母親とふたりで暮らすことになった堀容疑者は、周囲の目を避けるようになったという。■顔を合わせないように物陰に隠れて「子どものころはかわいくてお小遣いをあげたりしたんだけど、最近は挨拶すらしてくれなくなった。顔を合わせないように物陰に隠れたり、塀すれすれを歩いてサッと自宅に入ってしまう。寂しいなあと思っていたらこの事件が起きたんです」(近所の女性)音楽教諭として本採用されないコンプレックスか、あるいは家庭の事情が原因なのかはわからないが、教員らしからぬ一面ではある。実は生徒のあいだでは、“2年前のある事件”の話題がかまびすしい。「女子生徒の水着が盗まれる事件があって、いまだ犯人がわかっていないんです。それも堀先生がやったのではないか、と疑う声が出ていて。堀先生が着任した後に起きた事件なのでありえなくはないですが、それは違うんじゃないかと信じたい気持ちもあります」(同校の男子生徒)さすがに短絡的すぎるものの、二度あることは三度あるとの言葉も。生徒を疑心暗鬼にさせた罪もまた重い。
2021年11月17日誹謗中傷はいちばん捕まりやすい犯罪です(写真はイメージです)SNSや掲示板などネット上での誹謗中傷投稿が止まらない。匿名性をいいことに言いたい放題な人もいるが、専門家によると誰が書いたのか特定するのは容易だとか。何げなく書いた投稿が刑事事件になる可能性は十分にあるのだ。■ネット誹謗中傷被害者は増加傾向「周りの人が誰も信じられなくなりました」今年6月、千葉県に住む保育士の鈴木理恵子さん(30代前半・仮名)はネット上で誹謗中傷を受けた。「匿名掲示板やSNSで複数の(とみられる)人から“あたおか(頭がおかしい、という侮辱的な意味のスラング)”“ウソツキ女”と書かれだしました」(鈴木さん、以下同)鈴木さんには誹謗中傷のきっかけがなんとなくわかっていた。それは当時はまっていたゲームのファン仲間とのやりとりだった。「考えの違いからその何人かとトラブルになりました。そのうちの誰かが書き込みを始めたんじゃないかな……」匿名なため実際に誰が書き込んでいるかはわからない。「“ファンをやめろ”とか“●●(鈴木さんのハンドルネーム)は存在が迷惑”とか悪口だけでなく、私の仕事や住んでいるところなどの個人情報も晒されるようになったんです」投稿を読むたびに動悸が激しくなり、涙が出た。食事も睡眠もままならず、心労から2週間で3キロやせた。鈴木さんは最寄りの警察署に被害届を提出。SNSはすべてやめて、掲示板も見ないようにしているというが……。「友人は気にしないほうがいいと言ってくれるんですが、やっぱり私の知らないところで何を言われているのかは正直、気になります……」鈴木さんのようなネット誹謗中傷被害者は後を絶たないどころか、増加している。「あるネット配信に出演した女性が配信内での自身の行動や発言が元で大炎上しました。彼女のSNSのコメントは暴言だらけの大荒れに」(ネットに詳しいライター)いくら腹を立てたからといっても、相手の人格を否定するようなネットへの書き込み行為は「自分の気持ちを書いただけ」ではすまされない。犯罪加害者として裁かれる可能性は十分考えられるのだ。■「自分は関係ない」ではすまされないケースも「ネット上での誹謗中傷はいちばん捕まりやすい犯罪」と、ITジャーナリストの三上洋さんは指摘する。「匿名掲示板やSNSは匿名性が高く、面と向かって言えないことを書き込んで相手を懲らしめようという思考なのでしょうが、それは大きな誤り。投稿や拡散という行為はいちばん特定しやすい」そこで誹謗中傷をした個人特定までの具体的な流れを三上さんに説明してもらった。「SNSでも掲示板でも投稿にはインターネット上の住所、『IPアドレス』が記録されています。そこには、契約しているインターネットプロバイダーや携帯電話会社が記されています。『プロバイダ責任制限法』という法律を使い、被害者は誹謗中傷をした人のIPアドレス、プロバイダー契約者の開示を求めることができます」(三上さん)誹謗中傷投稿の情報を開示し、投稿した人物を突き止め、訴訟を起こすケースは最近、増えている。誰が書き込んだのか、相手がわかれば民事訴訟で慰謝料を請求できる場合がある。泣き寝入りせずに、裁判を起こす被害者も現れているのだ。刑事事件となることもある。高橋麻理弁護士が解説する。「1つは名誉毀損罪。例えば“Aは不倫してる”など事実かそうでないか問わず、相手を陥れるような書き込みをすれば犯罪として成立することがあり、その法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮。または50万円以下の罰金となります。そして侮辱罪。“Aはばか、頭がおかしい”などの投稿がそれに該当する場合があります。事実と異なる書き込みをし、企業の業務を妨害すれば業務妨害に当たることも」起訴され、実刑判決が出る場合もあるのか。「状況にもよりますが、いきなり実刑は考え難い。ただ、初犯でも罰金が科されたり、起訴されて執行猶予つきの懲役刑が言い渡される可能性も」(高橋弁護士、以下同)「自分は書き込んでいないから関係ない」ではすまされないケースもある。「例えばAの社会的評価を下げる投稿をBがリツイートした場合、自分のコメントはなく、単純に拡散しただけでも名誉毀損罪が成立する場合もある。拡散を原因として訴えられれば慰謝料を支払う責任が生じる可能性もあります」発言(書き込み)だけでなく拡散についても、慎重になる必要があるのだ。では、なぜ誹謗中傷問題は止まらないのだろうか。前出の三上さんによると、「その理由は2つ、ネットでは何を書いてもいいんだという意識。もう1つはその人の正義感問題です。誹謗中傷を書き込んでいる大多数は自分が正しいと思っている。相手や社会に迷惑をかけている人間をのさばらせてはいけない、と“正義の鉄槌”を下す理念で書き込んでいるんです。正義感は人それぞれ違いますが、自分が正しくて相手を攻撃することが世の中のために正しいんだ、と思っている人は少なくないんです」書き込む際はいつでも加害者になりうるリスクを秘めていることも意識しておかなければならないのだ。高橋弁護士も訴える。「匿名で、誰だかわからない相手から“殺してやる”“おかしい”と言われたらどう思いますか?気分を害するなんてレベルじゃないと思います。それを誰が書いたかわからないため、恐怖で外を歩けなくなったり、安心してコミュニケーションもとれなくなる。何を言われるかわからないから自分の意見を言えなくなったり、日常生活すらままならない。直接、危害を加えていないと思われるかも知れませんが、心無い誹謗中傷で身体や財産に甚大な影響が及ぶこともあり、書き込むときには自分の名前と顔を出して発信しても後ろめたくないか、直接相手に言えるか、と考えることが大事なんです」■ネット上の書き込みは“公の場所”での発言訴えられる前に投稿を消したからといっても罪が消えるわけではない。「削除すると同時に明らかに犯罪が成立する場合は速やかに警察に出頭すること。それを含む対応を弁護士に相談することも検討したほうがよいでしょう」前出の三上さんも述べる。「インターネット上の書き込みは公の場所での発言だと思ってください」ネット上でも、リアルと同じ接し方で生きていれば問題は起こらないはずだ。●ネットに書き込んだ誹謗中傷で刑事事件になった事例(抜粋)【その1】・投稿者原田隆司元豊田市議・被害者一般女性〜概要〜愛知・豊田市の原田元市議は2019年8月に茨城県常磐自動車道で起きたあおり運転事件で、容疑者の車に乗っていた女性と異なる女性に対し「ガラケー女」などと自身のSNSに書き込んだ。書き込まれた女性は元市議を訴え、東京地裁は名誉毀損を認め、元市議に33万円の賠償を命じた。【その2】・投稿者30代女性ら2人・被害者川崎希さん〜概要〜元AKBメンバーでタレントの川崎希さんに対し、匿名掲示板で誹謗中傷。ほかにも自宅住所をさらすなどの書き込みを行ったとして、2020年3月、山形県の主婦(39)と大阪府の事務員女性(45)を侮辱罪の疑いで書類送検した。【その3】・投稿者20代男性ほか・被害者木村花さん〜概要〜自殺したプロレスラーの木村花さんに対し、生前、暴力的なコメントを複数回木村さんのSNSアカウントに書き込んだ。侮辱罪で略式起訴され、東京簡易裁判所は2021年3月、科料9000円の略式命令を出した。ほかにも福井県の30代男性も今年4月、書類送検されている。今年9月には木村さんの母親・響子さんに対しても誹謗中傷を繰り返した東京都の40代男性が書類送検された。【その4】・投稿者20代男性・被害者中川翔子さん〜概要〜匿名掲示板で「自殺しろ」「硫酸をかけてやる」など殺害予告とも受け取れるような書き込みも行った。今年10月、侮辱と脅迫の疑いで書類送検された。ネットの誹謗中傷投稿で刑事事件に発展したケースの一部。タレントなど著名人に限らず、事件の加害者と誤認された一般人やその関係先も被害に遭うこともお話を聞いたのは……弁護士高橋麻理さんAuthense法律事務所所属。元検察官。退官後、弁護士に。刑事事件、企業法務案件、離婚等家事事件等を担当お話を聞いたのは……ITジャーナリスト三上洋さんセキュリティーやネット事件、スマートフォンなどネット事情全般に詳しい。文教大学情報学部非常勤講師
2021年11月15日※写真はイメージです「てっきり夫は浮気をしているものだと思っていました」東京都内在住の主婦、飯田美咲さん(仮名・30代)はこう言ってうなだれる。「1年ほど前から夫(40代)の様子がおかしくなったんです。四六時中スマホを手放さなくなり、トイレや風呂場にまで持っていくんです。普段は温厚な性格なのに、あるとき子どもが遊び半分で夫のスマホを手にしたら、人が変わったように激怒して……」不信感が募った美咲さんがある日、夫が目を離したすきにスマホを見ると、なんと女性のスカート内を盗撮した写真が出てきたのだ。その数は、数百枚に及んだという。「目の前が真っ暗になりました。問いただすと、最初こそ否定したものの夫は盗撮を認め、土下座しました。その場で画像は全削除させましたが、今でもその記憶は脳裏にこびりついています。夫は家事も育児も積極的に参加するし、仕事も順調です。盗撮さえしなければ、本当に“いい夫”だったのに……」■大卒のごく普通のサラリーマンが盗撮加害者盗撮被害が後を絶たない。今年4月には国会議事堂内のトイレで盗撮事件が発生。後日、経産省職員が逮捕された。8月にはあろうことか警察官も……。「紀州のドン・ファン」事件を担当していた和歌山県警捜査1課の巡査部長(当時35)は、事件の捜査で東京への出張中に女性をスマホで盗撮。気づいた女性ともみ合いになり転倒させてケガを負わせてしまった。巡査部長は書類送検されている。「盗撮のニュースは連日のように報じられていますが、これらはあくまでも氷山の一角です。警視庁のデータでは、’10年の盗撮事件の検挙件数は1741件でしたが、’19年に3953件に。つまり10年で倍増しています。さらに被害者は撮られても気づかず、被害が届けられないため、実際の数はさらに多いと考えられます」そう語るのは、依存症治療に詳しい精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん。斉藤さんが勤める神奈川県鎌倉市にある大船榎本クリニックは、「性依存症」として盗撮や痴漢加害者の治療に長年取り組んできた。「当クリニックで性依存症と診断された患者の内訳を見ると盗撮加害者は痴漢の次に多い。盗撮は“痴漢と並ぶ国内の2大性犯罪”と言っても過言ではない」(斉藤さん、以下同)同クリニックでは’06年5月から’20年3月にかけて、窃視障害(盗撮・のぞき)と診断された521人の患者に対する調査を実施。すると次のような加害者像が浮かび上がってきた。「加害者にもっとも多いのは『大卒のごく普通のサラリーマン』。また、配偶者がいる人が約5割を占めています」さらに驚くべきは、盗撮加害者が若年化していること。「盗撮を始めた年齢は10~20代が全体の7割、平均21・8歳でした」冒頭の美咲さんの夫のように、普通の人の裏の顔が盗撮加害者というケースがほとんどなのだ。では、盗撮事件が起きやすい場所と手口はどうか。「駅構内の階段やエスカレーター、電車内は盗撮多発スポットです。警察庁生活安全局の資料によれば、令和元年にはこれらの場所での盗撮被害は全体の3割を占めています」盗撮といえばペンや靴、カバンなどに仕込んだ超小型カメラでの撮影を想像しがちだが、実際には『スマホ』が使われるケースが圧倒的に多い。同クリニックで治療中の盗撮加害者でもスマホが69%、うち9割は、撮影時にシャッター音が鳴らない『無音アプリ』を使用して犯行に及んだことが明らかになった。駅構内のエスカレーターで、女性に気づかれないようにスマホでスカートの中を盗撮する──。これがデータからあぶり出された盗撮加害者の常とう手段といえるだろう。■日々のストレスを盗撮で解消女性からすると、「そもそもなぜ盗撮をするのか?」と首をひねるだろう。「盗撮軽視の興味本位からという動機がもっとも多いです。最初は、ごく軽い気持ちで自己使用(マスターベーション)のためにやったのに徐々に目的が変化していきます。盗撮前には、周囲にバレないかと緊張していたものの、実際にはスマホでいとも簡単に撮れてしまうとします。その際、加害者は達成感や優越感、スリルを味わいそれがやみつきになり、『盗撮のための盗撮』にハマっていくのです。やがて盗撮自体が目的となって、撮った画像を確認すらしなくなる人もいるんです」さらに厄介なのは、盗撮が単なる高揚感だけに終わらないことだ。次に紹介するのは、かつて斉藤さんが治療した加害者が語った言葉だ。『盗撮とは、相手に気づかれないように、日記を盗み見る行為なんです。その優越感は、日常生活では絶対に味わえないですから。そして画像や動画を保存することで、支配欲や所有欲が満たされるのです』「彼らは劣等感、孤独感、傷ついた自尊感情や満たされない承認欲求など、日々のストレスを盗撮という性犯罪で解消しようとしているんです。残念ながら一部の男性の中には不適切なストレス対処法として、女性を支配したり、モノのように扱う、性的に貶めるという手段を使う傾向が強く見られる。その背景には、女性を下に見る男尊女卑的な価値観が横たわっています」自分のストレス解消のために、女だからと八つ当たりする。これは8月に起きた小田急線刺傷事件でも見られた。加害者の「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思っていた」という供述に表れていたミソジニー(女性嫌悪)ともつながるのだ。「加害者には、“ミニスカートをはいているのは盗撮をしてほしいと言っているようなものだ”などの認知の歪みがうかがえます。“盗撮は根暗な変態がするもの”と言う人もいますが、そうではありません。むしろ女性をモノのように扱う一部の男性が持つ価値観は、社会に蔓延しているセクハラやパワハラと根っこは変わらない」盗撮加害者になりうる危うさは誰もが秘めているのだ。■未成年による盗撮は逮捕されることもさらには接客中の風俗嬢を狙った盗撮も相次いでいる。今年6月に立川市内のホテルで風俗店勤務の女性(31)が19歳少年に殺害された。被害者女性は加害少年が部屋にカメラを持ち込んでいたことに気がつき、トラブルになった、とも報じられている。この加害少年のように未成年の子どもが盗撮をするケースも少なからずある。「母親にとっては息子が性犯罪の加害者になるとは、まさに青天の霹靂(へきれき)です。“まさかうちの子が……”という驚きとともに、周囲からも“親の育て方が悪かったんだろう”“親の顔を見てみたい”など心無い言葉を浴びせられます。しかし専門家からすると、親の育て方と加害者の問題行動には直接的な相関関係を示すエビデンスは皆無です。けれど特に母親は、“私の育て方が悪かったから”という子育て自己責任論によって追い詰められ、誰にも相談できずに苦悩します」同クリニックでは、「妻の会」をはじめとする加害者家族の支援にも取り組んでいる。「“うちの子は手のかからないいい子でした”と言う親御さんもいますが、実はそれはあくまで親にとっての『いい子』。子どもは自分の欲求や欲望を巧妙に隠しながら、親の期待を先取りしてニコニコとした仮面をかぶっていたというパターンもあります」過去に、検事として盗撮加害者を取り調べた経験のある高橋麻理弁護士は、語る。「盗撮をすれば未成年とはいえ、14歳以上になると刑事責任を負う可能性はあります」事実、盗撮をした疑いで高校生が逮捕された事例もある。「成人の場合は刑事処罰が科せられる可能性がありますが、少年法の下では、少年更生のために必要な手続きが進められることになります。未成年者の場合、当人も、善悪の判断がついていないことも考えられます。大人たちは処罰をする前に、『悪ふざけの先』にどういう危険があるのか、子どもたちにモラルを教える必要がありますよね」(高橋弁護士)また子どもから盗撮の被害を相談された際、大人が心得るべきことがある。「盗撮の被害者はその後も“SNSにアップされたらどうしよう”など、不特定多数に晒される不安にさいなまれます。人によっては駅を利用できない、電車に乗れなくなるなど、日常生活が脅かされることも。相談を受けた人の“そんな短いスカートをはいているせいだ”と被害者の服装を注意したり、“触られたわけじゃあるまいし”など軽視する言動は、二次被害につながります」(前出の斉藤さん)性犯罪にもかかわらず、軽く扱われがちな背景には法整備の問題もある。「現在、盗撮罪という法律はありません。取り締まるのは、各都道府県が制定する迷惑防止条例だけ。つまり全国で統一した基準がないので、塾のトイレや会社の更衣室など、『公共の場所』以外での盗撮行為は、処罰できる県とできない県があるのです。銭湯などでの盗撮行為は、軽犯罪法が適用できる場合もありますが、『30日未満の拘留か、1万円未満の科料』と極めて罪が軽い」(高橋弁護士)盗撮で加害者を起訴することは一筋縄ではいかないもどかしい現状。だが、泣き寝入りしないための策もある。高橋弁護士は述べる。「盗撮は常習性が高い性犯罪。被害届を出すことで、後に加害者がまたどこかで盗撮をして捕まったとき、加害者のスマホに残っていた画像と提出しておいた届けが結びつき、立件につながるかもしれません。犯人が証拠隠滅を図っても、警察側がデータを復元することもありますよ。最近では、ようやく法制審議会でも『撮影罪』という名称で、盗撮を取り締まる法律を作る動きが出てきましたが慎重な議論は必要ですね。現状の迷惑防止条例でも、適切に運用すれば一定の抑止力にもなるとも考えられます」現在の日本は盗撮大国とも言われている。「被害を防ぐためには、日常から誰かを無断で撮影することが、どう他者に影響を及ぼすか、より自覚することです」(斉藤さん)ある日突然、夫や息子が盗撮で捕まり、加害者家族になる可能性も。スマホで簡単に撮影できる便利さの背後には、危うさが秘められている現状を改めて考え直したい。お話を聞いたのは…精神保健福祉士・社会福祉士斉藤章佳さん榎本クリニックにて依存症問題に携わる。著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)など弁護士高橋麻理さんAuthense法律事務所所属。検察官として殺人、詐欺、性犯罪事件など刑事事件の捜査、公判に携わった。退官後、弁護士に。刑事事件、離婚等家事事件等を担当《取材・文/アケミン》
2021年11月01日この漫画は書籍『おうち性教育はじめます』(フクチマミ著、村瀬幸浩著)の内容から一部を掲載しています(全12話)。 ■前回のあらすじ子どもへの性教育、まずは「プライベートパーツ」の大切さから伝えることが大事だという村瀬先生。親子間のスキンシップも注意すべき…?■防犯のために知っておきたい「NO・GO・TELL」「嫌」を伝えることはワガママなことではなく、自分を守り、相手を尊重するためにもとても大切なことのようです。次回に続く(全12話)「おうち性教育はじめます」連載は6時更新! 『おうち性教育はじめます』 フクチマミ著、村瀬幸浩著(KADOKAWA) ¥1,430(税込) \ この後どうなる!? /書籍「おうち性教育はじめます」はこちら 「うちにも赤ちゃんはくる?」といった、突然やってくる素朴な質問への答え方から、性犯罪の被害者・加害者にならないための日々の言葉かけ、思春期に訪れる男女の心と体の変化まで、親子で一緒に学ぶことができるパパママの必読本。毎日の家族の会話で子どもを守り、これからの時代を生き抜くための力を養うための「おうち性教育」のはじめ方をわかりやすく学べる一冊。
2021年10月22日好きなベーカリーを紹介する古賀晋一郎容疑者(インスタグラムより、画像の一部を加工)「容疑者は美容室に来た女性客を“金づる”と“性的対象”としか見ていないんです。私と同じ手口でたくさんの女性が引っかかっているのかと思うと、絶対に許せないし気持ち悪い!」と激しい憤りを口にしたのは、神奈川県在住の田中久美子さん(20代、仮名)。9月25日、警視庁は東京・原宿で美容室『scoppio』を経営している美容師の古賀晋一郎容疑者(38)を強制わいせつの疑いで逮捕した。「今年6月、容疑者はカットモデルとして来店した20代の女性に対して、カラーリングの施術中に手首をつかんで、自分の下半身を無理やり触らせるなどのわいせつな行為をしていました。女性が警察署に届け出たことから被害が発覚しています」(全国紙社会部記者)警察の取り調べに対して、古賀容疑者は“まったく記憶にありません”と容疑を否認しているが……。「警視庁によると、別の女性からも“容疑者に卑猥な言葉を浴びせられた”という相談が来ているようです」(同・全国紙記者)若者でにぎわう竹下通りから少し離れた高級住宅街の中にあるごく一般的なマンションの一室が、容疑者の美容室だ。店のHPを見ると【完全予約制・女性限定】となっているが……週刊女性が取材を進めていくと、この2つの事例が容疑者をめぐる性的被害の氷山の一角だったことが判明する──。■地元の同級生が証言“暗いやつやった”容疑者の故郷は、福岡県久留米市。中学校の同級生10数人に容疑者の印象を尋ねたが、ほとんどが“知らない”“覚えていない”だった。容疑者を知る数少ない同級生のひとりによると、「おとなしいというか、暗いやつやった。友達はほとんどおらんで、一匹狼っちゅう感じやった。怒ったところは1回も見たことがなかけど、カッコばつけとったけん、悪さをしとる連中からボコられとったことが1度あった」税務署に勤務する厳格な父親を持つも、「学校の成績は下のほうやったね。合格できる高校がなかったけん、誰も行かんような遠くの太宰府市内にある私立高校にひっそりと入っとった」(同・同級生)高校の同級生にも容疑者の印象を聞くも“覚えていない”がほとんどだった。高校卒業後、福岡市内にある美容専門学校に入学。前出の同級生がこう振り返る。「確かに“古賀は東京で美容師になろうとしよる”と聞いたことがあった。そのころはカリスマ美容師がもてはやされる時代やったけんね。地味な彼も都会でひと花咲かそうと思ったんじゃなかですか」東京で自身の美容室を構えるようになると、目立たない存在だった容疑者は豹変。多くの女性に性的暴力を行っていく──。■卑猥発言・おさわり・ぼったくりの悪行三昧冒頭の田中さんは3年前の秋、大学生のとき被害に遭った。通学途中の新宿駅・山手線のホームへ上がる階段付近で、「“お姉さん、そろそろ髪を染めたくない?”と言って行く手を遮る男性が現れて……。それが古賀容疑者でした。“3分でいいから!”と強引に話してきたんです。お店のHPを見せながら“カット代、通常1万円を3000円にしてあげるから”などと言ってきました」当時、髪の毛を青く染めていた古賀容疑者は、ハイテンションで話し続けたという。「“いつ、空いてるの?”と、しつこくて断り切れなかった」(同・田中さん、以下同)1週間後、美容室に行くと、「容疑者とアシスタント2人はベランダでタバコを吸っていました。悪い空気を感じて帰りたかったけど、もう逃げ出せる雰囲気ではなかった」カットとカラーリングの施術を受けることになった田中さん。そこからは、セクハラ発言のオンパレードだった。「容疑者はなれなれしくて、いきなり“彼氏はいるの?”“経験人数は?”と聞いてきたんです」さらに施術前に、住所や電話番号、学歴など個人情報を書かされたカウンセリングシートを見ながら、「“へぇー海外に留学したことあるの。僕もあるんだけど、海外の人って、(アソコが)大きいよね?”とか言ってきて。あげくの果てに“僕を彼氏にどう?”と……」さらに施術は、カットとカラーリングだけのはずが、「トリートメントも無理やりやらされました。“今日はお金がないから”と断っても、近くにある銀行のATMを紹介されて……」結局、トリートメントも追加されて合計1万9800円を支払わされたという。「容疑者に“ホントなら4万5000円ぐらいかかるよ”と言われましたが、施術そのものもホントに下手で……。セクハラされて、ぼったくられて、最悪な気分でした」田中さんは警察へ相談することも考えたが、容疑者のセクハラ発言を録音しておらず泣き寝入りするしかなかった。■被害者は100人以上だが、こんな思いをする女性を少しでも減らすため、SNS上に被害に遭った女性が集まれるアカウントを作成。容疑者の悪行を拡散すると、「“私もセクハラされた”“予約をキャンセルしたら脅された”という声がたくさん集まりました。そのほとんどが私と同じ悪質なキャッチにつかまった人たちでした。被害者は、100人以上います」田中さんのアカウントに届いたメッセージには、こんな鬼畜行為をされた人たちも。《髪を触るとき、わざと胸にあたるように触ってきた。エレベーターという密室で“チューしちゃおっか”とも言われた》《施術中に不快な質問されて、髪の匂いを嗅がれたり、キスも迫られた。容疑者が自慰行為する姿も見せられた》どれだけの女性を毒牙にかけ、つらい思いを強いてきたのか──。カリスマ美容師に憧れた男の“悪魔の所業”。
2021年10月05日SNSで蔓延する盗撮アカウント佐賀県の商業施設で、女性のスカートの中にカメラ付き腕時計を差し向けて盗撮した疑いで57歳の無職男性を逮捕。愛知県の31歳の小学校教師が、授業中にしゃがんでいた女子児童をスマホで盗撮していたことが発覚して懲戒免職。京都府で開催された高校生の陸上競技大会で、女子選手の下半身を盗撮した疑いで47歳の会社員男性を書類送検。熊本県の41歳の郵便局員が、職場の更衣室に録画状態のスマホを置き、同僚女性の着替えを盗撮した疑いで逮捕……。これらはすべて、ここ10日あまりの間に報道された盗撮事件の一部だ。ネットニュースを検索すると、ほぼ毎日のように盗撮で誰かが逮捕されていることがわかる。実は、盗撮の検挙件数は平成22年の1741件から令和元年の3953件と、この10年で倍増(警視庁生活安全局調べ)。痴漢に次ぐもっとも身近な性犯罪なのである。■盗撮の実態に初めて迫ったそんな盗撮が、実はアルコールや薬物、ギャンブル依存症と同じく、やめたくてもやめられない「依存症」の一種だと語るのは、先頃『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)を上梓した大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)だ。アジア最大の依存症治療施設である榎本クリニックで、これまでに2000人以上の性犯罪加害者の治療に携わり、代表作である『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『小児性愛という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)などの著書でその実態に迫ってきた。盗撮をはじめ、痴漢や下着窃盗といった性犯罪は、得てして被害者である女性にばかり自衛策や注意喚起が求められたり、「男はスケベでしょうもない生き物だから」といったノリで軽く扱われたりと、加害者の存在が透明化されがちだ。しかし本書では、521人の盗撮加害者へのヒアリング調査を分析するなど、徹底して盗撮を「加害者側の問題」として取り扱い、その犯行の実態や、動機などの加害者心理、行動依存としてのメカニズムを解き明かしていく。なかでも興味深いのは、実際の盗撮加害者へのインタビュー取材が収録されている点。クリニックで性犯罪の再発防止プログラムを受講し、今も性依存症からの回復への取り組みを続ける彼ら。その口から語られる経験や現実の歪んだとらえ方(認知の歪み)は、性依存症を理解するうえでの貴重な証言となっている。■Hさん(仮名・50歳)の場合妻と娘2人を家族に持つ営業職のHさん(仮名・50歳)。ごく普通のサラリーマンだった彼が盗撮に手を染めたきっかけは、営業先でスマホに入っている「無音アプリ」の存在を知り、興味本位でダウンロードしたことだったという(以下、加害者の発言はすべて『盗撮をやめられない男たち』より引用)。H「ちょうど7年前、ジョギングをしているとき、前を走っている女性のタイトなジョギングウェアのお尻に目がいってしまい、つい試しに無音アプリを試してみたらうまく撮れてしまったんです。後ろ姿なのでバレることもありませんでした」著者の斉藤氏いわく、盗撮を始めるきっかけの多くは、Hさんのように興味本位の軽い気持ちから。世間でよくイメージされるような「性欲が抑えきれなかった」といった動機は、実は少数派なのだとか。しかし、そこでなんらかの達成感や充実感を脳が学習してしまうと、やがて盗撮行為に耽溺(たんでき)していき、次第にやめられなくなっていくのだという。Hさんも、成功した達成感が罪悪感を上回り、やがて通勤中の電車内でも女性のお尻やスカートの中を狙って盗撮を繰り返すようになった。H「仕事でイライラすることがあったときやヒマなときも盗撮したくなっていました。特に、ぽっかり空いた時間がいちばん危ないんですよね。日曜はヒマで時間を持て余していたので、お酒を飲んで気分を高揚させてから電車に乗って、下着の見えそうな女性の前に座るという行動を繰り返していました」このように、盗撮をはじめとする性依存症は、性的な快感にハマって依存するというよりも、日常のストレスやむなしさといった苦痛から、一時的に逃れるための手段として耽溺していくのが特徴。「仕事で嫌なことがあったとき」「お酒を飲んで気が大きくなったとき」など、特定の状況が犯行のトリガー(引き金)になることも多い。結局、Hさんは最初に盗撮に手を染めてから5年後、犯行を目撃していた人に取り押さえられ逮捕される。しかし起訴はされず、弁護士を経由して示談金70万円を支払った。これは盗撮の示談金としてはかなり高額なほう。初犯なら大抵は10〜30万円の示談金で解決できてしまい、起訴されることはまずない。たとえ起訴されても執行猶予がついたり、罰金刑などの略式命令で刑事手続きが終わることが多い。そのため、懲りずに再犯を繰り返す人が後を絶たないのだという。■盗撮や痴漢は「依存症」示談が成立した後、Hさんは弁護士に紹介されて榎本クリニックを受診した。H 「警察や弁護士から“絶対に病気だから専門病院に行け”と強くすすめられて。榎本クリニックで専門の再発防止プログラムを受けて、自分の認知の歪みに気づきました。以前の自分は“撮った画像をネットに上げるわけでもなく自分で楽しんでいるだけだから、人には迷惑をかけてない。相手を傷つけているわけではないから何をしたっていい”と思い込んでいたのですが、そうではないことにはっきりと気づけました」性依存症には適切な治療が必要であり、残念ながら刑罰を課したり反省を促したりするだけでは再犯を防ぐことはできない。にもかかわらず、Hさんのように最初の逮捕を機に治療につながるケースは、実際には珍しいのだとか。そんな彼ですら、最初の犯行から受診につながるまで5年もかかっている。その間、被害者が毎日のように生まれ続けていたと考えると、盗撮がいかに暗数(主に犯罪統計において、警察などが認知していない実際の発生件数のこと)の多い性犯罪であるかがうかがい知れるだろう。Hさんは、クリニックを受診して2年以上経つ現在も、再発防止プログラムを継続して受講している。H「今は、トリガーになるような性的な雑誌や動画は見ないようにしています。お酒もトリガーになるので外では飲まないようにし、家にいるときも妻が夜勤でいないときは禁酒しています。また、ヒマになってしまうのもいけないので、スケジュールをしっかりと組むようにしました。特に以前は日曜がヒマだと盗撮に出かけてしまっていたのを、今はペースはゆっくりですが1日8時間ほどかけてジョギングするようにしています」通常の感覚だと、「つべこべ言わずに盗撮なんて今すぐやめろよ」と思ってしまうが、一度盗撮に依存してしまった人にとっては、盗撮をしなくても済む習慣を身につけ、盗撮したくなってしまったときどう具体的に対処するか決めておくなど「盗撮のやめ方」を学び、自分の行動やリスクを管理するためのプログラムが不可欠なのだ。■Oさん(仮名・45歳)の場合本書には、もう1人の盗撮加害者が登場する。メーカー勤務の会社員だったOさん(仮名・45歳)だ。彼は17年前に盗撮行為を始めてから、なんと3度の逮捕と2度の懲役刑を受けている。もともと盗撮系のアダルトビデオを好んで見ていた彼は、自分でも撮ってみたい欲求に駆られ、大型ショッピングモールや書店などで、靴に小型カメラを仕込み女性のスカートの中を撮影するようになった。O「盗撮しているときは悪いことをしているとわかっているのですが、それよりも盗撮したいという気持ちのほうが上回って感覚がマヒしている状態でした。そして、週に一度だった盗撮の頻度がどんどん増えてほぼ毎日になっていったので、“あれ?これはちょっとおかしいな”“自分で行動をコントロールできなくなってきているな”と気づきました。でも、もうそのときには、意志の力ではやめられなくなっていたんです」盗撮の反復性・常習性の強さを端的に表した発言だ。「何か自分の中で大きな不思議な力が働き、誰にもできないことが自分にはできるという高揚感や全能感のようなものが芽生えていました」という言葉からも、盗撮が単なる性欲に由来するものではなく、支配欲や承認欲求に駆られてハマっていくものであることがわかる。31歳で最初の逮捕をされた彼は、初犯としては珍しく起訴され裁判となり、懲役1年・執行猶予3年の判決を言い渡される。しかし、その執行猶予期間中だった33歳のときに再犯してしまい、2度目の逮捕。結果、1年3か月の実刑判決が下されて服役することになる。出所後は、榎本クリニックで再発防止プログラムを受け、順調に回復への道を歩んでいるかに見えたOさん。盗撮行為の代わりに打ち込める健全な趣味を作ろうと地元のダンスサークルで活動を始めるが、そこに思わぬ落とし穴が待っていた。■カメラを壊して「やめ続ける」しかないO「そのダンスチームでは、練習や大会のたびにメンバー同士で記念撮影をして、それをLINEのトークグループで共有する習慣がありました。私は、スマホを持ったらそれが“再発(リラプス)”のトリガーになるだろうという自覚があったので、あえてカメラ機能のないガラケーを使っていたんです。でも、メンバーはもちろん私が盗撮加害者だったことを知りません。“なんでこの人、今どきガラケーなんだろう”と思われるのが気まずかったし、何よりせっかくメンバーとして認められたチームで、私も写真を撮ったり撮られたりして、もっとみんなとつながりを深めたいと思ってしまったんですよね」サークル活動の仲間ともっと交流したい。そんな純粋な思いから、ついカメラ付きのスマホを購入してしまったOさん。これをプログラムでは、リスクが高まりやすい条件のひとつである「一見重要ではない決定」と呼んでいる。タイミングの悪いことに、最初の服役を機に転職した職場がかなり劣悪な労働環境で、仕事にストレスを抱えていたことも災いした。O「気がついたら、動画モードをオンにしたままエスカレーターに乗り、女性のスカートの中を撮影していました」こうして39歳で実に3度目の逮捕。10か月の実刑判決を受けた彼は、41歳で出所して現在に至る。「理解されないかもしれませんが、本当にやめたいけどやめられない状況でした。もう自分でもどうしていいかわからなくなっていました」と語る切実な口ぶりからも、依存症がいかに深刻な病かがわかるだろう。実際のところ、依存症の治療過程で「再発」はつきものだという。このようにトライ&エラーを繰り返しながら、依存症に「完治」はないことを受け入れ、1日また1日と「やめ続ける」ことにしか回復への道はないのだ。O「あれ以来携帯電話をスマホからガラケーに戻して、万が一、盗撮したくなったときのためにカメラのレンズを壊してコーティングしています。これで、カメラを起動しても撮ることができません。周りから“今どきガラケーなの?”といじられた場合は、“ゲームに課金しすぎちゃってガラケーに戻した”と言い訳するようにしています」一度依存症になってしまったら、そうまでしないと「やめ続ける」ことはできないのである。* * *もちろん被害者の感情に寄り添えば、「性犯罪者は二度と塀の中から出てくるな!」と思うのももっともだ。だが、彼らも自ら望んで性依存症者になったわけではない、と本書の中で斉藤氏は述べる。言い換えれば、私たちもふとしたきっかけで、いつ盗撮や痴漢などの犯罪行為にハマってしまうかわからないのだ。そこに依存症の真の恐ろしさがあるといえる。だからこそ、私たちは性犯罪や性依存症のメカニズムを正しく理解し、その治療や回復、あるいは予防や再犯防止に社会全体で取り組む必要がある。いわば本書は、盗撮という身近にある性犯罪を通して、この社会が抱えているより大きな問題を提示しているのである。福田フクスケ(ふくだ・ふくすけ)編集者&ライター。週刊誌の編集を経て現在は書籍編集。またライターとして田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)、プチ鹿島『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)、松尾スズキ『現代、野蛮人入門』(角川SSC新書)などの構成に参加。雑誌『GINZA』で連載コラムも。Twitterやnoteにて、恋愛・セックス・ジェンダー論の発信もしている。
2021年09月21日イケメンエリートだった丸田憲司朗被告(本人SNSより)『お前か!このカス!俺の親友の友達に淫らな行為しやがって(刑務所から)一生出てくんな!』(原文ママ)丸田憲司朗被告のSNSに書き込まれた怒りの言葉だ─。9月7日、警視庁は住所不定、無職の丸田被告を性的暴行の疑いで逮捕した。去年から計9回目となる。今回の再逮捕の容疑は2017年4月、20代の女性に睡眠作用のある薬物を混入したカクテルを飲ませて心神を喪失させたうえで、自宅に連れ込み、性的暴行をしたというもの。全国紙の社会部記者によると、「被告は犯行時、リクルートコミュニケーションズの社員でした。その肩書を利用して就活生がOB訪問できるマッチングアプリなどで、言葉巧みに女子大生を誘い出していた。自宅からは10種類の睡眠薬700錠以上と錠剤をすりつぶすためのすり鉢が見つかりました。さらに、被告のスマホには40人もの女性の裸の写真があったようです」■学歴を偽って女性に近づいた犯行はこれだけにとどまらず、余罪はまだまだありそうだ。さらには、「被告は向井理に似たイケメンですが、被害女性には“自分は神戸大学卒だ”と学歴を偽っていたようです」(同・社会部記者)実際は甲南大学卒だったという丸田被告。虚勢を張って卑怯なやり口で複数の女性を毒牙にかけた。「レイプを9回以上も繰り返している被告は完全に異常だと思います。許せない!」と怒りを口にするのは、ジャーナリストの郡司真子さん。彼女は28年前、薬物を飲まされてレイプされた経験があるという。■女性を服従させる、支配できる快感「当時、地方で記者をしていたときに、なじみの警察官からビールに睡眠薬のハルシオンを入れられて……。もう、気がついたときには、ことが終わったあとでベッドの上でした。そのときのことは今でもつらいので、あまり思い出したくないですね。口にできるようになったのが、わずか数年前ですから」20数年たっても、レイプの傷は癒えない─。犯行を繰り返す容疑者に対して、「一度やったら、その興奮が忘れられないんでしょう。女性を服従させる、支配できる快感がたまらない……。被告は人格的に破綻しているとしか思えない」(郡司さん)8月31日、東京地裁にて準強制性交等や住居侵入の罪に問われた丸田被告の初公判が開かれていた。そこでの被告は終始、オドオドした様子で、裁判長からたびたび“もっと大きな声で!”と注意を受けていたという。冒頭にあるメッセージを書き込んだ男性に連絡を取ったが、ついに返事が来ることはなかった─。被害女性はもちろん、その家族や友人……被告は、どれほどの人を悲しませ、激怒させたのかわからない。
2021年09月13日「性犯罪では、被害に遭った人は『一生苦しむ』と言われたり、ときには『魂の殺人』という表現で語られたりします。それは一部事実だけど、本当ではありません。人には、戻る力もあります。私も一時は“先生”や“札幌”という言葉を聞くのもひどく苦痛でしたが、変われました。周囲の支えや法律に守られることによって立ち直れる事実を、私の体験を通じて知ってもらいたいのです」フォトグラファーの石田郁子さん(43)が、信頼する教師から「性暴力」を受け始めたのは、札幌市の中学に通っていた15歳のとき。ずっと「恋愛」だと思い込まされてきて、それが「犯罪」であったと気付いたときは37歳になっていた。児童・生徒への教師による性暴力が後を絶たない現状がある。文部科学省によると、’19年度に性暴力やセクハラで処分された公立小中高などの教職員は273人で、過去最多だった前年度とほぼ変わらぬ多い数だった。このうち121人が、性暴力によって懲戒免職となっている。そんななか、21年5月に、教師らによる児童・生徒へのわいせつ行為や性暴力を防止する、いわゆる「教員性暴力対策法」が成立。この新法により、懲戒免職となった教職員が処分歴を隠して再び教壇に立つことなどが極めて困難となった。石田さんが、彼女の尊厳をかけて「実名・顔出し」で取り組んだ教師らを訴えた裁判は、この新法成立に大きく寄与したとされる。自らのPTSD(心的外傷後ストレス障害)や時効の壁との闘いを経て、現在は性暴力に関する講演や執筆も精力的に行っている。「15歳までは、どこの学校にもいる、絵の好きな普通の女の子でした」魂の回復までの、四半世紀に及ぶ長い道のりを語り始めた。■「実は好きだったんだ」教師に無理やりキスをされ、頭が真っ白になって……「77年、札幌市の生まれです。両親はいわゆる団塊の世代で、父は公務員、母は専業主婦でした。加害者の教員は、私が中3のときに、通っていた公立中学に赴任してきました。担当は美術で、当時28歳で独身でした。中3の卒業式の前日に、その教員から突然、『チケットがあるんだ』と、美術館に誘われました。私は美術科のある高校を目指していて、絵の指導を受けていました。お世話になった先生の誘いを断れずに美術館へ行き、そこで私は急におなかが痛くなるんです」その教師Aは、体を休ませるためと言って石田さんを一人暮らしの自宅に車で連れ帰った。やがて体調が戻った彼女が画集などを見ていると、「実は好きだったんだ」いったんは拒絶したものの、無理やりキスをされた。「私は頭が真っ白になり、過呼吸のような状態になって、泣きだしてしまいました。その後、春休み中に、言われるがまま3回ほど会いました。同じころ、私の異変を察した母に、『先生にキスされた』と初めて打ち明けました」すると母親(73)は、「15歳なのに早すぎる。そういうことは、好きな人とするもの」娘の気持ちや事情を聞くことはなく、叱りつけてきた。「もともと世間体を何より気にする母でした。その叱責を聞いて、私は子供なのにいやらしいことをしてしまったんだと思うと同時に、親に知られると頭ごなしに怒られるんだと思って、その後、教員とのことは言わなくなるんです。当時の私にとって、性的な犯罪というのは、夜道で怖い人が襲うというイメージでした。でも教員は、『好きだ』と言いながら性的なことをしてくる。彼は私の絵を褒めてくれる人であって、イコール恋愛ではけっしてない。ただ、自分が生徒として好感を持つ先生が好きと言うのなら、私も喜ばなきゃいけないかな、というのが正直な気持ちでした」その特異な関係性に気付くのは、もっとあとになってからだった。「教師と生徒。その絶対的な支配関係があって、一緒にいる間は、私は人形のようになっていたと思います」高校は、進学校として知られる地元の公立校へ。「その後も、海に車で連れていかれて車内で上半身裸にされることがあったりして、私は罪悪感を持って家に帰るんです。誰にも話せず、自分の中に不安がたまっていくだけ。その分、必死で勉強しましたね。性的な被害を受けて精神が揺らいでいたので、確実に結果の出る勉強という安心にすがっていたのだと思います」卒業後には地元の一流大学へ合格でき、美術史を専攻することとなった。しかしそのころ、教師Aとの関係性に一つの大きな変化が。「私が大学生になると、教員から直接の性行為を求められるようになるんです。私自身はずっと感情をなくしている状態ですから、怖くもないし、楽しくもない。ただ、性交がうまくいかないんです。私が受け入れる状態になれない。不感症というものじゃないかと疑ったこともありました。ただ痛いばかりで、『痛い、無理です』となっていました。のちに取材などで、『彼が痛くなくなるような工夫は?』と問われて、初めて気付くんです。向こうには、相手に対する気遣いなど一切なかったということに。その後、別の男性とは互いに思いやる感情も持てましたし、普通にそうした行為もできましたから」別れもまた、一方的だった。「大学2年の夏でした。教員に新しい恋人ができたようで、私とは会わなくなりました。彼の相手は、新任でやってきた女性教師だったようです。私が出した手紙も、開封されずに送り返されてきたりして。これで縁が切れた、と思いました。と同時に、ひどく憂鬱な気分にもなってしまうんです。支配する、されるという異常な環境があまりに長く続いたから、それが激変するのはまた怖いという……。DVの構造に似ているのかもしれません」その後月日がたち、ほかの性被害の事例を知り、裁判傍聴などにいくにつれ、石田さんは「自分のされたことは裁判になるようなことなのだ」と自覚した。そのとき、涙が止まらなかったという。それがきっかけとなり、石田さんは札幌に戻り、教師Aを呼び出す。教育委員会への申し立てに先立ち、証拠となる音声データを集めるためだった。「うまく言えませんが、私自身、このまま黙って生き続けることはできないという思いです。今もあの教師が中学校で普通に生徒と接していて、教育委員会も黙認している。その教室の情景を想像して、黙っていられなくなったのが、私が提訴に至ったいちばんの理由です」長い長い戦いの始まりだった。そして石田さんの勇気は、冒頭に述べた通り教師Aを懲戒免職へと追いやり、多くの被害者を救う教師等の性暴力から児童・生徒を守る新法設立への大きな後押しへとなったのだ。■実名で顔もさらして戦った石田さんは、被害者の立場で発信を続けている「狭いうえに散らかっていて、ごめんなさい。これでも必死に片づけたんですが(笑)。4年前から、ずっとこの6畳一間で、ご飯も仕事の写真処理も行ってます。さあ、まずは冷たい麦茶でも」都内にある石田さんの自宅兼仕事場を訪れたのは8月の猛暑の日だった。カメラ機材や性暴力に関する書籍などがぎっしり置かれているなかから、記事で使用するアルバムや写真などを探し出してくれる。「中学の卒業アルバムは、ずっと見られなかった。ようやく最近です、見ても平気になったのは。ああ、この人が、その教員です。おかしいと思いませんか、私の写真はいろんなところに出ているのに、加害者であるAの顔は誰にも知られていないというのは」それまでにこやかに対応してくれていた石田さんの表情が一瞬、翳る。教師Aは懲戒免職となった直後、「処分は不当」としてその取り消しを求めている。彼女は言う。「『加害者にならないための教育』が大事だと思うんです。泥棒や殺人がやってはいけないことと同じように、教師の性暴力も犯罪なのだと社会全体で認識すること。また親御さんに対しては、もしお子さんが被害を受けていても、子供を責めることはしないでほしい。被害の当事者はけっして悪くないと伝えたいです」同様に、加害者へのケアが必要と語るのは、石田さんの裁判を担当した小竹広子弁護士。「私は加害者の弁護もしますが、過去に自身も性被害を受けていた男性が意外に多い。暴力の連鎖ですね。また時効の問題も、それを理由に罪に問われないとしたら、加害者が自分の罪に向き合う機会を奪うことになり、社会全体の不幸につながると思います」フォトグラファーとして、最近は中高生のスポーツ大会の撮影の仕事が増えたという石田さん。「サッカーとバスケを撮りました。ふと気付くと、自分が被害に遭ったときと同じ年代の子たちなんですよね。でも写真を撮っていて、純粋に若い子たちのひたむきな姿と出合えてうれしかったんです。今後は、信頼できる友人や、もちろん恋人も欲しい。あと、いずれ絵にも戻りたい。あんなことがあって、遠ざけてしまったから」美術科担当でありながら、絵が好きな少女の夢まで奪ったことを教師Aは自覚しているだろうか。石田さんが、再び絵筆を手にする日が近く訪れることを切に願う。
2021年09月13日大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!第56回SNS利用したネット犯罪子どもたちの被害1819人子どもが巻き込まれるネット犯罪ツイッター利用が最多「会ってくれなければ、家の前で死ぬ」小5の女児を、そう脅して連れ出し、ホテルに連れ込んでわいせつ行為をした34歳の男。SNSで知り合った男からわいせつ行為を受ける。裸の写真を送ることを強要される。受け取った画像を「ばらまく」と脅され、要求を繰り返される。そんな卑劣極まりない犯罪が増えている、といいます。性犯罪に悪用されたSNSで最多だったのがツイッターで642人。次いでインスタグラム、学生専用アプリ「ひま部」と続き、ティックトックは76人。被害児童の9割以上を中高生が占め、小学生の被害は84人ですが、増加率は小学生が1番です。政府も新たな基本計画を策定社会全体の協力が急務この映画の監督で、自身も4人のお子さんのお父さん、ヴィート・クルサークさんが、SNSの性犯罪から我が子を守るために大切なことは、幼いころからの性教育と、親子の信頼関係、と指摘しているのは、示唆的です。私の周囲でもスマートフォンの使い方は頻出話題の筆頭ですが、家庭内でのルールを決めているのは少数派。決めていても、監視し続けることに疲れ、結局、子どもにお任せ状態になってしまう家庭が圧倒的。けれど、隣の部屋で子どもが目にしているスマホやパソコンの画面に、親の想像を超えるおぞましい世界が広がっているとしたら……?子どもを守るために、自分にできることは?そう考えると、フィルターを利用したり、ルールを決めることは面倒でも重要で、その点を子どもに納得させるには、親子間でじっくり話し合える信頼関係が必要なのでしょう。SNSを利用した性犯罪。それは、家庭と、行政の施策、そして通信業者などの技術開発。社会全体の協力なくしては、立ち向かうことのできない巨大な敵なのかもしれません。参照
2021年09月01日9年前に投稿された安部光浩容疑者の写真(本人フェイスブックより)前科3犯の“凶悪”性犯罪者が、また捕まった──。ネットで知り合った女子高校生にわいせつ行為をしたとして8月19日に現行犯逮捕されたのは、三重県津市に住む職業不詳・安部光浩容疑者(38)だ。「容疑者は都内に住む女子中学生を装いSNSで女子高校生に接近。西東京市内にあるホテルで会う約束をし、待ち合わせ場所に現れた女子高校生を無理やりホテルに連れ込み、胸を触るなどの行為に及びました」(テレビ局記者)少女が友人に助けを求めるメッセージを送ったためすぐに警察官が駆けつけ、逮捕に至った。2人は初対面だった。わいせつ目的でわざわざ三重から上京していた容疑者。調べに対し、「合意の上だった。初対面の女性でも警戒されないため(安心させてあげるため)女子中学生を装っていた」とあきれた供述をしている。最近ではラブホテルで女子会を行う人も増えているそうだが、まさかやりとりしていた相手が中年男性だとは、少女も思わなかっただろう。■周囲には順調に見えた容疑者の人生そんな安部容疑者は、三重県津市で生まれ育った。地元の友人によると、「昔からぽっちゃりした体形でしたね。とにかく無口で温厚な子でした。ただ、気にくわないことがあるとクレーマーのようにブチ切れることもあり、二面性がありましたね」小学生のときから野球を始め、高校時代には野球部に所属。弱小校だったが、サードでレギュラーだった。「高校卒業後は名古屋にある私立大学に進学。大の車好きで、卒業後は自動車整備工場に就職しました」(同・友人)交際相手はずっといなかったものの、周囲には順調に見えた容疑者の人生。ところが10年ほど前から転落の一途をたどることになる……。■性行為の動画を撮影し、少女を脅す卑劣さ「2012年8月に少女への淫行で逮捕されたんです。当時29歳だった容疑者は、岐阜県内のホテルで、ネットで知り合った16歳の女子高校生に現金5万円を渡す約束をして性交した。その際に裸の写真を撮影し、“今後も俺と会わないと画像をばらまく”と脅したんです」(前出・テレビ局記者、以下同)それだけではない。「さらに同年11月には、愛知県内のホテルで15歳の女子中学生を同じ手口で買春していた事実も勾留中に発覚。性行為中の動画を撮影し、“画像をネットに流出させる”とメールで脅迫したなどとして、再逮捕されました」その後、有罪判決を受けて刑務所に入ったという容疑者。職を失い、出所後は実家に戻って更生に励んでいたのだが……。「2018年12月、またしても再犯に及んだのです。旅行で訪れた沖縄で16歳の少女と性交し、動画撮影までしていました」懲りずに性犯罪を繰り返す容疑者は前科3犯の常習犯だったが、とうとう今回で4回目の逮捕となってしまった。まったく反省していないにもかかわらず刑罰は軽くすんでおり、すぐに釈放されている。実家の近隣住民は最近も容疑者を目撃していたようで、「仕事はちゃんとしていたみたいです。毎日、実家から車で出勤しているところを見かけましたね」津市内の実家は山のふもとに位置する農村地帯にあり、サルやタヌキが普通に道を歩いている。そんな田舎で、両親とともに暮らしていた。すでに仕事を引退し、いまは農業を営む両親。40歳近くにもなって自立せず、性犯罪を繰り返すロリコン息子についてどう考えているのか。農作業から帰ってきたところの父親を直撃したが、「知らん!取材なんかするな!話したくない!帰れ!」と怒りだし、手に持っていたシャッター棒をブンブン振り回して追い返された。■「憎いけれども見捨てられない」母親の慟哭改めて翌日、自宅にいる母親を訪ねてみた。すると、「本当にすみません……。もうどうしていいのか……。息子は完全に(性犯罪の)依存症です……」と息子の“暴走”に手がつけられない様子だった。「刑務所にいたときも毎週、手紙のやりとりをして、反省の言葉を聞いていました。それなのに、またやってしまった。後で捕まるのがわかっているのに、それでも抑えられないんです」(母親、以下同)悪行を重ねる息子に両親ともお手上げ状態だが、それでも実家に住まわせ続けている。「家を追い出したら誰も見張る人がいなくなってかえって危険かと思って。結局、また防げませんでしたが……。これほどの悪人でも、自分の産んだ子ですから、憎いけれども見捨てられない。それでも、これからどうしたらいいのか……」と泣きながら途方に暮れる。■失うものがないから、ブレーキがかからない容疑者が更生する可能性はあるのか。新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(犯罪心理学)に話を聞いた。「これほど何度も犯行を重ねているとなると、もはや刑罰に犯罪抑止効果は期待できません。失うものがないから、ブレーキがかからない」では、どうすればいいのか。「社会的制裁を加えたり、“犯罪は駄目”と言葉で伝えたりしても、無意味なんです。被害者を思うとやりきれない気持ちもありますが、あくまで再犯を防ぐという意味では、本人を孤立させず、失いたくないと思えるような新しい生活を手に入れてもらうことが必要でしょう」国には更生に向けたプログラムも存在する。しかし実際に受けることが命じられるのは一部の重大犯罪者のみ。ほかは更生もなく出所できてしまうので、後から自費で受講しない限り、更生する機会はない。現在の日本では「犯罪者の人権」を理由に性犯罪が非常に軽い罪となっている。多くの性犯罪者は数年以内の短い刑期で出所して(もしくは示談などで不起訴となって)野に放たれるため、再犯に至るケースが多発している。犯罪者が法によって守られ、被害者の女性が自衛意識を高めることを強いられるのが、今の日本の現状だ。
2021年08月31日日本で深刻な社会問題の1つとされている、痴漢行為。他者の身体に合意なく触れ、尊厳を傷付ける痴漢行為は迷惑防止条例違反で罰せられます。2020年12月に公表された警視庁のデータによると、検挙されたものだけでも1年で1780件を超えるのだとか。また、被害の6割は電車や駅構内で起こっているそうです。一般的に痴漢被害は抵抗しなさそうな人が狙われやすいため、泣き寝入りを余儀なくされた人も多く存在することが推測できます。障がい者を狙った卑劣な痴漢行為の事例に、怒りの声自分よりも力が弱く、抵抗しなさそうな弱者を狙う痴漢行為は、卑劣な犯罪。2021年8月25日、障がい者を取り巻く問題に取り組む非営利団体『DPI 日本会議』が、障がい者をターゲットとした痴漢行為についてウェブサイトに掲載。障がい者が電車を利用する際、一部の鉄道では「〇〇号車に乗車、××駅で降車します」といった駅アナウンスを行うことがあります。このアナウンスは、駅員同士が情報を共有するためのもの。乗降時に駅員が補佐を行うため、必要なのでしょう。しかし、信じられないことに一部の人はこのアナウンスで障がい者の居場所や降車駅を把握し、痴漢行為をはたらいているというのです。ウェブサイトで掲載された実際の事例は、どれもあまりの卑劣さに目を疑うようなものばかりでした。視覚障害者車両ドアのところの外側を向いて立っていたら、後方から「いたいた!手伝ってあげるよ」と言いながら後方に回り、ぴったり迫りもぞもぞされ、荒い息をされた。離れようとしたが、ぴったりくっつかれて動けない。次の駅でドアが開いたときに、とりあえず車両からでた。希望駅ではなかったので歩行に慣れていなくすごく困ったが降りるしかなかった。その場にいて次に来た電車に乗るしかなかった。DPI 日本会議ーより引用車いす使用者東京に出てきて初めての終電。ほとんどの乗客が酒臭かったのでアナウンスしないでくださいと頼んだのに、それでは乗せられないと断れたので仕方なく乗りたくない一番後ろに乗せられた。べろんべろんに酔った男性が飛び乗ってきて、「居た!手伝ってあげようと思って走ってきたよ。○○駅でしょ?」と言いながら可哀そうにと繰り返し足をさすられた。「やめてください」といっても離れてくれず、私も逃げられず、大きな声をだしても周囲の人は聞こえないふりしているように感じた。とても辛く忘れたくても忘れられず今でも夢を見る。この話に触れるのはこれが最後にして前に進みたい。DPI 日本会議ーより引用車いす使用者自宅に見知らぬ男がよくいるけど知っているか?と近所の人に聞かれて確認したら、電車内で時折見かける男性で、後を付けられていると知った。その後、何度も自宅周辺にいるので警察に相談し被害届けを提出した。夜中に窓ガラスに大きな石を部屋に投げ込まれた。警察に通報したら警察に相談した嫌がらせではないかと言われた。警察や近所の人が助けてくれ捕まった。今でも遅くの帰宅にならよう気を使い生活している。DPI 日本会議ーより引用ウェブサイトに掲載されているものだけでも被害事例は13件あり、中には「上記より酷い被害のため、記載しないことを希望」というものも。相手が障害を持ち、抵抗するのが難しい状況と知った上で、加害者は痴漢行為をはたらいているのでしょう。被害に遭った人たちは、「アナウンスによって居場所や目的地を知られ、ターゲットにされてしまう」と恐怖を感じているといいます。電車での乗降時のアナウンスは、本来支援のためのもの。善意を利用し、卑劣な行為をする人たちに怒りを感じずにはいられません。これらの事例はネット上で拡散され、多くの人から怒りの声が上がっています。・発想がゲスすぎて、めまいがした。加害者に人の心はないのか?・あのアナウンスを、犯罪で利用する人がいるなんて思いもしなかった。信じられない。・言葉にならないくらい卑劣。今まで気付くことができなかったのを悔やみます。先述したように、駅でのアナウンスは乗務員に安全確認を伝達するためのもの。しかし、善意を利用し悪行をはたらこうとする人がいるのも事実です。被害に遭う人を1人でも減らすため、社会全体が関心を持ち、考えていかなくてはなりません。[文・構成/grape編集部]
2021年08月27日写真左から、主犯格といわれている井戸侃也容疑者(本人フェイスブックより)、温厚な性格だったという明神功武容疑者(出身校のHPより)「叫んだら殺すぞ」そう言って女性を脅し、わいせつ行為に及ぼうとした2人組が捕まった──。警視庁は8月10日、住所不定の井戸侃也(なおや)容疑者(27)と大阪府に住む明神功武(いさむ)容疑者(23)を逮捕した(いずれも職業不詳)。逮捕容疑は、今年4月に東京・文京区の女性用シェアハウスに侵入し、30代の女性を押し倒してわいせつな行為をしようとしたというもの。「大阪から東京に訪れていた2人は、帰宅途中の女性を見つけると家まで後をつけた。そして女性が玄関を開けた瞬間、肩をつかんで中に押し入った」(全国紙社会部記者)その際に容疑者らは「叫んだら殺す」と脅したが、女性が大声を出したため逃走。「犯行後に新幹線で大阪へ戻ったが、周辺の防犯カメラには2人が女性の後をつける様子が映っていて、逮捕に至った」(同・全国紙記者)警察の調べに対し明神容疑者は容疑を認めているが、井戸容疑者は否認している。何の目的で2人が大阪から上京していたのかは不明だが、コロナ禍で、県をまたぐ移動の自粛が求められていたときの出来事だ。安全なはずの女性用シェアハウスでの犯行に、住人の恐怖は計り知れない……。■卑怯者で周囲に嫌われていた井戸容疑者今回の犯行で主犯格とされているのは井戸容疑者だ。和歌山県の出身だが、地元での評判はというと、「何かあるとすぐに逃げ隠れする卑怯者で、周囲に嫌われていましたね」(知人のAさん)高校は県内にある定時制に通った。当時から素行に問題があったようで、「原付バイクを貸したことがあるのですが、そのまま彼に盗まれて、最終的には潰された状態で返ってきた。本人に電話をしましたが、番号を変えられてしまい、連絡が取れなくなりました」(同・知人)また2015年には、過去に働いていたという和歌山市内の派遣会社に侵入して現金14万円を盗み、逮捕された前科もある。若くして悪事に手を染めていた井戸容疑者。一方で共犯の明神容疑者は犯罪とは無縁の人生を送っていた。中学時代の同級生によると、「明神君は吹奏楽部に所属していました。打楽器やトランペットなど頑張って練習していましたね。長身で温厚な性格で、同期で男子部員は1人だけでしたが、必死に周りに食らいついていました」絵心もあったようで、幼少期から美術の道を志し、デザインコンテストで入賞を果たしたことも。高校卒業後はデザイン系の専門学校に通った。一見すると接点の見つからない2人だが、ある捜査関係筋の情報によると、「実は主犯格の井戸容疑者が、明神容疑者を脅し、犯行を強いていた可能性が浮上しているんです。明神容疑者は何らかの事情で抵抗できなかったのでは」真相究明に向けて捜査は続いているが、それが事実なら事件の様相が大きく変化する。■未成年の女性に酒を飲ませレイプを行っていた“黒幕”とされる井戸容疑者をさらに調べると、おぞましい過去まで明らかに……。「彼は10代のころから後輩や女友達、出会い系サイトで出会った女性に酒を飲ませて酔わせ、レイプを行っていたんです。被害者はみんな未成年です」(知人のBさん)しかし証拠不十分だったのか、逮捕はされなかった。「知っているだけでも、レイプした回数は10数回。本人は犯行を否定して、共通の友人の間ではかなりもめました。それで和歌山にいられなくなり、20歳くらいのときに大阪に引っ越した」(同・知人)その後も井戸容疑者は定職に就かず、悪行を重ねる。「井戸容疑者は2020年にも、SNSで知り合った府内の女子中学生をわいせつ目的で誘拐して、逮捕されているんです。しかしこのときも服役を免れていたようです」(前出・全国紙記者)今回の犯行は未遂で終わっているため、早々に出所してしまう可能性が高い。再犯が危ぶまれる──。
2021年08月24日送検される今泉被告「被害者の肉体的、精神的な苦痛は将来にまでおよぶもので深刻さは想像に絶する。被告人を懲役41年の刑に処す」7月29日、福岡地裁で溝国禎久(みぞくによしひさ)裁判長がそう読み上げると傍聴席からは感嘆の声が漏れたという。’18年から’19年の1年半の間に女性7人に乱暴したなどして、福岡市南区の無職・今泉成博被告(44)が強盗・強制性交や強制わいせつ致傷など13件の罪に問われた。この裁判が注目されていたのには理由がある。「本来、有期刑の上限は懲役30年なのですが、13件の罪を懲役15年と懲役25年をわけて求刑したんです。’18年7月〜19年10月の5件について懲役15年、’19年10月〜12月の8件は25年の合計で性犯罪の裁判では異例の40年という求刑となり、判決の行方が注目されていました。刑事裁判では大概が求刑を下回る判決となるのですが、求刑を上回り1年プラスされるとは思いませんでした。裁判長は懲役16年と懲役25年をそれぞれ足して41年の懲役としたんです」(司法記者)■連続した性犯罪の“無罪判決”なぜ今泉被告は異例の求刑を受けたのか。その理由は聞くのもおぞましいほど卑劣な犯行の手口だった。「起訴状によると、出会い系サイトで知り合った7人の女性をそれぞれ脅し、性的暴行を加えた上に金品を奪った。ある被害者は逃げられないように山中に連れ出された上に、熱した金属棒を膣に押し当てられ重症な火傷を負っています。またある被害者はクレジットカードで、コンビニエンスストアのATMから71万円を引き出させられ、それを奪った上に、性的暴行を加えられました。全員への手口として共通しているのが暴力団との関係性を強調したり、脅迫のために裸の姿を撮影し、逃げられないようにしたうえで女性を支配するなど悪質極まりない。被害者の人数も多く、だまし取ったお金は約570万円にのぼるといいます。ここまでの罪を犯しておきながら“同意の上だった”と無罪を主張しているところも反省をしていないとみなされたのでしょう」(同)性犯罪の裁判において今泉被告の判決とは真逆の量刑が軽いケースが続き、厳罰化を求める世論が高まっていた。’19年、性犯罪の裁判で無罪判決が4件続いたのだ。「1件目はサークルの飲み会に参加した女性がテキーラを一気飲みさせられ泥酔したところを男性(44)が性行為に及んだ事件。裁判所は女性が抵抗不能だったことはを認めたにも関わらず、男性がそのことを認識してなかった、とし無罪となりました(‘19年3月福岡地裁)。2件目は、メキシコ国籍の男性(45)が女性に乱暴し、けがを負わせたのに“故意ではなかった”として無罪判決となった事件(‘19年3月静岡地裁)。残る2件は家庭内において長年にわたる性的虐待が行われた事件でいずれも無罪判決でした(一方はのちに10万円の罰金刑に)」(同)■ジェンダーに対する裁判官の無知わずか1か月の間に4件も無罪判決がでたことは、女性たちに大きな衝撃を与えた。これらの不条理と思える判決をきっかけに“性暴力を許さない”をスローガンに掲げたフラワーデモが各地で開催された。主催者のひとりである作家の北原みのりさんは今泉被告の判決をどう見たのか。「素直に嬉しいです。やっとまともな視点を持った裁判官が現れたのだと。今年の3月にも無罪が確定した裁判がありました。11年前に、当時17歳の女性に性的暴行をしたとして強姦罪に問われた男に対して、横浜地裁は“苦痛は筆舌に尽くしがたいことは明らか”と指摘しながらも、“性交があったとは断定できない”としたんです。ほとんどの被害女性は被害の8割も話せていないといいます。思い出すのも恐ろしいし、話したくないし話せないという状況にある。一方で加害者は雄弁に無罪を主張する。裁判官のジェンダーに対するあまりの無知に、恐れを感じていました」といい、今回の判決の歴史的意義を込めて評価する。続けて、「今回の量刑は極めて適正だと思っています。むしろ今までの判決がおかしかった。被害にあった女性がその後の人生がどれほど苦痛に満ちたものになるのか。人生を中断させられるんですよ。重くて当然です」実は過去にも30年を上回る判決が下された性犯罪事件がある。「9人の女性を暴行し懲役50年の実刑判決となった静岡地裁沼津支部のケース(’11年)、15人の女性に暴行し懲役47年の実刑判決となった大阪地裁のケース(’13年)があり、加害男性がすぐに出所しないということは、いずれのケースでも被害女性たちに大きな安心を与えました」(司法記者)前出の北原さんは、女性たちが“おかしい”と表明できる場所として毎月11日、フラワーデモを開催している。「日本の司法はまだまだ男社会で男目線です。女性たちには声をあげれば同じ仲間がいることを知ってほしい。今後も被害者の視点に立った判決が下されることを望みます」
2021年07月30日お笑いコンビ・チョコレートプラネット(長田庄平、松尾駿)が1日、東京・千代田区の法務省で催された「第71回社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~キックオフイベント『コント芸人が法務省とコント作りに挑む!』」に出席。犯罪更生の仕組みを知り、松尾は「僕が何か犯罪してもすぐ更生できる」などと語った。同運動は、法務省と吉本が、犯罪や非行のない社会を築くための運動の広報啓発活動として行う取り組み。チョコレートプラネット、ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)、シソンヌ(じろう、長谷川忍)、3時のヒロイン(ゆめっち、福田麻貴、かなで)の4組は、「更生保護ボランティア」を題材としたコント動画を、1日より各種YouTubeチャンネルで順次公開する。チョコレートプラネットの2人は、犯罪再犯を防止する「協力雇用主」、左官業の三上工業に取材を敢行。長田は「犯罪を犯してしまっても、もう一度世の中に復帰できる、すばらしい世の中になればいいなとコントを通じて伝えたい」と真面目にコメント。「もし相方が犯罪を犯してしまっても、そういうのがあるのは助かる」と述べた。松尾も同調し、「僕が犯罪を犯しても三上工業さんがある。三上工業さん、実は僕の実家の近く。だから僕が何か犯罪してもすぐ更生できる」と安堵。「(協力雇用主という)そういう方がいると分かった。僕は安心して間違いを犯せる」と言い、笑いを誘った。ジャルジャルは、犯罪や非行に走った人を更生する民間ボランティア「保護司(ほごし)」を取材。保護司をテーマにコントを考えることに。後藤は同テーマについて「難しいと言えば難しい。でも難しいほうが逆に、面白いコントは生まれやすいのでは」と語るも、福徳は「本当は、一回撮ったんです。お笑いに走りすぎてボツになった。『笑かすことばっかり考えてるじゃん!』となった」と暴露。後藤も「『こんな動画出せない』となった」と心境を明かした。
2021年07月01日誰かが生きづらい世界ではいつかきっと、自分もつまずいてしまうだろう。そのことに気がつき、動き始めている3人の姿。今回は、GoodMorning 代表取締役・酒向萌実さんにお話を聞きました。アパレル業界から転職し、社会問題の解決を仕事に。「政治に参加したり、社会のシステムを変えるためにできることは、〝投票〞以外にもあるんです」そう語るのは、クラウドファンディングサービス〈GoodMorning〉の代表取締役・酒向萌実さんだ。「誰の痛みも無視されない社会に」をビジョンに掲げるこのサービス上のプロジェクトを「女性」というキーワードで検索すると、女性アスリートによるフェムテック開発や、性犯罪についての刑法改正を目指す団体の支援、妊婦のためのオンライン助産師・栄養士相談サービスの実現などのプロジェクトが並ぶ。酒向さんは〈GoodMorning〉がまだ〈CAMPFIRE〉のサブブランドだった頃に社会問題の解決に興味を持って入社。分社化するにあたって代表就任を提案された。25歳だった。「会社の社長って何をするの?と思って調べても女性の事例はあまりなかったし、身の回りにも少なかった。これで自分がヘマをしたら、“女性だから”“若いから”と思われてしまうかもしれないと、前例があまりないなかで自分がその役割を担うことの重責を感じてしまって……。だから迷ったのですが、事業責任者として、誰よりもこのプロジェクトのことを考えてきたという自負があったので引き受けました」全ての人が緩急をつけて活躍できる社会を目指す。当時は取材を受けるたびに「若手女性社長」と形容されることでプレッシャーが増していったそうだ。「確かにそうなんですが(笑)、それだけ珍しいことなんだと再認識しました」と酒向さんは振り返る。「ジェンダーギャップ解消のためにはまずは管理職割合など人数の均衡に取り組み、事例を増やす必要があると思います。そもそも女性がやると想定されていない仕組みのなかで、自ら『やりたいです』と手を挙げること自体、簡単ではありません。例えば、私はすごく生理痛が重いのですが、毎週の会議に、生理の週は体調が万全でない状態で参加しなければならないことも多いです。周りがほとんど男性だと『自分だけ4回に1回こんなに苦しい思いをしなきゃいけないのは辛い』と思ってしまって……」その状況に限界を感じて、まずは自分の身近なチームメンバーに伝え、サイクルに合わせてスケジュールを調整するようにした。「急に休んで迷惑をかける方が嫌だったので、カレンダーに記入してその日のスケジュールを緩くしました。チームには男性もいますが、今は私が生理2日目の朝が一番辛いことを理解してくれているメンバーもいます。女性メンバーも、オープンに自分のサイクルについて話ができるムードになってきているのを感じます。コンスタントに仕事のパフォーマンスを出し続けるのがプロだという人もいるけれど、無理なものは無理。毎月ある波をないことにはできません」体調や気持ち、ライフイベントに伴う波は、女性だけでなく男性にもあるもの。「アクセルを全踏みし続けなければならない社会では、女性の“いつ子供を産めばいいのか分からない”、男性の“育休が取れない”という多くの人が今抱えている葛藤を解決できません。女性も男性も、人生の中で緩急をつけて働く働き方が当たり前の社会になれば、家庭内の家事分担や男性の育休取得率だって改善していくんじゃないかと思います」【Biography】・2012ー国際基督教大学(ICU)に入学する。・2016ーアパレル企業に入社。販売職として勤務する。・2017ー〈CAMPFIRE〉に参画。〈GoodMorning〉立ち上げに携わる。・2018ー〈GoodMorning〉の事業責任者に就任する。・2019ー 〈GoodMorning〉が分社化し、代表に就任。Profile…酒向萌実(さこう・もみ)ソーシャルグッドに特化したクラウドファンディングサービス〈GoodMorning〉を運営する。(Hanako1197号掲載/photo : MEGUMI, text : Mariko Uramoto edit : Rio Hirai(FIUME Inc.))
2021年06月15日「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」こう発言したのは、立憲民主党の本多平直衆議院議員(56)。5月10日に同党法務部会のワーキングチームが、刑法の性犯罪規定を見直す議論を行なった際に述べた言葉だ。この出来事を最初に報じたのが6月4日の産経新聞。3日後の7日に冒頭の発言主が本多氏だと判明した。各紙によると、外部講師が、性行為への同意を判断できるとみなす年齢を「現行の13歳以上から中学卒業後の16歳に引き上げるべき」と主張。すると本多氏が冒頭のように反論し、「成人と中学生が恋愛関係になるのはあり得る。罰するのは望ましくない」とも述べたという。この発言が物議を醸し、本多氏は7日夜に謝罪コメントを発表。「刑事処罰の議論では、限界事例についての検討や、特異な例外事例の存在など緻密な検討が必要だと考えました」と釈明し、そのうえで「私の発言は、例外事例としても不適切であり、おわびして撤回いたします。誠に申し訳ありませんでした」と陳謝した。■枝野氏、蓮舫氏らはダンマリ……そんななか本多氏の処分についても、波紋が広がっている。各紙によると、ワーキングチームの座長・寺田学衆議院議員(44)は7日、記者団に向けて「発言したとみられる議員本人から『そのようなことを言ったという正確な記憶はない。ただ、もし発言していたとしたら、伝えたかった真意ではなく、撤回したい』と説明があった」とコメント。撤回の申し出を理由に、冒頭の本多氏の問題発言は記録から削除したという。また同党の福山哲郎幹事長(59)は7日午後、記者団に向けて「議論の中での話であり、本人が『その言葉については言い過ぎで撤回する』と言っているので、それで良いのではないか」と“擁護”し、氏名を公表しない意向を示していた。問題発言をした張本人が本多氏だということが公になると、福山氏は本多氏に「口頭で厳重注意した」と発表するにとどまるのみだった。「本多氏が自ら名乗り出るまで、寺田氏も『誰が話をしたかは福山幹事長含め、判断をいただくことだと思う』と記者からの質問をはぐらかしていました。また同党代表の枝野幸男氏(57)や蓮舫氏(53)、辻元清美氏(61)もこの件について触れていません。なかでも蓮舫氏といえば、菅義偉首相(72)や与党議員の発言についてTwitterで舌鋒鋭く批判することで知られています。例えば19年5月に自民党の桜田義孝議員(71)が『子どもを最低3人くらい産むように』と発言した際も、《論外》や《だめだ。朝から嫌な気持ちがおさまらない》などと連投ツイートするほどでした。今回の“ダンマリ”は、身内贔屓のようにも受け取られかねません」(全国紙記者)問題発言をした議員名を非公表にしようとし、口頭での厳重注意だけで済ませるなど、幹部の“大甘処分”に疑問の声が上がっている。《立憲民主党は身内に甘すぎないか?》《身内の議員の失言だと厳重注意で済む程度の甘さなんですか、政府与党が失言する時は平気で議員やめろコールなのに》《他党に厳しい蓮舫さん、今回のは自党でも厳しく追及された方がいいかと。発言取り消すで終わる問題ではないですのね?あなたがいつも言っていたセリフを思い出してください》
2021年06月08日キャリー・マリガンとゾーイ・カザンが、『She Said』(原題)に出演するための最終交渉に入っている。「Variet」誌が報じた。2人は「ニューヨーク・タイムズ」紙の記者でハーヴェイ・ワインスタインの数十年にもわたる性犯罪を暴いたミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターを演じるという。本作はミーガンとジョディが共著した「She Said:Breaking the Sexual Harassment Story that Ignite a Movement」(原題)をもとに描かれる。監督はNetflixドラマ「アンオーソドックス」でエミー賞の監督賞(リミテッドシリーズ)を受賞したマリア・シュレイダー、脚本は2015年にアカデミー賞外国語映画賞を受賞した『イーダ』のレベッカ・レンキェヴィチ。製作総指揮は『ハスラーズ』のミーガン・エリンソンと「Pam & Tommy」(原題)のスー・ネーグル、製作会社「プランB」よりブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナーがプロデューサーを務める。製作はこの夏から始まる。2017年、ミーガンとジョディがワインスタインの悪事を暴露したことをきっかけに、多数の被害者女性たちが声を上げた。「Me Too運動」の始まりである。アシュレイ・ジャッド、ローズ・マッゴーワン、ミラ・ソルヴィーノ、グウィネス・パルトロウらハリウッド女優たちも被害を明かした。2020年3月、ワインスタインはレイプと性的暴行の罪で、ニューヨーク裁判所から禁錮23年の刑を言い渡された。(Hiromi Kaku)
2021年06月08日地元の草野球チームでプレーする八木下海斗容疑者「私にとってはかわいい孫。“祖母バカ”と言われるでしょうが、愛嬌があって、近所の人にもきちんと挨拶できるいい子なのよ。世間さまに顔向けできないような、こんなことをなぜしてしまったのか……申し訳ないです」横浜市に住む八木下海斗容疑者(23)の80代になる祖母は、途方に暮れてうなだれていた。■児相職員の立場を悪用して少女に接近5月26日、神奈川県警は横浜市中央児童相談所の職員2人の逮捕を発表した。冒頭の八木下容疑者は中学3年生のA子さん(14)と今年4月15日、横浜市内のホテルで性交したという児童福祉法違反の疑いでの逮捕だった。もう1人の逮捕者は、同県茅ケ崎市に住む大野正人容疑者(27)。昨年10月30日、高校2年生のB子さん(16)と横浜市内のホテルでわいせつな行為をしたという県青少年保護育成条例違反の疑いだった。A子さんもB子さんも、かつて同児相に一時保護されていて、すでに退所。子どもたちと職員が連絡をとることは禁止されているが、容疑者たちはSNSなどを通じて彼女たちと接触したのだ。被害者たちは、彼らと会った理由について“相談に乗ってほしかった”だけで、“性的な関係になることは望んでいなかった”と話している。児相職員という立場を悪用して、少女たちに近づいて性的行為に及ぶという悪質極まりない犯行といえるだろう。同児相は、週刊女性の取材に対して、「2人が同時に逮捕されたのは、まったくの偶然です。八木下容疑者は勤務2年目で、これまで特に問題を起こしたことはありませんでした。非常に明るくて、子どもさんには慕われる職員。大野容疑者は4年目で、やはり特に問題はなかった。きちんと子どもさんに向き合うことができる、まじめな職員だったのですが……。指導が甘かったと指摘されてもしかたがありません」と反省の弁を述べた。横浜市のこども青少年局にも話を聞くと、「本来であれば子どもを守るべき立場にある職員が逮捕されたという事実を重く受け止め、速やかに事実関係を確認のうえ、厳正に対処していきます」■少女の弱みにつけ込む卑劣行為児相職員による子どもへの性犯罪が後を絶たない──。’19年10月には、仙台市の児相職員が未就学の少女2人に下半身を触らせるなどしたとして懲役3年の実刑判決となっている。福岡市の児相職員も14歳の少女にわいせつな行為をしたとして逮捕され、’20年6月に懲役2年、執行猶予4年の有罪判決に。児童心理司として長年、児相に勤務していた心理カウンセラーの山脇由貴子さんは、次のように厳しく指弾する。「児相に来る子は親から虐待を受けていたり、家庭に問題があって家出してきたりとメンタルが弱っている。だから、誰かに優しく接してもらいたいという願望が強いんです。そこにつけ込んだ、悪辣な行為といえます。容疑者は出来心かもしれませんが、子どもへの下心を持っていて、性的な目的のために児相という職に就いている人間は一定数いると思います」だが“個人の資質だけではなく、組織の問題でもある”と、山脇さんは続ける。「このような人間を採用時にふるい落とすような仕組みが、できていないんです。それは厚労省も十分に認識していると思うので、あとは真剣に、本気で向き合うべき」今回、事件を起こした容疑者たちは、いったいどんな人物なのか──。週刊女性は、14歳の少女を毒牙にかけた八木下海斗容疑者の取材を進めた。■容疑者は“やんちゃ”“遊び人”の印象彼の実家は横浜市の大地主。1300平米を超える敷地内に豪邸が立っている。「祖母、母、クラシックギターを教えている姉との4人暮らし。中華料理店を経営していた父親は、2年前に50代の若さで突然亡くなっています」(近所の住民)中学校の同級生は、容疑者のことを次のように振り返る。「部活はバスケ部に入っていたけど、からきしヘタで(笑)。でも、性格は明るくて“イジられキャラ”って感じ。面白いやつでしたよ」高校は地元の県立高校に進学して、野球部に入部。その後、私立大学に進んで幼児教育を専攻していたが、「あいつは勉強ができなかった。でも、親が金持ちで“何でもいいから入っとけ”と、大学にすべり込んだみたいですよ」(高校の同級生)そのころから、周囲の容疑者の印象が“やんちゃ”“遊び人”へと変わっていく。児相関係者によると、普段は“子どもに慕われる職員”である容疑者も、機嫌が悪いと児童を叱るなど身勝手な態度をとっていた一面も。■「両親が甘やかしてしまったのかも」さらに近所の住民によると、「大学で遊び方を覚えちゃったんですかね。社会人になってからは大型バイクで通勤していましたよ。数人のバイク仲間がいて、集まるとブンブンうるさいのよ。バイクのほかにも、4WDの車も持っていた。まぁ、跡継ぎのボンボンだからね」同児相によれば、八木下容疑者の給料は月21万円程度。大型バイクや4WD車は、彼の収入では到底買えるシロモノではない。何不自由ない人生が、道を踏みはずすきっかけになったのか──。自宅の庭で草取りをしていた容疑者の祖母に話を聞くと、冒頭のような無念を告白した。さらに、「私は40年前に夫を亡くして、女手ひとつで子どもたちを育ててきた。2年前にその子ども(容疑者の父親)を失い、それで今回は、孫の海斗(容疑者)も警察沙汰になって……さんざんな人生ですよ。いったい何が悪かったのか」容疑者は、夜勤の仕事も、文句ひとつ言わずにこなすまじめな性格ではあったが、「最近はやんちゃな子になっていたかもしれない。私は秋田生まれで厳しく育てられたので、子どもが悪いことをすればパシッと叩いていた。でも、海斗の両親は優しかったからねぇ……。甘やかしてしまったのかもしれんね」容疑者の面会には、母親しか行っていないというが、「今度、私が面会に行こうと思っています。職場はクビになるのは当然だし、子ども相手の仕事に就くのはもう無理でしょうけど、立ち直らせたい。そのためにも、被害者にはきちんと償いをして、更生させます。私が生きているうちに、なんとか……」欲望にまかせたひとり善がりの犯行。犯した罪は、あまりにも重い──。
2021年06月08日『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でアバナシー役を演じたケヴィン・ガスリー(33)が、性的暴行で禁錮3年の実刑判決を受けた。「BBCニュース」などが報じた。事件は2017年、ケヴィンの俳優仲間スコット・リードの自宅で起きた。ケヴィンとスコットは、もともとバーで被害者女性と会う予定だった。しかし、女性がバーへ向かうタクシーの中で体調を崩したため、タクシーの運転手が「そちらまで女性を送り届けます」とスコットに電話。ケヴィンとスコットは到着した女性を部屋のベッドに寝かせ、スコットは2人を部屋に残して救急コールサービスに電話をかけにいったという。そのすきに、ケヴィンは女性に性的暴行を働いた。ケヴィンは「介抱していただけ」と罪を否定したが、女性の下着に付着していたケヴィンのDNAが決定的な証拠となり、「有罪」に。性犯罪者リストにも登録され、禁錮3年の刑が言い渡された。「Deadline」によると、ケヴィンは「IMDb」上で『ファンタスティック・ビースト』第3弾のキャストに名を連ねていたというが、現在彼の名前は見当たらない。ワーナー・ブラザースは「彼が第3弾に出演する予定は最初からなかった」と出演自体を否定しているという。(Hiromi Kaku)■関連作品:ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 2018年11月23日より全国にて公開©2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R.
2021年05月17日子供が成長していくと、学校だけでなく塾やおけいこへの行き帰り、友達との待ち合わせ時など子供が一人になる時間が増えていきます。犯罪に巻き込まれないために、子供にはどのように防犯を教えれば良いのでしょうか。今回は、子供への防犯の教え方についてご紹介します。子供への防犯の教え方は?子供を狙った痴漢、公然わいせつ、つきまとい、盗撮、また登下校中の誘拐、わいせつ目的の誘拐などの犯罪があとを断ちません。学校の登下校時だけでなく習い事や友達との約束など、子供の行動範囲が広がる前に、以下を参考に防犯について子供にしっかり教えましょう。子供への防犯の教え方は「いかのおすし」知らない人にはついて「いか」ない声をかけられても車に「の」らない知らない人に連れて行かれそうになったら「お」お声を出す声をかけられたり、追いかけられたりしたら「す」ぐ逃げる怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる子供の防犯の5つのお約束を、親子で一緒に確認しましょう。それでは、子供の防犯の教え方について細かく確認しましょう。どんな人に気をつけるのか?不審者から身を守るよう子供に伝える時、「変な人に気をつけてね!」と言っても子供にはその「変な人」がどのような人なのかわかりません。また「知らない人」と言うのも危険です。子供を狙うのは、知らない人だけとは限らないからです。そこで、子供に防犯を教える際は具体例を示しながら教えます。自分についてくる人じろじろ見てくる人体や持ち物を触ろうとする人こんな人がいたら逃げようね、と子供に防犯対策を教えましょう。また、道路、屋外での被害が多く発生していることも教えておきましょう。どんなことが危ないのか?車に乗せられそうになる追いかけられるつきまとわれる待ち伏せされるなどは危険なことです。子供に「こんなことはとても危ないことだよ」としっかり具体例を示しながら、防犯について教えましょう。子供が一人、あるいは子供だけでいるときは犯罪に巻き込まれやすくなります。いちばん犯罪発生が多い時間帯は、習い事に行く、友達と遊びに出かけるなど子供が一人になることがが多い午後4時前後です。防犯対策のために、子供が一人にならないためにはどうすれば良いか、子供がどの道を通ればいいのかなども確認しながら教えましょう。自分の守り方は?腕を掴まれて連れて行かれそうになってしまったら、大きな声で「助けて」と言う。しかし、このことがわかっていたとしても、大人でもいざ自分が緊急の事態になると声が出ないものです。そんな時のために「いやだ」「やめて」という自分の意思も大きな声で言えるように練習を重ねておくことも大切です。また、どうしても怖くて声を出せない時のために、子供に防犯ブザーの使い方を教えましょう。子供が防犯ブザーを使ったことがない場合は、防犯ブザーの引っ張り方を教え、鳴らす練習もしておきましょう。逃げる場所は?逃げる際は、交番、コンビニ、スーパー、こども110番の家など、助けてくれる大人のところへすぐに行くよう伝えます。すぐに声を出すことが難しい子供もいます。危険なことに遭遇した時のために、最初は小さな声しか出なくても励ましながら練習を繰り返し、無意識にできるようにしておきましょう。子供が自分で身を守れるように教えていこう子供を犯罪から守るには、子供自身が自分で身を守れるようにしておくことが非常に大切です。「いかのおすし」を繰り返し確認し、犯罪に巻き込まれる前に察知できる防犯力を教えることで、親が離れていても子供が自分で自分を守れるよう教え育てていきましょう。
2021年05月06日