元ITウーマンが開いた“1食無料”の食堂 誰もが安心できる居場所を
「店を出したいと告げて、高級志向の料理店でも修業しました。ここではキャベツの千切りで怒鳴られたりもしましたね(笑)」
1年4カ月、計6店での修業のなかで、「まかない」や、冷蔵庫の在庫リストから+400円で好きなおかずを作ってもらえる「あつらえ」など、具体的な取り組み方も決まっていった。蔵書を置きたいからと、古本の街・神保町で物件を探し、練り上げた事業計画書まですべてホームページで公開すると、オープン前からネット上で話題になっていた。
「ITの世界では、自分の知識や情報を公開するオープンソースの考え方が一般的。従来の飲食店の“秘伝のレシピ”などのように、知識を隠して価値を高めるのではなく、知識をシェアすることで業界全体がよくなればと考えました」
開店してからでも、同業者に「野菜の高いご時世に、野菜炒め食べ放題なんて、なんでできるの?」と聞かれると、仕入れ先まで快く紹介。コロナ前までは、売上高や純利益の月次報告もブログで公開していたほどだ。
初期投資は700万円。それを100万円ほどオーバーして落ち込んだときは、夫が励ましてくれた。
「それくらいどうってことない。クヨクヨして、貴重な時間を潰すほうがもったいないよ」