南樺太、ウクライナ――戦争で2度「故郷」を奪われ日本へ避難した降簱英捷さん(79)
や妹のレイ子さんらと「もう会えないと思っていたよ」と言いながら抱き合って再会を喜ぶ姿が全国ニュースで報じられた。
これより2週間前の3月5日、英捷さんはウクライナを脱出した。
キーウから西に140km。英捷さんの暮らすジトーミルには軍事施設があり、ロシア軍はジトーミルにも容赦ないミサイル攻撃を仕掛けた。空襲警報が鳴りやまなくなったころ、孫の妻インナさん(28)とひ孫のソフィアちゃん(3)、大学生の孫ヴラーダさん(19)を伴い、4人で日本へ緊急避難することを決断した。3月6日に避難するはずだったが、自宅のごく近くの民家が攻撃されたため、1日前倒しの脱出だった――。
冒頭にあるように英捷さんが1カ月のウクライナ行きを敢行したのは、その地でまだやり残したことがあったからだ――。
早朝、1年ぶりの再会に狂喜して飛びついてきてくれた愛犬とともに、近所を歩いてみた。
緑豊かな美しい街は何事もなかったかのようだが、そこから車で数十分走ると、砲撃で破壊された集合住宅の瓦礫が、まだそのまま残存する光景も広がる。英捷さんは、日本への帰還に尽力し新生活が安定するよう寄り添ってくれている日本サハリン協会の斎藤弘美会長に、この悪夢のような残骸を動画で送った。