2022年8月28日 06:00
国内最高齢ゾウのアヌーラ 三笠宮さまご夫妻の平和の願いを乗せて
三笠宮ご夫妻とアヌーラ
東京都心から35km離れた多摩丘陵の生い茂る雑木の緑は、一段と濃さを増している。その緑の輝きに、子どもたちの声が響く。
「うわ、ぞうさんだ!大きい!」
「見て、見て、りんごを食べているよ。カワイイね!」
小さな瞳が見つめる先で、足元に落ちたりんごを探るように長い鼻を動かしているのは、雄のアジアゾウ「アヌーラ」。推定年齢は69歳。日本国内で最高齢のゾウだ。
アヌーラが暮らしているのは、丘陵の一角にある多摩動物公園(東京都日野市)。58年(昭和33年)の開園と同時に当時5歳だったアヌーラは、この動物園にやってきた。
それから64年間――。ずっとアヌーラは多摩動物公園の人気者だ。子どもたちは、3700kgもある大きな巨体を眺めては目をまん丸にしている。みんな飛びっきりの笑顔だ。
夏休みになると、アヌーラはもっとたくさんの笑顔に囲まれる。干し草を鼻先でつかむ姿に子どもたちの笑顔がはじける。ところが、子どもたちの顔をアヌーラは見ることができない。白内障で視力が低下し、ほとんど目が見えていないという。
アジアゾウの飼育を担当する田口陽介さん(30)が語る。
「点眼で治療をし、目ヤニや砂の汚れを取るなど目の洗浄を定期的にしていますが白内障はなかなか快方に向かいませんね。