2021年8月2日 11:00
ヒマラヤへ通う美容師 リウマチの激痛を乗り越え見えたもの
そこで募っていったのが「厳しい冬、ドルポの人々がどんな暮らしをしているのか知りたい」という思いだった。
こうして、19年11月11日、大阪を発った稲葉さん。出発から12日目には5千165メートル、凍結したバ・ガラ峠を越えるなど、ひたすら歩いてドルポを目指した。
「ドルポの村までは麓から8日間、歩かないといけないんです。私が登っていった時季は、冬を下で過ごす村人が下山してくるタイミング。すれ違うたびに、皆に驚かれました。『何しに行くねん?寒いだけやぞ』って(笑)」
忠告されたとおり、寒かった。昼と夜の寒暖差が激しく、もっとも寒いときは、テント内の気温がマイナス18度を記録した。
その厳寒の地で、子供や女性がよく働いていた。
「子供は凍った斜面を谷底まで降りて水を汲みに。女性たちは、太陽が出れば外に出て、終日、毛糸を紡いでました。そして、寒いだろうからと、私に毛織の上着をかけてくれた。どんなに高性能のアウトドア用ジャケットよりも温かったですね」
■私は限界に挑み続ける
植村直己冒険賞を主催する豊岡市(兵庫県)から贈られた記念の盾にはこんな文言が記されていた。
「自分の限界に挑戦しながら行動し、困難を乗り越えていく姿は、多くの人々に夢と勇気を与えています」