2022年12月4日 06:00
最後の“銀座の花売り娘”81歳。作家・伊集院静さんとの路上での“対決”
なじみ客の清武さんと「3日前、さっぱり売れなくて困っていたら、清武さんが2回も来て全部買ってくださったの」
【前編】戦後の混乱期、13歳で花を売り始めて68年。最後の“銀座の花売り娘”81歳より続く
「お花はいかが?おみやげにいかがですか」
赤や黄色のバラを中心にアレンジした花束をいくつも抱え、黒塗りの車やタクシーが渋滞する銀座のネオン街で人びとに声をかけるが、立ち止まるどころか目を合わせてくれる者さえいない。
「昔は、花、花ってお客さんが集まってきて大変だったのよ。でもいまはぜんぜんダメね。3千円の花束を千円に値下げしても買わない。みんな余裕がなくなったのね」
銀座の西五番街通りと花椿通りが交差する一角を拠点に界隈を歩きまわり、花束を売っているのは、最後の“銀座の花売り娘”木村義恵さん、81歳だ。あざやかな青いセーターにバラ色のストール、黒いポシェットを肩掛けした木村さんは口調も足取りもはつらつとして、その年齢をまったく感じさせない。
終戦直後の混乱期、♪花を召しませ召しませ花を~と岡晴夫が歌って大ヒットした『東京の花売娘』(※)にあるように、銀座や有楽町、新橋では多くの若い女性が通行人に花を売っていた。