日本の骨髄バンクの生みの親が乗り越えた難病、挫折ーー
このときが白血病との闘いのなかで、いちばん苦しかった、と大谷さんは振り返る。
「このまま死ぬのかなという精神的なつらさは、ずっと続きました。あの地獄のような苦しみが、いまの活動の支えとも言えます。同じ気持ちを抱えている人がいるかと思うと、体が動いてしまいます」
奇跡が起きたのは、もう一度家族4人でHLAの適合検査を受けたときだ。1万分の1という確率で、母親と完全に一致していたのである。移植された巻枝さんの骨髄が、26歳の大谷さんの体のなかで、健康な血液を作りはじめた。しかし、悲しい知らせもあった。14歳のさおりちゃんが亡くなったのである。
「入院していても、いつも好奇心でキラキラしていました。さおりちゃんの夢は“普通の高校生”になることでした。その無念を思うと……。彼女の存在も、いまの活動を支えている一つです」
’17年1月現在、骨髄バンクの登録者数は46万9,348人、移植は2万309件を達成した。さらに3,527人の患者がドナーを待っている。