2023年7月2日 06:00
売野雅勇語る『少女A』誕生秘話 中森明菜は“繊細で傷つきやすい少女”に見えた
詞が先で、あとから曲をつけるということだったので、早く書かなくちゃいけなかったんですけど、全然、書けなくて切羽詰まってきたとき、『少女A』というタイトルだけが、パッと思い浮かんだんです」
かつて沢田研二に書いてボツになった詞があったのを思い出した。
「ヴィスコンティの映画『ベニスに死す』をイメージしたボツ原稿は、中年の男性が若い女性をプールサイドで口説いてるっていうもの。で、これを少女目線に置き換えたのが『少女A』の最初の2行だったんです」
紆余曲折がありながら、作曲家の芹澤廣明氏のメロディに合わせて詞を組みかえ、明菜のセカンドアルバム『バリエーション〈変奏曲〉』に収録されることに。このアルバムで、シングルカットされる曲は、明菜のデビュー曲『スローモーション』の作曲を手がけた来生たかお、作詞を手がけた来生えつこの曲に決まりかけていた。
「ところが明菜さんのマネージャーが、レコード会社のディレクターのデスクで『少女A』とデカデカとタイトルを書いた原稿用紙を見て“なんだ、これは”と興味を示してくれて、急遽、『少女A』がシングルカットされることになったそうです」
だが、歌の内容に明菜本人は難色を示したというのは、有名な話。