新田恵利 吉本ばなな『キッチン』が忘れさせてくれた現実
「いろんなことに敏感になっていた時期に読んだ本です。家族を失って孤独な女子大生が、風変わりな親子との共同生活のなかで変化する細かい心情描写に、泣いたり笑ったりしました」
『キッチン』の世界観は、現実を忘れさせてくれたという。
「今はもうジェンダーは関係ない時代ですけど、当時はまだまだお父さん像・お母さん像っていうのがステレオタイプでありましたから、“元男性の母親”が登場する設定が、とても新鮮でした」
同時期に話題になった『サラダ記念日』も思い出に残る一冊だ。
「小学校のころから詩を書くのがすごく好きだったし、’90年から3年間ほど芸能活動をやめたときも、作詞家になりたいと思っていたくらい。国語の授業で感じた“俳句とか短歌って難しい”というイメージを、いい意味で壊してくれた本でした。短歌をすごく身近に感じたことを思い出し、一昨年あたりからインスタで自作の短歌を発表しているんです。だから『サラダ記念日』の影響はかなり受けていて、“うふふ”とか“むふふ”という言葉を入れながら、気持ちをシンプルな形にして表現しています」
いまでも活字は好きで、自身の経験をもとに、介護をテーマにした本も執筆中だという。