くらし情報『林家きく姫『パタリロ!』に魅了された80年代振り返る』

林家きく姫『パタリロ!』に魅了された80年代振り返る

“本当のことを言うとショックを受ける”と父や親戚が配慮したため、私は当時、病状を聞かされていなかったのですが、知っていれば、もっと母のそばにいることもできたって思うと……」

母の死後、夜に父親が帰宅するまでの時間を、近所のいとこの家で過ごすようになった。

「10歳以上も年上のいとこは漫画好きで、本棚にはたくさんの単行本がありました。それを学校から帰って夜まで、ずっと読むんですね。パラフィン紙に包まれてきれいに保存されていたから、汚さないように、指先に気をつけながら丁寧に読んでいました。母がいない寂しさを忘れるため、孤独を癒してもらうために、漫画を読んでいた部分はあります」

夢中になった作品は、数知れない。

「美内すずえ先生のホラー作品『妖鬼妃伝』(’81年)は、終電後に走る謎の地下鉄に乗ってたどり着いた異世界にまつわる話。現実に地下鉄に乗ったとき、路線の奥に続く暗闇を見て、“どこかに迷い込んでしまうんじゃないか”と怖くなったりしました。庄司陽子先生、里中満智子先生、池田理代子先生の作品もよく読みました。
漫画家の先生のことを、小学生当時から“先生”と呼んで尊敬していました」

同時期の漫画の中では、いとこの本棚にあった『パタリロ!』も忘れられない作品だったという。

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