“300年女人禁制”伏見の酒蔵率いる2児のママの人生
(大塚さん)
’00年4月に入社したが、危惧していたとおり、事務的なしごとばかりが続く。たまに現場の作業が入ったと思えば、瓶詰めだったり……。大塚さんは焦った。入社してから半年ほどして10月となり、日本酒の仕込みが始まると、つらい気持ちはピークに達した。
「これでは酒づくりをしないままで終わってしまうんじゃないかと、悶々とした日々を過ごしていました」(大塚さん)
行き詰って、広島の酒蔵で働いていた先輩に相談したところ、返ってきたのは「自分でできることは全部やったのかい?」。そのひと言で、自分の甘さに気付かされたという。
「それから毎日、早朝の3時から蔵に通いつめて、ベテランの杜氏さんの仕事をひたすらメモしました。そうなんです。
かろうじて当時まで、300年間続いてきた、昔ながらのスタイルの杜氏も働いていたんです」(大塚さん)
小さなノートを手に、酒づくりの要点を逐一メモし続けた。やがて、ベテラン杜氏も、大塚さんに少しずつ言葉をかけるようになっていく。
「ときには、モタモタしている私に『早くせんかい!』と蔵中に響くような怒鳴り声でしたが(笑)。