ネットヘイト訴訟に勝訴した18歳「今も母は防刃ベストを着て」
ショックもありましたが、怒りがこみ上げてきました」
ブログの主は大分市の68歳男性だった。男性は一度も裁判に出席せず、横浜地方裁判所川崎支部は男性に91万円の支払いを命じる判決を下した。だが、あえて寧生さんは控訴した。
「すべて弁護士に任せて、裁判に出てこないのは、まったく反省がないのだと思ったからです」
結局、ブログの主は裁判に現れることはなかったが、5月12日に東京高裁が下した判決で賠償金は130万円に増額された。この種の裁判では異例の賠償額だ。
人種差別は人格権侵害で、それ自体が独立して違法なものと判断できる画期的な判決だった。判決が下ったとき、寧生さんは大学1年生になっていた。
■生活圏に踏み込んできたヘイトデモ
母の江以子さんはこう語る。
「私たちが住む川崎市の桜本地域は、昔から地域の人たちと多文化共生の街づくりをしてきたという歴史があります。私も、差別をなくしともに生きる社会づくりを目指す『ふれあい館』の職員として、そうした環境づくりのために努力してきました」
だが、2015年にこの環境が危機に陥る。桜本地域にヘイトスピーチデモがやってきたのだ。川崎駅でデモに遭遇したとき、逃げるようにその場を立ち去ったことがあったという江以子さん。