「父親のような存在」GACKTが涙ながらに語った緒形拳さんとの絆 毎年お墓参りで報告も
この頃のボクはすでに拳さんに心底惚れていた。しばらく考えた。『謙信のセリフとして[意味]や[内容]を相手の役・キャラクターに届けるのではなく、ボク自身が拳さんに想う素直な気持ちを役のセリフに乗せ、その想いを真っ直ぐに届けよう』と決めた。本番当日、「カメラリハが終わったら、すぐに本番にしてほしい」と監督に伝えた。何度もできないかもしれないからだ。拳さんも「ガックンがそう言うならそうしよう」と答えてくれた。
■拳さんの動きが止まり顔が急に怖くなった
拳さんの背中側にカメラが何台も並び、すべてのカメラが拳さんの背中越しにボクを狙っている。拳さんは背中しか映っていない。
本番が始まった。拳さんに対する想いを謙信の長いセリフに乗せ素直に届ける。セリフの途中で拳さんの厳しい表情がスーッと『ほー』という顔に変わっていった。最後のセリフが終わった。まだカットがかかる前だ。拳さんはカメラにわからないようにニコッと微笑み、そっと親指を立て『よかったぞ!』と満面の笑みを届けてくれた。
その時に新たな喜びと気づきを得た。『ボクはこの人に喜んでもらうために、それだけのためにここに来ているんだ…』と。
今までは仕事はすべてファンのためだけのものだった。