「20のうち19落ちた」“離婚のエキスパート”中里妃沙子さん 90年代に直面した“女性弁護士が就職する難しさ”【令和の寅子たち(1)】
そこは男性の弁護士が1人でやっている事務所でしたが、企業案件の実績や事件処理などが天才的で、カリスマ性のある人でした。
女性弁護士が就職難のときに、私以外にもう1人女性を採用するなど、ちょっと変わったボス弁でしたけど(笑)。私は19の事務所に落とされた悔しさよりも、この人だという弁護士がいる事務所に入れた喜びのほうが大きかった」
就職してから3カ月。中里さんはいきなり、そのボス弁から大きな案件を任される。それは個人経営者が、ある大企業に立ち向かう金銭絡みの訴訟だった。
「プロの弁護士として、初めての仕事でした。最初はボス弁が担当していた案件でしたが、途中から最後まで私がやることになり、結審までに2年ぐらい費やしました。
第一審でコテンパンに負けました。
でも、第二審では和解が成立したんです。大企業相手に和解に持ち込めたのは、事実上、勝ったようなもの。今思えば、ボス弁にはデビュー戦から凄い経験をさせてもらったと思っています」
中里さんの法律家人生は、まるで2人の変わった恩師に導かれたかのようでもある。その後彼女は、弁護士としてのキャリアを着々と積み重ね、2009年、離婚事件のリーディング法律事務所として、丸の内ソレイユ法律事務所を設立。