元日の地震で被災は3度目…輪島塗「藤八屋」を何度でも立ち上がらせる思い
そのすぐ後ろ、傾いた電柱には、その場所に店があったことを示す矢印とともに「藤八屋」と記された看板広告が焼け残っていた。
「まだ、建ててから、わずか14年しかたってなかったんですよ」
藤八屋──。明治時代から漆器の製造と販売を手がける、輪島塗を代表する「塗師屋」の一つで、得意先には「野田岩」「つきじ宮川本廛」「くろぎ」「竹やぶ」「すきやばし次郎」といった老舗や一流店が名を連ねる。G20大阪サミットの晩餐会で、乾杯に藤八屋の引盃や多くの器が使われたことも。純永さんの夫・正英さん(76)は藤八屋の3代目だ。
夫婦が、二人三脚で築いた“城”、それが朝市通りにほど近い場所にあった藤八屋本店。土蔵をイメージした白壁に切り妻屋根が美しい、自慢の店だった。建てられたのは、その歴史に照らせばごく日の浅い’10年のことだ。
純永さんの言葉どおり、まだ、ほんの14年しかたっていない。なぜなら、藤八屋が被災するのが、今回が初めてではなかったからだ。■結婚目前に、新居が突風被害に…
「新聞などには、うちは『2回被災した』と書かれていますけど、本当はね、今度で3回目なんです」
山本町の工房兼自宅でのインタビュー中、純永さんはため息交じりにこう明かした。