2022年12月4日 06:00
最後の“銀座の花売り娘”81歳。作家・伊集院静さんとの路上での“対決”
木村さんが銀座で花売りを始めたのも13歳のときだ。引退した時期もあったが、復帰して40年たったいまも、土日祝日以外は夜8時から11時、時には0時過ぎまで銀座の路上で花を売り歩いている。木村さんは銀座の、いやおそらく東京で最後の“花売り娘”だ。
記者が初めて取材に訪れた10月下旬の夜は冷え込んだが、木村さんは平気な様子。
「冬でも歩いていると汗かいてくるよ。だから首のストールはタオル地。1日1万5千歩は歩くね」
そんな話をしていたとき、若いサラリーマンが声をかけてきた。
「あら、お兄ちゃん、久しぶり!」
木村さんは笑顔で立ち話。
なんでも数年前に彼から「2万円くらいで飲めるいいお店を紹介して」と頼まれたのが出会いだという。
「教えてあげたら花を買ってくれて店のママに持っていったのよ。『楽しい』ってそのお店にずっと行ってる。そういう縁はうれしいわね。去年、群馬に転勤になってからはたまにしか銀座に来ないけど」
コロナ禍の緊急事態宣言のときは、木村さんも1カ月間は家にこもっていたという。いまようやく客足が戻り始めた銀座だが、戦後の混乱期、バブル景気、その崩壊から現在の不景気と、移り変わる銀座を路上から見つめながら、木村さんは花を売り続けてきたーー。