「女将さん会」会長が小池都知事に伝えたい築地と豊洲の違い
先代のご夫婦も、“縁の下の力持ち”という存在でしたね」(今井さん)
同じくメンバーで、場内の飲食店「豊ちゃん」の女将だった長田光子さん(90)はこう話す。
「もう亡くなりましたが、築地の飲食業組合の役員をしていた主人のモットーは、『役員会の招集がかかればすぐに店を空けられるように、1人は従業員を余分に雇っておくんだ』。リストラばかりが言われる現在とは真逆の発想でした。タイさんは、またたく間にみんなの意見をまとめて、堂々としています」(長田さん)
証言に出てきた、樋徳商店の先代の“縁の下の力持ち”的なエピソードは、タイさん自身の口からも語られた。
「あるとき、ほかの店のお客さんがウチに来て言うんです。『ひいきにしている店主が具合が悪くて店を畳みそうだから、今度は樋徳さんから買いたい』と。すると、先代はこう話したんです。『そんなこと言わないで、あちらで買ってあげてくださいよ。
私で手伝えることはしますから』」(タイさん)
築地には、つかず離れずながら、いざというときには、グッと相手の懐ろに入り込む人情が生きていた。