くらし情報『『ふたりの人を愛し…』歌人・永田和宏語る故・河野裕子さんとの青春』

2022年5月22日 06:00

『ふたりの人を愛し…』歌人・永田和宏語る故・河野裕子さんとの青春

こんなふうに《お互いに意識しあっていた》(10月16日の日記)のに1月5日には《あなたを傷つけてしまった》と、ひと悶着あったことを裕子さんは記している。

この間に永田さんの“恋敵”の存在が明かされたのだ。正確に言えば、永田さんを好きになる以前から好きな男性がいたことが。

「何度も会っているうちに、心に思い決めている男性がいるらしいことに、薄々感づいてはいた」と永田さんが顚末を振り返る。

「私と頻繁に会うようになる2カ月ほど前、河野が短歌誌『コスモス』の全国大会で知り合ったのが、その『N』という青年でした」

裕子さんのその時分の日記には、N青年に関する記述も見られた。

《愛情について語った時、明らかに私は彼のひたひたとした愛情を感じた……》
「全国大会の後、数カ月は文通が続いていたようです」と話す永田さんこそ、N青年との恋路に「割って入った」格好なのだが。

約2カ月後、裕子さんの思いは振り子のように揺れ動いていた。

《今、Nさんを失ったら、歌を創るはりもゆめもなくなってしまう……今、永田さんを失ってしまったら到底しゃんとしてはいられない》(12月21日)

そしてとうとう《言ってはならぬことを言ってしまった……ふたりの人を愛していると》(1月7日)

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