元ITウーマンが開いた“1食無料”の食堂 誰もが安心できる居場所を
「あるときそこで女子2人がペスカトーレのパスタを楽しそうに作って、食べているのを目撃して、ふと『わびしいな』と思ったんです。周囲には、昼食の時間さえ取れない人やおにぎりで済ませる人もいたんですね。何がわびしいって、2人だけで、ほかの人が入れる余地を感じなかったんです」
そこで、小林さんは思い立つ。
「私がまかないランチを作ろう」
会議室を借り、就業前に豚汁などを仕込んで食べてもらうと、すぐに社内で評判になった。
「人と人が共に食べるという食の意味を実感し、具体的にお店を開きたいと思うようになりました」
誰もが自分のままでいられる空間であること。人と共にいること。それが食卓であること。料理人の価値観を押しつけるのではなく、その人にとっておいしいものを出すお店はどうだろう。
次々に新しい食堂のアイデアが浮かんだ。
約6年、IT企業でキャリアを積んできた彼女が、いきなり食堂を開くなどと言っても、賛同者は皆無。それでも、諦めはしなかった。人の心に敏感で繊細な感性と、猪突猛進の行動力を併せ持つのが小林さんだ。
14年3月、クックパッドを退社し、「未来食堂プロジェクト」を始動する。料理店や大手外食チェーンなどで料理の修業を積んだ。