2023年6月11日 06:00
スーダン内戦から決死の脱出 認定NPO法人「ロシナンテス」理事長・川原尚行(57)
車にはスーダン人の夫と日本人妻の家族も一緒だったんですが、ちっちゃい子どもたちの姿やはしゃぎ声が、励みになりました。子どもたちの未来が、俺のハンドルにかかっているんだと」
ようやく目的地に到着したのが、24日午後1時。疲労困憊のまま、緊張状態が続いたが、検問所にあった見慣れた顔が、安心感を与えてくれた。診療所や井戸、教育施設をともに作った村のリーダー、ハサンさんだった。
「日本の家族は元気か?診療所も学校も、井戸もまったく問題がないから安心しろ」
川原さんは述懐する。
「何時に到着するともわからない私を、ずっと待っていてくれたんです。自分の身も危ないのに、わざわざ来てくれるとは……。車は現地に乗り捨てるつもりでしたが、ハサンに預けることもできました」
ポートスーダンから隣国のジブチへ向かう自衛隊機では、機内に掲げてある日の丸を見て涙が浮かんだ。
ここではじめて無事に帰れると実感したという。
羽田空港へ到着したのは、内戦開始から約2週間後の29日。福岡から迎えに来た佳代さん、東京や山口で暮らす子どもや孫たちが空港で待ちわびる。
「無事に帰ったよ。心配かけたね」と語る川原に、佳代さんは「よかった、よかった」と抱き合った。
体から家族の温もりが伝わってきた──。
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