年間5千億円もの税金投入…公立病院が赤字に陥る理由とは
ほかにも、ワンフロアに医師用、看護師用と、二十数個の会議室を作ろうとしたり。理解できないことが多かった」(元公立病院の産婦人科医)
このように公立病院は明確なビジョンや理念がないため、魅力的な病院が作りづらいのが現状だ。前出の上さんが言う。
「公立病院の場合、何となくすべての診療科を扱いますが、どれも中途半端で二流止まりの診療になってしまう傾向が強い。専門性においては、公立病院は民間病院に、もはや太刀打ちできません。その地域にどんな医療が求められているのか、代替の利かない魅力のある病院作りをしなければ……」(上さん・以下同)
何の対策も講じなければ、今後は消えていく公立病院が増加の一途をたどるだろう。
「地域に病院がなくなれば、救急車のたらい回しが頻発し、孤独死も増えます。そんな社会を、誰が望むでしょうか」
地域の公的病院をどのように存続させるのかーー。
市民が正しい判断をするため、経営状況のブラックボックス化は避け、可視化されていかなくてはならない。