さらに東電が職場環境を調整する安全配慮義務を怠ったとなれば、そこにも責任が生まれることになるのです」
本誌は、A氏にコメントを求めた。A氏は「拓磨さんを無視していません」とした上で、職場に置いてきぼりにしたことや、ご両親への謝罪についてはこう答えた。
「たまたま作業というか仕事が重なってしまったので、置いておくというか、連絡が取れませんでした。(謝罪については)、本人が悩んでいたことに気づけなかったことは申し訳ないが、それ以外はしっかりと対応していたと思います」
東京電力にも取材を申し込むと、「個別の裁判に関する内容につきましては、回答を差し控えさせていただきました」(東電パワーグリッド広報)との回答だった。
3年に渡る裁判は8月3日に行政裁判、8日に損害賠償請求裁判が結審を迎える。
息子の自殺から6年。いまだに東電からの情報が出ない状況に、父親の明さんは唇をかみしめながらこう言う。
「東電は事件を風化させたがっているのかもしれませんが、拓磨が死を賭してまで訴えようとした『第二、第三の自分を作らないで欲しい』との願いを消し去ることだけはしたくありません」
(取材・文・撮影/桐島瞬)
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