元日の地震で被災は3度目…輪島塗「藤八屋」を何度でも立ち上がらせる思い
「前回、本店を建ててくださった工務店さんに先日、改めて相談したら、もう先約があって『藤八屋さんに取りかかれるのは5番目です』と言われてしまって……」
一面の焼け野原を眺めながら、純永さんは深くため息をついた。
「地震から4カ月、手つかずのこの一帯が更地になるのに、あと何年かかると思います?3年?4年?そこから、再建できたとして、うちの店の復興は、10年がかりになってしまいますね」
それでも、3月下旬──。朝市通りから車で10分ほどの、倒壊を免れた山本町の工房兼自宅で、正英さんは漆器作りを再開した。純永さんも復興のため奔走し始めた。
「ただ願うのは、10年先もこの手でいいものを、堅牢でお客様から喜ばれるものを作り続けていたい、それだけ」(正英さん)
純江さんは次のように続ける。
「誰かにも言われましたよ、『すごいね、何があっても立ち上がるよね』って。いやいや、とんでもない。もうね、ずっとずーっと被災で抱えた借金を返済し続けてるんです。
最近つくづく思います、なんのために生きてるんだろうって(苦笑)。ただね、このままで人生終わってしまったら、私の一生が『やった!』と振り返ることができないものになってしまう気がする。