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「福島県相馬市では、64歳以下のワクチン接種がすでに始まっています。7月中に16歳以上の2度目の接種が『おおよそ完了する』予定で進められているんです」こう話すのは、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師だ。テレビのコメンテーターとしてもおなじみの上さん。現役臨床医としても、相馬市の集団接種会場でワクチン接種に従事している。「電話がつながらない」などのトラブルの多い予約制ではなく、行政が地区ごとに日時を指定する独自方式を採用した相馬市では、5月31日時点で、65歳以上の85%が1回目の接種を終了した。6月1日からは64歳以下の接種も始まり、「相馬モデル」は全国で注目されている。全国各地で進むワクチン接種。「接種したら旅行に行きたい」「施設の母を見舞いたい」そんなふうな、期待を持っている人も多いはずだが……。「ワクチンを打ってもすぐに効果が得られるわけではありません。また、行為によってリスクは違いますから、いつからやっていいかは、それぞれ異なるのです」(上さん・以下同)それではワクチンを接種してから、何をどのタイミングでやっていいようになるのか。上さんに教えてもらった。新型コロナのワクチンは2回の接種で「望ましい効果が得られる」とされている。1回目の接種後、2週間ほどたってから効果が出始め、3週間(21日間)以上あけて2回目を接種。さらに、それから7日たつと、十分な免疫が得られる。よって、「マスクなしでの会話」は、2回目の接種から7日たつまでは控えたほうがいいという。「マスクをつけて家族以外の人と会ったり会食をしたりする場合も、ワクチンの接種状況が重要になります。自分か相手のどちらかが、接種によって十分な免疫を獲得している場合は、問題ないでしょう。そうでなければ、会わないのが望ましいです」双方が接種していない状態で会わないといけない場合は、会食は避け、できるだけソーシャルディスタンスに気をつける必要がある。では、レクリエーションは?「『映画観賞』は、館内でもほとんどしゃべりませんので、私は『1回目の接種の14日後から』で大丈夫だと考えています。東京五輪も含めた『スポーツ観戦』も『屋外』なら、ウイルスが希釈され、リスクが低いですから、同じ基準と考えていいでしょう」しかし同じスポーツ観戦でも、「屋内」の場合は「2回目の接種の7日後」までは控えたほうがいいという。「屋内の観戦は、密閉空間で歓声を上げてしまう可能性があるので、感染リスクが高まります。スポーツジムでの運動やカラオケなども同様。やはり、体が触れ合う行為も、2回目の接種の7日後まではやめたほうがいいですね。しかし、必要な医療行為をうけるのは、躊躇することはありません」もう1年半近く旅行をしていない人も多いと思うが。「家族での旅行は、いつも一緒に生活しているのであれば、基本的に問題ありません。しかし、団体ツアー旅行などは、十分な免疫を得るまではやめてください」■いつまで効果が続くかは研究中一方、まだ不明なことも多い。「ワクチンで得た免疫の効果がいつまで持続するのかは、まだ研究段階です。もしかしたら、免疫が弱まり、ふたたびワクチンの接種が必要になる可能性も。また、インフルエンザなど、ほかの病気の予防接種をいつから開始していいかも、一部で臨床試験が始まったばかりで、結論は出せません」ワクチンはコロナの感染リスクを大幅に下げてくれるが、接種後に自分が感染したり、人に感染させたりする可能性がゼロになるわけではない。「コロナが収束するまでは、自分がワクチンを接種した後でも、ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用は続けたほうがいいでしょう」ワクチン接種後も感染対策を続けながら、少しずつ日常を取り戻していこう!
2021年06月20日「薬局でも在庫がなくなっていたり、なくなりかけたりしている薬が増えています。コロナ禍のせいで、インドや中国で原薬(医薬品の有効成分)の製造が滞っているそうで、今後は内科系の持病のある患者さんの薬も処方できなくなるのではないかと心配しています。もちろんできる限り、代替可能な薬もおすすめしますが……」そう不安を漏らすのは、東京都内の開業医。’20年にマスクを求めて人々が列をなしたこともまだ記憶に新しいが、実はいまも現場の医療関係者は“薬品不足”を懸念しているというのだ。医療ジャーナリストによれば、「いわゆるジェネリック医薬品では原薬の約6割を韓国、中国、イタリア、インドなどからの輸入に頼っています。それが’20年3~5月ごろには海外でロックダウンが頻発し、工場の操業が止まったり、航空便が減少したりして、輸入が滞るという緊急事態が勃発しました。当時、大阪府のある医薬品メーカーは、“インドのロックダウンの影響により、抗生物質など数十の製品の出荷制限を行っている”と、コメントしています」’19年に抗菌薬の供給困難を機に発足した「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」(以下、厚労省の有識者会議)もコロナ禍の影響を注視しているという。会議のメンバーである神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科の坂巻弘之教授はこう語る。「マスクも安定的に供給できるようになるまで半年ほどかかりました。それが化学合成を積み重ねた薬となると、さらに供給が安定するまで時間がかかります。海外、特に1国や1社に頼りすぎるのはリスクが高いのです。昨年のインドの輸出停止は一時的なもので、外務省や大使館の奔走で、チャーター機により原薬を確保することができました。いまは、かなり落ち着いてきている状態だと認識しています」また同じくメンバーの「一般社団法人日本薬業貿易協会」の藤川伊知郎会長は、「医薬品は旅客便の下の貨物室に積んで輸送することが多いのです。当時は、たとえ原薬があっても、旅客機が飛ばない、空港職員が足りないといった理由などで、輸送できない状況でした。現在(12月下旬時点)はおおむね解消していますが、まだ100%医薬品の物流が回復したということではありません。フライトのブッキングには時間もかかりますし、運賃も値上がりしています」状況は回復しているというのだが、なぜ現場の医療関係者たちは不安を覚えているのだろうか?昨年、医薬品メーカーにより出荷調整が公表された薬品のなかには、高血圧治療薬や認知症治療薬などもあった。その後、出荷調整が解除されたものもあったが、いまだ継続中という薬品も残っているのだ。東京都内にある大学病院の薬剤部関係者はこう語る。「原薬不足による供給停止は減少しているようですが、’20年は薬品のリコール(回収)が急増し、それも痛手となりました。それぞれの企業の内部事情はこちらにはわからないのですが、コロナ禍の影響でマンパワーが不足しているなど、製造ラインがうまく機能していないのではないかという印象は受けています」このリコール問題について、浅草薬剤師会理事を務める田中雪葉さんは、「“出荷調整中”とされる薬も多く、現場は“大変”の一言につきます。原薬が不足している以外にも、最近では製造過誤による回収も起こっています」現場での情報は入り乱れているようだ。たとえば、ビタミンB2を補給するフラビタン錠は、原薬製造会社が業務改善命令の行政処分を受けた影響で出荷調整が続いているが、薬局のHPによっては、“コロナの影響により”と説明されていた。「吸入薬のオルベスコのように、“コロナに有効”という情報が流れたことで、一部の医療機関が在庫を保持してしまい、本来使用していた、ぜんそくの患者さんのもとに回らなくなってしまったというケースもあります。また1つの製品が回収されてしまったあおりで、品薄になってしまうこともあります。いまはお子さんが風邪をひいても、コロナ感染を防ぐために、市販の薬で対処しようという親御さんも増えているのです。ある会社の子供用シロップが回収されてしまったのですが、別の会社のシロップの供給が追いついていないという状況も起こっています」(前出・田中さん)またNPO法人「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広さんは、「コロナ禍のせいで世界的に薬剤の供給が滞っている状況はいまも続いています。日本でもふだんでは考えられないようなリコールが続いているのも、コロナ禍の影響と言えるでしょう」さらに今後の“薬品流通全体に関わる不安材料”もあるという。前出の有識者会議メンバーの日本薬業貿易協会の藤川会長によれば、「薬品に関する物流は改善していますが、今年3月以降にコロナワクチンの輸送が始まれば、マイナス70度という温度管理が必要となります。そのため薬品輸送に使用していた冷蔵コンテナが不足してしまう可能性もあり、物流のスケジュール調整もかなりタイトになるでしょう」そして前出の坂巻教授もこう語る。「感染力が1.7倍という変異種の感染者が日本でも確認されました。これからいつ世界のどこがロックダウンするかは予測できません。昨年4月ごろのように、一気に薬品の物流が止まってしまう危険性もあるのです」“いつものお薬はお出しできません”、そんな言葉にも慌てないように、持病薬や常用薬のストックを常に確認するとともに、代替薬のリサーチも進めておきたい。「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載
2021年01月08日「PCR検査が受けられない」。新型コロナウイルス感染拡大の第1波と第2波ではそんな訴えが相次いだ。現在ははたして改善されているのだろうか。本誌記者が経験した“お金次第”の最新PCR事情ーー。「万が一、無症状でコロナ感染していた場合、不特定の方にうつしてしまうのが怖かった。出張先で『東京から来た人だ』と不安にさせてはいけないと思ったんです」11月上旬、本誌50代女性記者が東北地方への出張前にPCR検査を自費で受けた経緯を振り返る。東京の自宅の最寄り駅で検査できるとネットで知り、出張日の2日前に予約を入れた。費用は「陰性証明書」発行料込みで3万円。院内では医師も看護師も防護服、検温で平熱「36.3度」を確認し、別棟「発熱外来」に移動して、検査キットに唾液を絞り出して採取。さらに次の日の午後、電話で「検査の結果『陰性』でした」と告げられ「ホッ」。その夜に、病院に行き「陰性証明書」を受け取った。翌日からの出張の準備をしていると、北陸地方の実家近くに住む姉から電話が。「姉は『母が38度の高熱が2日続いている』というんです。85歳の母は高齢に加え糖尿病の基礎疾患があり、『コロナ感染すると重篤化する』恐れがありました」市のコロナに関するコールセンターに連絡するよう姉に伝え、2日後に大学病院でPCR検査を受けることが決まった。母は「コロナと疑わしい症状(発熱)があって医師が必要と判断した」ため、費用は公費負担だった。母と頻繁に接触していた姉も家庭があったので、検査を受けたがった。だが、特に症状はなく、母の結果も出ていないので濃厚接触者でもない姉は、公費での検査を受けることができない。「姉はネットで郵送のPCR検査を申し込みました。すぐに検査キットが届き、唾液を入れて速達で送ったそうです。結局、姉も母もほぼ同じタイミングで『陰性』と判明。今回の件で、コロナをより身近に感じるようになりました。そして、何よりPCRを受ける方法がこんなにたくさんあるんだと驚きましたね」新著に『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』(毎日新聞出版)がある医療ガバナンス研究所理事長・上昌広さんはこう話す。「日本では無症状感染者へのPCR検査はほとんど行われていない。アメリカ海兵隊の新兵の検査で陽性者の約9割が無症状者とわかり、イギリスでは全国民に複数回の検査を実施するというのに……」上さんは「少しでも『体調が悪い』と思ったり、『鼻水が出た』程度でも医療機関や保健所に連絡すべきです」と力説する。「特に『かかりつけ医』に連絡した場合、PCR検査をそこで実施していないとしても、患者さんは大事なリピーターですから親身に調べてくれるはず。内々で検査してくれる可能性もあります」ただ、無症状で「陰性」を確認したいなどの場合は、自己負担になってしまう。費用の相場や方法を確認しよう。「PCR検査は、主に鼻咽頭ぬぐい液と唾液を調べる方法がありますが、適切に行えば精度に違いはありません」「女性自身」2020年12月15日号 掲載
2020年12月04日これまで新型コロナは、無症状者や軽症者にも入院の勧告をする感染症と分類されていた。しかし、厚労省は“誤った”方向でその分類を見直す予定だというーー。「感染状況は7月末がピークになっているように見え、新規感染者数は緩やかに減少を始めていると考えられる」厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の会合にて、新型コロウイルスについて冒頭のような見解が発表されたのは9月2日のこと。同組織は「感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し」を盛り込むことも発表している。これについて、政治部記者が解説する。「現行の感染症法では、新型コロナの感染者について、家庭内感染や重症化を防ぐため“入院の勧告や措置”を取ることができます。しかし厚労省は、重症者以外の感染者について“入院勧告をしない”という方向で見直しを図るというのです」あらゆる感染症は同法に基づいて、おもに「一〜五類感染症」に分類される。新型コロナは、その実態についてまだまだわからないことがあるため正確な分類はなされておらず、厚労省は「指定感染症」としている。ただし入院の勧告や措置などを行っていることから、新型コロナは“二類相当”に分類されているのが現状だ。■感染症法に基づくおもな措置の概要(参考:厚生労働省健康局結核感染症課「感染症の範囲及び累計について[平成26年3月]」【一類感染症】例:エボラ出血熱、ペスト等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの(病原性の強さは一類→二類→三類の順)入院勧告・措置:○就業の制限:○【二類感染症】例:結核、SARS、一部の鳥インフルエンザ等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの入院勧告・措置:○(感染症法に基づく措置の場合、検査費・入院費は公費で負担する)就業の制限:○【三類感染症】例:コレラ、細菌性赤痢、腸チフス等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの入院勧告・措置:−就業の制限:○【四類感染症】例:黄熱、狂犬病、一部の鳥インフルエンザ等分類の考え方:おもに動物などを介してヒトに感染するもの入院勧告・措置:−就業の制限:−【五類感染症】例:インフルエンザ、性器クラミジア感染症等分類の考え方:国民や医療機関への情報提供が必要とされているもの入院勧告・措置:−(入院費や宿泊費は自己負担の可能性がある)就業の制限:−今回厚労省は、新型コロナをこの“二類相当”から除外する方向だというのだ。それは「医療現場の混乱を防ぐため」と厚労省の担当者が本誌記者に答える。「現在の感染症法の扱いでは、新型コロナの患者となれば軽症でも入院勧告、強制入院などの措置を取ることができます。しかし『入院勧告などがどこまで必要なのか?』を改めて検討しましょう、という運びとなりました。インフルエンザの流行が予測される秋冬を前に、医療機関の負担増大や病床不足を招かないよう、軽症者や無症状者には宿泊療養、自宅療養での対応を徹底していく方向です」だが、この“二類外し”の措置が招く事態を大いに不安視するのは、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんだ。「無症状や軽症の人に入院勧告がされなければ、宿泊療養さえしないケースが増えるでしょう。そこで危惧されるのは、このところ顕在化してきた『家庭内感染』が増え、死者が激増してしまうことなんです」(上さん・以下同)二類外しが行われた場合、新型コロナに対してはどのような措置が取られていくのだろうか。「入院や就業制限などの対人措置をなくすという目的から、そういった拘束力を持たない『五類感染症』相当に分類せざるをえないでしょう。これは、季節性インフルエンザなどと同じ分類です。しかし、インフルエンザの致死率は0.01〜0.1%なのに対し、9月1日現在の新型コロナの致死率は1.9%。少なく見ても新型コロナのほうが20倍ほどの致死率ですから、“二類外し”がいかに乱暴な措置であるかがわかるはずです」もし「五類」相当となった場合、感染の疑いが生じたら、インフルエンザと同じようにいきなり病院を受診することになる。ここにも二類外しが招く“悲惨な事態”があると上さんは警鐘を鳴らす。「二類外しは、感染者への法的な拘束力をなくすことを意味します。ですから、そもそも感染者を入院・宿泊療養させるために行っていたPCR検査も、その意味を失ってしまうのです。すると“不安なら即、病院へ”という風潮になる。感染を疑った人たちが病院に殺到すれば、全国の病院がかえってひっ迫しますし、今度は『院内感染』も激増するでしょう」感染者が野放しになる可能性がある以上、これからは感染のリスクにより注意深く向き合っていく必要がある。「徹底した手洗い、消毒やマスク着用などの基本的対策はもちろんのこと、自分の『かかりつけ医』を持って、密に相談できるようにしておくことです。そして、大事なのがインフルエンザワクチンの接種。これは、新型コロナ感染を予防する可能性も報告されています。感染リスクの高い病院に通う回数を減らすためにも接種しましょう」二類外しによって「家庭内感染死」を招かないためにも、よりいっそう強い対策意識を持って生活していこう。「女性自身」2020年9月22日 掲載
2020年09月11日「感染状況は7月末がピークになっているように見え、新規感染者数は緩やかに減少を始めていると考えられる」厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の会合にて、新型コロウイルスについて冒頭のような見解が発表されたのは9月2日のこと。同組織は「感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し」を盛り込むことも発表している。これについて、政治部記者が解説する。「現行の感染症法では、新型コロナの感染者について、家庭内感染や重症化を防ぐため“入院の勧告や措置”を取ることができます。しかし厚労省は、重症者以外の感染者について“入院勧告をしない”という方向で見直しを図るというのです」あらゆる感染症は同法に基づいて、おもに「一〜五類感染症」に分類される。新型コロナは、その実態についてまだまだわからないことがあるため正確な分類はなされておらず、厚労省は「指定感染症」としている。ただし入院の勧告や措置などを行っていることから、新型コロナは“二類相当”に分類されているのが現状だ。■感染症法に基づくおもな措置の概要(参考:厚生労働省健康局結核感染症課「感染症の範囲及び累計について[平成26年3月]」【一類感染症】例:エボラ出血熱、ペスト等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの(病原性の強さは一類→二類→三類の順)入院勧告・措置:○就業の制限:○【二類感染症】例:結核、SARS、一部の鳥インフルエンザ等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの入院勧告・措置:○(感染症法に基づく措置の場合、検査費・入院費は公費で負担する)就業の制限:○【三類感染症】例:コレラ、細菌性赤痢、腸チフス等分類の考え方:感染力と罹患した場合の重篤性などに基づき、その危険性が判断されたもの入院勧告・措置:−就業の制限:○【四類感染症】例:黄熱、狂犬病、一部の鳥インフルエンザ等分類の考え方:おもに動物などを介してヒトに感染するもの入院勧告・措置:−就業の制限:−【五類感染症】例:インフルエンザ、性器クラミジア感染症等分類の考え方:国民や医療機関への情報提供が必要とされているもの入院勧告・措置:−(入院費や宿泊費は自己負担の可能性がある)就業の制限:−今回厚労省は、新型コロナをこの“二類相当”から除外する方向だというのだ。それは「医療現場の混乱を防ぐため」と厚労省の担当者が本誌記者に答える。「現在の感染症法の扱いでは、新型コロナの患者となれば軽症でも入院勧告、強制入院などの措置を取ることができます。しかし『入院勧告などがどこまで必要なのか?』を改めて検討しましょう、という運びとなりました。インフルエンザの流行が予測される秋冬を前に、医療機関の負担増大や病床不足を招かないよう、軽症者や無症状者には宿泊療養、自宅療養での対応を徹底していく方向です」だが、この“二類外し”の措置が招く事態を大いに不安視するのは、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんだ。「無症状や軽症の人に入院勧告がされなければ、宿泊療養さえしないケースが増えるでしょう。そこで危惧されるのは、このところ顕在化してきた『家庭内感染』が増え、死者が激増してしまうことなんです」(上さん・以下同)東京都で報告された9月1日の新規陽性者170人のうち、家庭内感染は20人と、“感染経路別で最多”の数字だ。「家族と同居している人は『自分からうつしてしまうこと』を恐れるでしょう。そのため、たとえ無症状でも、“自主隔離”という形で入院する方もいます。高齢者の方と同居している人はなおさらです」新型コロナが二類相当である限り、入院や宿泊施設での療養を公費で受ける権利は、感染症法上で保障されている。経済的な負担なく、入院・療養できるようになっているのだ。「しかし“二類外し”されてしまうと、無症状患者や軽症者は『自主隔離するなら自己負担で』と言われているも同然となる。経済的な負担を考えると、結局自宅で療養するしかなく、家庭内感染のリスクは高まるいっぽうなのです」重症者以外は“入院不可”となることで、軽症者や無症状の感染者を隔離する強制力を失うため、彼らが街に“野放し”になることも考えられる。「すると新規感染者が増え、自宅で療養する人も多くなる……それがさらなる家庭内感染を呼ぶ。同居する高齢者の感染リスクは現状よりも格段に上昇し、亡くなる人も増加して、全体の致死率が“倍加”する恐れもあると考えています」「女性自身」2020年9月22日 掲載
2020年09月11日記録的な猛暑がおさまりはじめるとともに、新型コロナウイルスの新規感染者数も徐々に落ち着きを見せている。7月下旬から8月中旬にかけて連日、全国で1千人以上を記録していた感染者も、8月下旬からは1千人を下回る日が増え、峠は越えたかに見える。「8月20日に行われた日本感染症学会のシンポジウムでは“医療崩壊が起きる可能性は低まってきた”と分析されるなど、緊急事態宣言解除後に発生した第2波は収束したと見る向きが強いです。政府もGo Toトラベルキャンペーンから除外していた東京を追加する方向ですし、全国の繁華街への人出が8月下旬から急増しています」(社会部記者)NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、こうした現状に警鐘を鳴らす。「日本ではお盆休みもあって経済活動も低下したから感染者数も減ったように感じていますが、そこだけを見て『第2波は越えた』と制限をやめようとしている。まさに愚の骨頂です」全国に緩みが広がるなか、日本からもそう遠くない香港では衝撃の“新脅威”が発見された。香港大学の研究者が24日、4月に新型コロナに感染し回復した男性が8月15日に再び感染したことを発表したのだ。再感染が実証されるのは世界初となる。「この男性が再感染したウイルスは最初にかかったものとは違う型で、無症状だったそうです。25日にはベルギーとオランダでもそれぞれ1人が再感染したと発表されました。免疫の効果を疑問視する研究者も増えています」(医療ジャーナリスト)第2波収束の兆しが見えはじめたなか、浮上した“再感染の恐怖”。その鍵を握るのが、感染後の体内で発生し、ウイルスと闘う免疫として機能する抗体だ。経営する「のぞみクリニック」でコロナの抗体検査も行っている感染症が専門の筋野恵介院長はこう語る。「コロナに感染してから1カ月、3カ月と検査していくと、3カ月や半年たって抗体を失った人がいます。症状が軽い人のなかには抗体ができず、免疫がつかない人も多いんです。そのため、再感染するかどうかは、抗体が作られているか、残っているかで変わります。一度かかったからといって2度目は発症しないという保証はなく、安心できないということです」また、香港の男性のように初回と異なる型のウイルスに感染する可能性も注意しなくてはならない。「ウイルスの変異も影響する可能性があります。今のところ日本で発生しているのはヨーロッパ型の変異株なので、インフルエンザのAとBほどの違いはありません。同じウイルスなら2度目は軽症で済む可能性が高いですが、変異していると重症化する可能性もありえます」「女性自身」2020年9月15日号 掲載
2020年09月03日「死亡率が、かつては欧米より低いと称賛されていましたが、7月23日時点で、日本の100万人当たりの死亡率7.8%は東アジア諸国のなかで最悪になりつつあります。優等生国とされる台湾の27倍、中国の2.4倍、韓国の1.4倍と、差は広がるいっぽうです」危機感をこう露わにするのは、神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センターのユウ・ヘイキヨウ教授。日本の新型コロナウイルスの感染者数が危険水域に突入した。7月23日の感染者数は東京都の366人を筆頭に、愛知県や福岡県など各地で過去最多を更新。全国トータルでも981人と最多となり、勢いは増すばかり。NPO法人「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏はさらなる感染拡大を予想する。「感染者は今後も爆発的に増えていくでしょう。現在の東京のように、北京では6月に感染者が増加しました。北京は人口約2千万人のうち、すでに1千万人超にPCR検査をし、徹底した対応で抑え込みに成功しました。いっぽう、人口約1千400万人の東京で行われている検査数は、1日わずか4千件ですからね」空前絶後のパンデミックが間近に迫っているなか、政府は経済優先の姿勢を強めている。その中心を担う肝いりの政策が“GoToトラベルキャンペーン”だ。7月22日以降に国内旅行や出張でかかる費用を1人1泊あたり最大で2万円相当(日帰りは1万円)を国が補助する政策。コロナ禍で大打撃を受けた観光産業を潤す効果が期待され、実際、開始以降、京都や北海道など観光地は多くの人で賑わっている。しかし、問題点も山積みだ。「当初は8月上旬にスタートする予定でしたが、4連休に合わせる形で急きょ、7月22日に前倒し。また感染拡大を受けて、開始直前の16日に、東京都発着の旅行者を補助の対象外とすることが決定しました。しかし、旅の発着を東京以外にすることで適用されるといった抜け道もあり、感染者が全国各地に広がる可能性は大いにあります」(地方紙記者)こうした状況から、キャンペーン開始時期の適切さを問う声が相次ぐも、政府は予定どおり強行。その思惑について政治評論家の有馬晴海さんはこう語る。「連日、万単位で感染者を出している欧米よりも少ないことから、“日本は大丈夫だ”という安心感が政権の中で蔓延しています。また9月の解散総選挙も検討されているときに、政府から外出禁止や自粛を要請することはないでしょう。『自粛中なのに総選挙か』と、支持率低下につながりますからね。自由に旅行ができるときに総選挙を行い、安倍政権の延命を第一に考えているのでしょう」「女性自身」2020年8月11日号 掲載
2020年07月31日「もう“夜の街”だけと言える状況じゃありません。これだけ感染者が増えてくればもはや第2波が到来したと言ってもいいでしょう」第2波の到来を告げるのは、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長。新型コロナの感染拡大が止まらない。6月下旬から全国で急速に感染者数は増え、7月9日に200人台に突入。10日には東京で過去最多となる243人を記録し、収束どころか第1波越えの様相を呈してきた。感染症を専門とする、のぞみクリニックの筋野恵介院長は一部で叫ばれている「PCR検査数を増やしたから感染者も増えているだけ」といった声に警鐘を鳴らす。「緊急事態宣言下と絶対的に違うのが、現在は人の移動や飲食店などの自粛がされていないということ。多くの方がほぼ日常の生活に戻れば、感染のスピードも速くなるはずです。緊急事態宣言のときと同じスピード感で対処していては、気付いたときは拡大を止められない可能性も大いにあるでしょう」特に問題となっているのが、感染経路不明者の増加。7月9日の東京都の感染者224人中104人が経路不明だった。しかし、この状況下でも政府は10日から県またぎ観光を緩和するなど対策を講じる様子はない。そんななか、新たなる脅威が迫っている――。7月6日、世界中の科学者239人がWHOなどに対し、新型コロナウイルスに関する共同意見書を発表。ウイルスが飛沫より小さい粒子となって空中を漂い、2mをはるかに超える距離で感染する“空気感染”の可能性があると指摘し、翌日にはWHOも「可能性は否定できない」と返答したのだ。「専門家の間では『2m距離を取っていても感染を防ぎきれない』という意見もあります」(医療ジャーナリスト)科学者たちの言う“空気感染”について、飛沫感染との中間にあたる“エアロゾル感染”ではないかと指摘するのが感染症専門医で東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授だ。「これは飛沫より小さいウイルスを含んだエアロゾルが空気中を浮遊して感染させるというもの。条件によってはウイルスが5μm以下の小さく軽い水分の粒子に含まれて、空気中を数時間漂い、集団感染を起こすということはありえます。1月に中国・広州のレストランで離れたテーブルに座っていた3家族10人が感染した事例でも飛沫感染だけでは説明がつかないからです」このエアロゾル感染を大きく左右するのが、湿度だ。元WHO専門委員でハーバード大卒の医学博士・左門新先生は言う。「新型コロナウイルスは乾燥すると感染力を失いますが、人の肌から出る水蒸気や呼気にも水分は多く含まれているので、換気をしていない密閉空間では湿度が高まり、感染しやすくなります。そうした環境では、乾燥せずに感染力を保ったままウイルスは数十分も漂うことがあります」100人もの感染者を出した鹿児島県のショーパブで発生したクラスター感染も“空気感染”の可能性を完全には否定できないという。「3密によるクラスターも、主には会話による飛沫感染や接触感染でしょう。しかし、ほんの一部ではいわゆる“エアロゾル”感染があったかもしれません」(左門先生)「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載
2020年07月14日初の感染者が確認されてから半年を迎えるも、状況は悪化するばかりだ。6月下旬、WHOのテドロス事務局長は「最初の1カ月に報告されたのは1万人以下だったが、この1カ月は400万人近くにのぼった」と感染スピードが増していることを明かし、ついに総感染者数は1千万人を超えた。東京都の新規感染者も100人超えを連発し、いよいよ現実味を帯びてきた“第2波”の到来。緊急事態再宣言を求める声もあるものの、政治家たちは消極的だ。「小池都知事は感染者の多い“夜の街”への外出自粛を求めるばかりで、緊急事態宣言については否定的な姿勢を崩しません。また経済回復を急ぐ政府や各自治体も8月から実施予定の『Go Toキャンペーン』を推奨。そうした状況を受け、国民の危機感もゆるんでいるように見えます」(全国紙社会部記者)こうした現状を予言していたのが、政府の専門家会議のメンバーとして知られる北海道大学・西浦博教授だ。「西浦教授らの研究チームは6月初頭に、“流行前の行動を続けた場合、7月中に都内の感染者数が1日100人を超える”という試算を発表していました」(前出・全国紙社会部記者)それが現実のものとなるなか、さらに恐ろしいシミュレーションが公開された。統計学を専門とする千葉大学大学院・小林弦矢准教授とデータ分析会社・Nospareのチームが5月下旬に日本の感染状況を分析した論文を発表した。論文によると、4月の緊急事態宣言前の行動様式を100%とすると、宣言後の“外出自粛”や“リモートワーク”といった行動変容によって、拡大ペースが50~60%まで低減。緊急事態宣言には感染拡大を抑える効果があったという。問題は、この次だ。今後、行動パターンが宣言前の80%に戻った場合は、ゆるやかに感染者は増え続けるものの、’21年春以降には収束していくと予測。しかし、90%に戻った場合、拡大ペースが上がり、11月には約175万人もの感染者が発生すると試算。さらに、100%に戻った場合は、8月に約50万人が、10月には約350万人が感染する可能性があるというのだ。第1波を凌駕する試算となっている。この試算の実現性を、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長も否定しない。「規制を緩和して感染者が増えていない国はありません。アメリカでは今も1日で5万人が発症しています。日本も今のまま何もしなければ感染は増え続け、夏には50万人という数字はありえます」論文で試算された感染者予測には潜在感染者が含まれる。つまり、感染しても発症しない無症状の患者が日本でのパンデミックを左右するのだ。感染症を専門とするのぞみクリニックの筋野恵介院長は言う。「無症状の人が実際にどれぐらいいるかわかりませんが、かなりいるとは思います。7月2日の都内の感染者107人も、軽症者ばかりで重症者はいませんよね。やはり、無症状の人が気づかないうちに感染を拡大させてしまう可能性はあると思います」無自覚な感染拡大を防ぐうえで欠かせないのが、検査によって自身の状態を知ること。しかし、PCR検査は症状が現れなければ受けられないところがほとんどだ。そこで、注目を集めているのが過去の感染や、感染初期段階かどうかも判別できる抗体検査だ。感染の有無をはっきりさせるのに役立つと筋野先生は続ける。「濃厚接触者でありながら無症状でPCR検査を受けられない人でも、抗体検査で感染がわかって隔離できれば、人への感染を防げます。感染初期の場合、まだ人にうつす可能性もあるので、うちの病院では陽性の患者さんには最低5日の自宅待機をお願いしています」しかし、抗体の検出が可能になるのは感染してから約1週間後。抗体を持っていることがわかったときにはすでにほかの人にうつしている可能性もあり、決して万能ではない。「また抗体を持っていても、いつ消えるかわかりません。“抗体があるからマスクはいらない”といった考えはやめてください」(筋野先生)第1波では、世界から感染者の抑え込みに成功したと評価された日本。しかし、本当の正念場はここからのようだ――。「女性自身」2020年7月21日号 掲載
2020年07月10日「世界中で現在、第2波が広がっているわけです。日本はまだ、この程度で済んでいますが、今後、気持ちが緩むことでさらに広がって大変なことになると思います」そう語るのは、日本感染症学会の舘田一博理事長だ。東京では6月26日に54人、27日にも57人と増え続け緊急事態宣言解除後、最多の感染者が発生。24日の会見では、小池都知事が従来の“夜の街”での感染に加え「職場内クラスターがここのところ問題になっている」と警戒感を示した。「26日は、東京をあわせ全国で新たに105人の感染者が出ました。1日の感染者が100人を超えるのは5月9日以来48日ぶり。予断を許さない状況です」(全国紙記者)そんなさなか、西村経済再生大臣は24日、コロナ対策の専門家会議を「廃止する」と発表。野党は「政府がコロナのマネジメントをできていなかったことが明確だ」と批判し、与党からも「事前説明がない」などと疑問が呈された。「こうした報道に国民が不安を抱く現状にもかかわらず、政府は観光需要を喚起する『Go Toキャンペーン』を早ければ8月から開始すると発表。来年の東京五輪を是が非でも開催したいという政府の思惑が明らかに感じられます」(医療ジャーナリスト)国立病院機構三重病院の谷口清州臨床研究部長は言う。「感染症の専門家として言わせてもらうと、東京でどれだけ感染者が出たといっても、疑いのある症例から、何人検査して何人が陽性なのか、分母がないと実態がわかりません。今は検査のキャパシティも十分あると思いますし、診断キットも使えるので早期探知を進めないといけないと思います。そうしないと、また緊急事態宣言を出すことになり、いろいろな企業や店が倒れてしまいます。このまま今と同じことを続けていてはダメだと思います」前出の舘田理事長も言う。「前回の緊急事態宣言のときに8割減と言っていたのは『人流×濃厚接触を8割減にする』こと。人流とは人の動きで、濃厚接触とは、マスクなしで1m以内で15分以上会話すること。そういう環境が感染を広げるわけです。移動そのものが悪いわけではないし、リスクを理解して注意がきちんとできていればいいんです。メリハリをつけた安全対策をとれるよう生活を変えなければいけないと思います」目下、感染増加が飛びぬけている東京に焦点を絞ると、感染拡大防止策の“タイミングの悪さ”を挙げるのは、西武学園医学技術専門学校・東京校の中原英臣校長だ。「結論から言うと、数字を見てわかるように、東京のコロナ対策は失敗しているわけですよ。東京、そして都民にとって不幸なことが2つあって、1つ目はこの年に五輪があったこと。五輪をやることを優先したあまり、対策が遅れた。2つ目は、この時期に東京都知事選挙があること。緊急事態宣言でみんなマスクして収まりかけたと思ったら、今度は選挙だということで、小池都知事は東京アラートを引っ込めて、自粛を全解除してしまった。とにかく、選挙が終わったら、もう一度しっかりコロナ対策をやってほしいですね。それをやらないと、すぐ首都圏全体に影響が出る可能性があります」そして、政府の対応の遅さに憤るのは、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長だ。「検査数だけでなく、ウイルスのタイプの確認も含めて、日本は対応が遅いんです。検査を推し進めていかないと。今後は日本でも強毒性に変異しているウイルスが蔓延してしまう危険性があります」首都の感染拡大を機に、強毒化した新型コロナウイルスが、日本中に蔓延するリスクさえあるというのだ――。これ以上、状況を悪化させないために政府はどんな対策をとるべきなのか。現在、PCRセンターにも勤務する感染症専門医で、のぞみクリニックの筋野恵介院長はこう語る。「私がいるPCRセンターは1日2時間だけ開いていて、20人ぐらい検査に来ています。来るのは無症状の人が多く、そういう人は無自覚に出歩いているという印象です。結果が出るまで待機すべきなのに、実際には『これから出かける』なんて人も多い。店・会社を営業するため、陽性者が出ても詳細を伏せ営業を続けることがある。本来は、強制的に、一斉に全員を検査すべきだったと思います。実は今、PCR検査にかなり余裕があるので、希望すれば誰でも検査できます」少し前までは、検査してもらえずに、病院をたらい回しにされたといった悲鳴が起きていたが、今は病院で「微熱があるからPCR検査をしてほしい」などと言えば、すぐに検査してもらえるという。「1回どこかで感染者が出たら、その周辺を国が強制的にしっかり検査できるようにして、感染が拡大しないようにする。今ぐらいの感染者数なら可能ですし、すべきです。これが経済を止めない中でできる、いちばんいい対策だと思います」さらに全国各所での水際対策も、もっと徹底すべきだと指摘する。「出入国制限に関してはタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国を6月中に緩和する方向で調整を始めましたね。これも怖いです。北京や香港は緩和後に感染が急拡大しました。8月には観光もOKとなると、無症状の人たちから感染が全国に拡大していく可能性も。夏休みはやはり不安です。各自治体が権限を持って対策できるようにすべきです。観光地の入口で水際対策をしてほしい。たとえば、関西国際空港を利用するなら、1週間以内のPCR検査陰性の証明書が必要など、対策をすれば全国への感染拡大は防げるのではないでしょうか」生活していくには日々、働かざるをえない。飲食店、観光業、サービス業もみんな必死だ。緊急事態宣言が再び出されることになれば、経済は深刻な状況に陥る。われわれの自衛に責任転嫁することなく、政府の早急な感染対策が求められる――。「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月02日「世間では第2波と騒がれていますが、現状でいえばまだ第1波が続いているという認識です。これから第2波到来となれば、ウイルスが“強毒化”していく可能性は十分あります」と警鐘を鳴らすのは、NPO法人「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏だ。全国で緊急事態宣言が解除されたものの、東京都や北九州市などでは早くも感染者が増加中。本格的な第2波到来への危機感が高まっている。そんななかで危惧されているのが、新型コロナウイルスの“強毒化”だというのだ。元WHO専門委員でハーバード大学院卒の医学博士・左門新氏もこう語る。「新型コロナウイルスは現時点で大まかにいうと、『武漢型』『欧州型』『欧米型』の3つに分けられています。そのなかで『武漢型』は死亡率が低いことから、“ウイルスの特性が違うのではないか”ともいわれています。そして中国の研究者がサルの細胞を使って実験したところ、増殖の度合いが型によって最大で270倍も異なっていたそうです。増殖力の高いウイルスに感染させた細胞は死亡しており、“型によって毒性が違う”ということが初めて実験で確認されました。あくまで動物実験なので、人間にそのまま適用されるとはいえません。ただ人間も同様の結果が出るとすれば、型によって重症化する可能性が大きく変わってくることになります。コロナウイルスには風邪のような軽い症状のものもあれば、はるかに毒性の強いものもあります。その変異は、ランダムです。人に感染しないものになる可能性もありますし、死亡率35%となったMERSのようなウイルスに変異することもありえるでしょう」発展途上国の感染症対策に取り組んできたグローバルファンドの國井修医師によると、「ウイルスは15日に一度は変異するともいわれている」とのこと。それだけ変異を繰り返せば、さらに強毒化したウイルスが出てくる可能性も否定はできないだろう。また北里大学北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授は、次のように指摘する。「当初は高温多湿な季節になれば、自然と収束するのではといわれていました。しかし結果的に今回の新型コロナウイルスはたちが悪く、しぶといイメージです。実際、イランでは第2波のほうが感染状況もひどくなっているといいます。ウイルスはすみやすい環境を求めて、変化していきます。新型コロナウイルスも、当初の形から変異しているようです。これからどう変異していくかは、わかりません。ただ間違いなく、“人に感染しやすくなっている”とはいえると思います」強毒化だけでなく、感染しやすくもなっていく新型コロナウイルス。そのため、さらなる死者数の増加が懸念されている。「感染者が減少している国もあるいっぽうで、南米やアフリカを中心に感染者や死亡者が急増している国も多いです。また、世界では毎日10万人以上の新たな感染者が報告されています。もちろん各国が何らかの移動制限をしているものの、人の流れを完全に止めることはできません。日本にウイルスが入ってくる可能性はどこにでもあり、そこからクラスター化することもありえるのです」(國井医師)前出の左門氏も「感染拡大を防ぐのは難しい」という。「MERSやSARSが流行したときは、発症したらすぐに重い症状が現れていました。そのため見つけやすく、隔離措置も取りやすかった。結果、早い段階で収束させることに成功しました。いっぽう、新型コロナウイルスは診断がつくまでに時間がかかります。また発症前の時点ですでに感染させる力があります。そのため、封じ込めるのが難しいのです。新規感染者ゼロというのは、実際に感染した人がいないという状態ではありません。“実は感染しているけど症状がない人”が多数いて、彼らがキャリアとなって感染を広げていく。これが、まさに北九州市で起きたことです」ではいったい、どうすればいいのだろうか。國井氏は、今後についてこう語る。「前提として、経済を回すことと公衆衛生対策のバランスは重要です。ハイリスクの行動は禁止して、ローリスクのものについてはすべてを制限しない。そんな柔軟性ある対応が必要だと思います。そのうえで、重症化する人については“いかに早いタイミングで加療できるか”が重要です。各国の失敗例や成功例を踏まえ、今のうちから第2波への準備を整えておくべきでしょう」新型コロナウイルスとの闘いは、次のステージへと入っている――。「女性自身」2020年6月23・30日号 掲載
2020年06月16日ウイルスとの闘いに希望の光が差し込むニュースが伝えられた。5月21日、イギリスの製薬会社・アストラゼネカ社がオックスフォード大学と共同で開発を進めている新型コロナウイルス向けワクチンの供給を早ければ今年9月から開始すると発表したのだ。「アストラゼネカはすでに今年から来年にかけて10億回分のワクチン生産能力を確保しています。そのうちの3千万回分を9月にも英国内で供給開始する見込みのようです」(医療ジャーナリスト)そこで気になるのが、この「世界初ワクチン」を日本国内でいつ接種できるのか、ということだ。同社の日本法人に確認すると、次の回答が寄せられた。「イギリスで今年の夏には治験の後期段階に入る方向だと聞いています。現時点でいつ日本に入ってくるかは全くわからない状況です」日本への流通に最大の障壁となるのが、世界で最も多くの感染者を出しているアメリカだ。「アメリカの保健福祉省はアストラゼネカ社に最大12億ドルの資金提供を行い、同社から3億回分のワクチンを確保することが明らかとなっています」(前出・医療ジャーナリスト)わずかな希望に懸けたいところだが、NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は、日本国内での流通に懐疑的だ。「ワクチンが日本に入ってくる可能性は低いと思います。ワクチンは複数社で生産しない限り、供給が追いつきません。日本で認可されてもアメリカが優先されますから、数もほとんどないでしょう」さらに、ワクチンの効力についても疑問の声が。北里大学生命科学研究所の中山哲夫特任教授はこう語る。「アストラゼネカ社のワクチンに関しては未知のものという認識です。研究中のすべてのワクチンはまだ臨床の第一段階ですし、副作用の問題もあるので認証は慎重にすべきだと思います。日本に来る可能性も見えない以上、国策として日本国内での製造を目指さなければなりません」5月上旬、安倍晋三首相は来年7月開催予定の東京五輪に向け、ワクチン開発を急ピッチで進めていると明かしていたが……。「大阪大学と創薬ベンチャー『アンジェス』がウイルスの遺伝情報を使った『DNAワクチン』の開発を進めているそうですが、開発できても、国民が接種できるまでには時間がかかります。IOCによると五輪は一度しか延期しないそうですが、それまでにワクチン開発を間に合わせるのはかなり厳しいでしょう」(上さん)死者数が世界でも突出して低い日本。今日も“奇跡”を信じたいが……。「女性自身」2020年6月9日号 掲載
2020年05月28日中国での発生から5カ月が経過したものの、まだまだ新型コロナウイルスの正体はハッキリとわかってはいない。高熱など一般的に報じられている症状がない、いわゆる無症状感染者も多い。抗体検査を受け、陽性だった30代の男性はこう明かす。「風邪のような症状は一切ありませんでした。ただ、舌が痛い、舌の周りがピリピリするといった異変はありました。1週間で治りましたが、熱も出なかったのに感染していたので驚きました」NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、症状の多様さについてこう語る。「断定的なことは言えませんが、コロナウイルスが変異しており、ウイルスの型によって症状が異なる可能性もあります」前出の筋野院長が、特に注意すべきポイントを教えてくれた。「基礎疾患のある人だと、発症から2日目くらいで急に悪化することもありますが、基礎疾患のない人が10日目前後に急変するケースがあるのです」実はこの現象は、最近の米紙『ワシントン・ポスト』でも、《発症10日前後に突然重篤化「2週目クラッシュ」の謎》として報じられている。筋野院長は続ける。「重篤化の理由は正直、わかりませんが、いちばん多く見られるのは、急に肺炎が進むというケース。初期の診断では肺炎の症状はなかったのに、1~2日で肺炎が急激に進行していることがあります。たとえば、最初にレントゲンやCTを撮った際は、左肺の下側にわずかな影があっただけなのに、翌日には両肺に広がっていたということがあったんです。これは細菌性の肺炎ではあまりないこと。普通は片肺だけなのにコロナは両肺に一挙に広がってしまうから、いきなり悪化して重篤化してしまうことがあるんです」熱の出方にも特徴があるという。「最初から高熱が出る方もいますが、熱が一度下がって落ち着いた後、再び上がる人もいます。最初に38度で、3~4日で37度台に下がり、6~7日目に39度台まで上がった例が。これも理由はわかっていませんが、2度目の発熱のほうが高い傾向があります」米国では川崎病に似た症状も見られ、血栓も症状に挙げられている。重篤になると退院するまで長期間かかると嘆くのは、コロナ感染者を受け入れる関西地方の大学病院の現役看護師だ。「1~2カ月は間違いなく入院することになります。人工呼吸器をつけた方は、肺に多大なる負担がかかってしまいますから、PCR検査が陰性になってもしばらく呼吸器を外せないことも多いです。重篤患者さんは、やはり60歳以上の高齢者が多いですね。女性よりも男性が多く、糖尿病などの既往歴のある方が、どうしても重篤化しやすいです。とはいえ、何も疾患がない方でもいきなり重篤化するのが、コロナの怖いところです。最近では、既往歴のない20代の女性が重篤化したケースがありました。人工呼吸器をつけて経過が良好となり、PCR検査も2回陰性で一般病棟へ移ったのですが、直後に容体が急変。再びICUに戻ってしまいました。陰性になっても症状が悪化することもある。改めてコロナの怖さを感じています」前出の筋野院長は、コロナに感染した軽症者で自宅療養する人に、必ずこう伝えているという。「『最初の10日目くらいまでは特に注意してください』と念を押しています。10日目以降はそう悪化しないので、『それまで頑張りましょう』と励ましているんです」前出の上理事長も、解除後こそ警戒すべきだと強調する。「第2波を防ぐことは難しいでしょうね。いままでのように継続して個人個人が気をつける生活は大切です。検査数も徹底的に増やすことが今後、重要だと思います」“コロナ前の日常”に戻りたい気持ちは皆同じだが、緩み切って感染爆発を引き起こさないよう、今こそ細心の注意を払いたい。「女性自身」2020年6月2日号 掲載
2020年05月21日1月16日の「初感染者」発表から、100日が経った新型コロナウイルスとの闘い。はたして、指揮官を務める安倍晋三首相の判断は適切だったのか?安倍首相の「コロナ対策」を識者が斬るーー。【一斉休校】見えた生活感覚の欠如2月27日、安倍首相は突如として、全国の小中高校などを翌週の3月2日から一斉休校するように要請した。教育現場や保護者は寝耳に水だった。「2人の子どもを持つ働く女性」である、タレント・エッセイストの小島慶子さんはこう憤る。「教育や保育の専門家に聞けば『学童保育や保育園の預かりをどうするのか?』という問題には気づくことができたはずなんです。後手に回ったのは、安倍首相には生活感覚がなく、『子どもが学校に行っているあいだに働いている母親の事情』などに、思い至らなかったんでしょう」さらに、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんはこう指摘する。「検査データが少ないために、比較対象がありません。休校に効果があったのかどうかを検証することができない。だから、いつ学校を再開するのかも、曖昧な基準になっているのだと思います」実際、休校こそ一斉に行われたものの、再開の判断は各自治体によってバラバラだ。コロナとの闘いが始まって100日。識者の評価は辛辣だが、闘いの終わりはまだまだ見えていない。これからの100日も厳しく見守ろう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月05日1月16日の「初感染者」発表から、100日が経った新型コロナウイルスとの闘い。はたして、指揮官を務める安倍晋三首相の判断は適切だったのか?安倍首相の「コロナ対策」を識者が斬るーー。【東京五輪】開催への執着が対応を遅らせた2月17日、厚生労働省は「風邪のような症状、37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合」など、PCR検査を受けられる基準を定めたが、これは日本独自のもの。急な発熱から4日を待たず容体が急変した例も報告されている。「あれほどPCR検査を行わなかったのは、東京五輪を控えていたために、患者数を抑制したかったのではないのかと、疑わざるをえません」そう語るのは、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんだ。3月24日に五輪の延期が決まると、翌日の25日に小池百合子知事は緊急会見を開き、東京都で初めて“外出自粛要請”を出した。延期決定後から日本のコロナ対策が一気に加速したようにも見える。4月に入ったころから、ようやく政府は方針を転換。4月6日、安倍首相がPCR検査の可能数を2万件に増やすこと、人工呼吸器を1万5,000台以上、病床は5万床を確保する考えも示す。五輪の開催日は’21年7月23日に決まったが、上さんはこの日程に不安を感じている。「終息は、’22年までかかると見る専門家もいます。まだ先が見えていない状況なのです」(上さん)開催を急いだのにはこんな見方も。政治評論家の有馬晴海さんはこう指摘する。「安倍首相の自民党の総裁任期は’21年9月ですので、安倍首相としては、『それ以前の、できるだけ早い時期』にオリンピックを開催したかったはずです」コロナとの闘いが始まって100日。識者の評価は辛辣だが、闘いの終わりはまだまだ見えていない。これからの100日も厳しく見守ろう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月05日1月16日の「初感染者」発表から、100日が経った新型コロナウイルスとの闘い。はたして、指揮官を務める安倍晋三首相の判断は適切だったのか?安倍首相の「コロナ対策」を識者が斬るーー。【検査の遅れ】ウイルス拡散後に方針を転換「そもそも“37.5度以上の発熱が4日以上続く”という検査基準は論外だと感じています。1月下旬の時点で、中国で軽い風邪だと思い外出した人が、周囲に拡散させている可能性が報告されていたのですから。重い症例しかPCR検査をせず、結果“やはり新型コロナでした”という確認では、検査をしていないことと同じ。大事なのは、患者を見つけ、隔離することでした」そう語るのは、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんだ。2月17日、厚生労働省は検査を受けられる基準を定めたが、これは日本独自のもの。急な発熱から4日を待たず容体が急変した例も報告されている。4月に入ったころから、ようやく政府は方針を転換。4月6日、安倍首相がPCR検査の可能数を2万件に増やすこと、人工呼吸器を1万5,000台以上、病床は5万床を確保する考えも示し、すでに諸外国で行われている「ドライブスルー検査」や「ウオークスルー検査」も本格的に導入する見込みだ。「手軽に、院内感染のリスクのある病院に行かずにできるので、非常に理にかなった検査です。検査の遅れから、日本は感染のピーク前なのか、ピークを過ぎたのか、判定できない。検査なしには収束の見通しも立てることはできないのです」(上さん)コロナとの闘いが始まって100日。識者の評価は辛辣だが、闘いの終わりはまだまだ見えていない。これからの100日も厳しく見守ろう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月04日「専門家の提言をもらいながら、延ばすのかどうか判断する」4月17日、会見で緊急事態宣言の延長の可能性について質問を受けた安倍晋三首相は、そう答えた。4月7日に7都府県に向けて発令された緊急事態宣言だが、16日には全都道府県へと拡大。実はさらに時期の延長まで検討されているという。「実施期間は5月6日までとなっていますが、感染者数も予想より減少せず、延長するかどうかの議論も始まるそうです。安倍首相も発令前から、『専門家の皆さまが収束にいたっていないと判断されれば、延ばしていくことになる』と、発言していました。延長期間については“最低2週間”という意見もあるそうです……」(全国紙・政治部記者)専門家たちの判断に委ねられるわけだが、医療関係者のなかで、“5月6日までに感染拡大が収束する”と判断している者はほとんどいないというのが実情だ。医療ジャーナリストは言う。「アメリカのハーバード大学の研究チームは、新型コロナウイルスの流行を収束させるためには外出自粛などの措置を’22年まで断続的に継続する必要があるという論文を発表しました。また京都大学の山中伸弥教授も、ウイルスへの対応が求められる期間について、“1年くらいになっても想定の範囲内”と、語っています」NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長もこう語る。「今年はインフルエンザでの死亡者が激増していますが、実はコロナ感染者だった患者さんも大勢含まれていたと思われます。4月17日に発表された東京都の感染者は200人を超えました。このままだと緊急事態宣言を5月6日で解除するのは難しいでしょうね」ウイルス克服の鍵となるのはワクチンの開発であり、各国の研究者たちが全力で挑んでいる。東大病院で放射線科医を務めている前田恵理子医師はこう語る。「2年程度でワクチンの開発に成功するだろうと考えています。それから1年で安全性を確かめても、さらに量産化までは3年かかります。それでも驚異的なスピードですが、日本でいえば1億3千万人が安全に接種するためには、かなりの時間が必要です。コロナを収束させるためには“10年仕事”になると予測しています」だが来年7月に東京オリンピックを開催するとなると、それでは間に合わない。総合内科を専門とする鈴木医院副院長の木原幹洋医師は言う。「来年6月までをワクチンの接種期間とすると、年内にはワクチンを実用化させる必要があります。安倍首相にはその見込みがあったからこそ、来年7月への延期を決めたのではないでしょうか。これ以上感染を拡大させないために必要なのは、ウイルス検査数を増やして誰が感染しているのかを明確にすること、そして感染者の迅速な隔離です。新たな感染者を増やさないために、現在の外出自粛を2~3カ月は続けるのではないでしょうか」すると緊急事態宣言の解除は、6月から7月ごろということになるのだろうか。前出の医療ジャーナリストも次のように語る。「中国・武漢では約2カ月半も都市封鎖を実施しました。アメリカやヨーロッパ各国も、日本より早い時期に、厳しい外出制限措置を講じていますが、措置の期間の延長を重ねています。もちろん日本は状況も条件も異なります。しかし専門家からも“緊急事態宣言を欧米並みに2カ月続けるべき”といった意見も上がってくることでしょう。感染者数がある程度まで減らないとすれば、延長を2~3度重ね、解除が6月にずれ込む可能性も濃厚ですね」「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月23日外出自粛期間が続き、すでに人々の間では“コロナ疲れ”“コロナうつ”といった言葉も広まっている。コロナ禍長期化は今後、日本にどのような影響を及ぼすのだろうか?NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は言う。「おそらく5月の連休明け以降も、緊急事態宣言は継続されると思います。さらにハーバード大学の研究グループが指摘するように’22年まで、外出自粛要請が断続的に続くのではないでしょうか。感染をおそれて病院での診療を敬遠する方も増えています。たとえば私がチームでやっているナビタスクリニック・グループも、3月は昨年に比べて患者数が4割減です。今後は倒産する医療機関も増えていくと思います」病院ですら倒産すると、上理事長が指摘するように、経済の専門家たちによれば、コロナ禍長期化の日本経済への打撃はかなり深刻なものになるという。「景気ウォッチャー調査で特に影響が顕著となる順番としては、(1)旅行・交通関連、(2)百貨店、(3)飲食関連、(4)レジャー施設、となります。旅行業界でいえば3月に日本を訪れた外国人旅行者数は、前年同月と比べて93%減です。また’08年のリーマン・ショックの際は1年間で失業者は113万人増加しました。当時に比べて非正規雇用者が増えていますので、今回の失業者数はそれを上回る可能性があります。リーマンのときに最も大きな影響を受けたのは大企業製造業でした。しかし今回は中小のサービス業が影響を受けていますので、倒産件数もリーマン時を上回る増加になるかもしれません」(第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣さん)また経済評論家・岩崎博充さんは、株価暴落の可能性を指摘する。「東芝は7万6千人の従業員を対象にして、4月20日から5月6日まで国内の全拠点を休業すると発表しました。しかし2週間程度ならともかく、そういった状態が緊急事態宣言の延長により長期化するとどうなるでしょうか?大企業だから内部留保があるとはいえ、2カ月も続けば、それを相当取り崩してしまうことになるでしょう。それ以降は、株券や債券を現金化し、社員の給料に充てていかなくてはいけません。内部留保の取り崩しは、大なり小なりほかの企業も抱えている問題で、今後は株や債券の暴落が始まります。私の予想では7月ごろからその動きが目立ってくると思います」さらにコロナ禍長期化は私たちの日常生活も直撃するという。各国で続けられている移動制限が農業従事者の移動や食料品の流通も妨げ、生産や流通にも影響を及ぼす可能性があるというのだ。4月1日には世界保健機関や世界貿易機関のトップたちが世界的な食料不足が発生する恐れがあるとも、警告している。資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんはこう語る。「国内の食料を確保するため、ロシアやカザフスタンのように、すでに輸出規制に踏み切っている国も出ています。たとえば日本は小麦の9割を輸入に頼っており、輸入元はアメリカ・カナダ・オーストラリアなどです。どの国もコロナ問題を抱えており、今後、輸出規制を採択する可能性も出てきます。するとこれらの国から思うように輸入できなくなり、日本国内での食料品の不足や値上がりも目立ってくることになるのです」すでに日本の食料輸入量には陰りも見え始めているという。「たとえば小麦やチーズ、それにアジやサバ、タコといった一部の水産物の輸入量が昨年の同時期に比べて、かなり減少しています。すべてがコロナの影響というわけではないかもしれませんが、各国でサプライチェーン(製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、配送、販売、消費といった一連の流れ)の混乱が発生しているようです」(食品問題評論家・垣田達哉さん)そうしたサプライチェーンの混乱が生じているのは食料品ばかりではない。未来調達研究所取締役で調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんは衣料品について指摘する。「日本のアパレル業界も大きな影響を受けています。ある程度の高級ブランドであれば、日本でデザインし、イタリアなどヨーロッパで高品質の布地を調達、それを人件費が安いベトナムやインドネシアなどの東南アジアで縫製するというグローバルなサプライチェーンがあるのです。それがイタリアから高品質の布地が入ってこなくなったり、さらに東南アジアでも工場が閉鎖されたりと、各地でサプライチェーンが寸断されようとしています」1人の油断が、地域そして国内での新型コロナウイルス拡大感染を許し、ひいては国際的に悪影響を……。コロナ収束のめどがたち、緊急事態宣言が1日も早く解除されるためにも、一人一人の自覚が求められている。「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月23日4月16日、安倍晋三首相(65)は緊急事態宣言の対象地域をこれまでの7都府県から全国に拡大すると表明。「最低7割、極力8割の接触削減を実現しなければならない」とも強調したが、日常生活を送るうえで、どうしても必要となるのがスーパーへの買い物だ。現在まで日本全国20カ所以上のスーパーの勤務者に、新型コロナウイルスの感染が明らかになっている。すでに米国ではスーパー内での感染リスクは大きな社会問題だ。「感染による死者が2万人を超えた米国では、40州以上で外出禁止令が出ており、スーパーに多大なる影響が及んでいます。大手スーパーのウォルマートではシカゴ市内の店舗で働く47歳の男性と51歳の女性が亡くなるなど、他社も含め4人の死者が発生しています。同じく大手スーパーのトレーダー・ジョーズでも20店舗以上で従業員に感染者が相次いで出て、一時休業となりました。同社はほかのスーパーと比べて店舗面積が狭いため、感染リスクの上がる“3密”度が高まった事例でしょう。ロサンゼルス市では10日から従業員と客のマスク装着を義務づけました」(社会部記者)実際、スーパーでの買い物についてYouTubeで注意喚起している医師も。ミシガン州のランドラピーツ病院に勤めるジェフリー医師が3月末に上げた動画は、約2,600万回再生されている。おもな呼びかけは下記のとおりだ。・買い物は計画的に。滞在時間、接触時間は最低限に・パッケージを殺菌剤で拭く・購入物を不用意に室内に持ち込まない・中身は素手で触らない・野菜や果物は水に浸し、手を洗うように20秒以上洗う・布の買い物袋はリスクがある。買い物後はウイルスが付着しているとみなし、屋外に出す米国のスーパーでの買い物時の緊迫が伝わってくる。もし今後、日本のスーパーでクラスターが発生したら――。NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、こう懸念する。「感染者が増えると院内感染が増えます。いまの日本で増えている死者は結果的に院内感染なんです。スーパーなど人の集まる場所はクラスター化する恐れがあるので、これ以上、感染者を増やさないように注意する必要があります」日本のスーパーで実際、感染を防ぐためにはどうすればよいのか。名古屋市衛生研究所微生物部の柴田伸一郎部長は言う。「感染爆発がまだ起きていない日本では、米国ほど神経質にならなくてもよいかとは思います。ただ、買い物カゴの把手、カートの押し手、袋詰めする台、総菜を取るトングなど、人が触るものにはウイルスが付着している可能性はあります。また、陳列されている商品のパックも可能性があります。野菜などは仮にウイルスが付着していても皮をむいたり、洗って使いますが、パックの表面に付着しているウイルスは見落としがちだという指摘がされています。袋詰めする台に置いてある指を湿らせるスポンジやふきんも、コロナに限らず細菌が繁殖しやすい。これらに触ったら、とにかく帰るまで顔に触らず、帰宅後にはせっけんでよく手を洗ってください。カゴやカートを使う場合は除菌シートやウエットティッシュで持ち手を拭くだけでもいいでしょう」いざ買い物を終え、レジで会計する際も、こんな注意点が。「現金を使わず、電子マネーやクレジットカードなどで支払うようにすれば人との接触はなくなります。レジに並ぶときはなるべく無言で距離をあけることが大事です」最後に、買い物時の大事な心構えを前出・柴田部長はこう語る。「3密を作らないためにも2メートルは距離を取り、混雑する曜日、時間をさけて来店し、密集してレジに並ぶのはやめましょう。子供と一緒の場合は、父親と子供は車の中で待っているとか、売場に行く人数は極力、減らしてください。そして、週1回まとめ買いするなど、買い物の回数を減らすこと。事前に買い物リストを作れば、効率的に店内を回って滞在時間を減らすことができるでしょう」「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月22日「追跡調査ができない感染経路不明の感染者が急増している現状は、明らかに一段階上がったことを意味しており、このままでは新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大の可能性も。それは、イタリアのように医療崩壊をいつ起こしてもおかしくはないのです」そう語るのは、『新型コロナウイルスの真実』(KKベスト新書)の著書がある神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎医師。今月7日に緊急事態宣言が7都府県に発令されたが、新型コロナウイルスの猛威は止まらない。10日、東京都の小池百合子知事は映画館やパチンコ店など幅広い業種に対して休業要請を実施するなど、感染拡大を抑え込もうとしているが、医療現場では「医療崩壊」を懸念する声が次々と上がっている。東京都医師会の角田徹副会長がこう語る。「感染者が爆発的に増えると、今の医療のキャパシティを超えてしまう医療崩壊が心配です。たとえば交通事故に遭った救急患者を受け入れられる病院がない事態も。遠くまで搬送されているうちに状態が悪化することも起きると考えられるのです」医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、さらに厳しい医療現場の実情を伝えてくれた。「新型コロナの感染者を受け入れる感染症指定病院はどこもすでにパンク状態で重症患者以外は入院を拒否しているケースもあります」それを裏付ける証言をするのは、本誌前号で「インフルエンザの30倍苦しい」と新型コロナウイルスの症状を語った感染者でコンサルティング会社「Globality」CEOの渡辺一誠さん(40)。先月22日に新型コロナウイルスにともなう肺炎を発症し、27日に入院した渡辺さんは4月10日に退院。しかしその実態は――。「まだ陽性反応がかなり強いのですが、病床を空けるために退院することになりました。体調はだいぶよくなり、咳もほとんどありませんが退院を手放しで喜べません。このまま入院していることも考えましたが、病床数の不足を考えると自宅待機するべきだと思い、しぶしぶ大量の荷物をもって歩いて帰ることにしました」医療機関での院内感染も確実に増えていている。「とくに感染者が増え続けている都内の指定病院にはクラスターによる院内感染も増え、医療崩壊状態になっているといっても過言ではありません」(前出・上医師)日本全国でも、コロナ感染者が複数発生した病院が多数出ている。前出の角田副会長も言う。「都内の病院で院内感染がいくつか出ているのは事実です。特に今後、地域医療の最終的な中心となる基幹病院で大規模な院内感染が起きると、病院を閉鎖しなければならなくなり、その地域にとっては危機的状況になります。周辺の大病院に患者さんを転院させざるをえなくなり、ほかの病院にも大きな負担をかけてしまうことが心配という声も聞いています」なぜ予防対策を施しているはずの病院で院内感染が広がるのか?ウイルス感染症が専門の順天堂大学病院・総合診療科の内藤俊夫教授は率直に打ち明ける。「たとえば、肺炎の症状を訴えた患者で新型コロナだった場合はすぐに対策がとれますが、別の病気の患者が新型コロナだった場合は誰にもわかりません。特にこの病気は症状初期では風邪と似ていたり、無症状だったりします。それゆえ、いくら細心の注意を払ったとしても病院がクラスター化してしまう恐れがあるのです」「女性自身」2020年4月28日号 掲載
2020年04月15日新国立競技場で5月15、16日の2日間にわたって計16万人を動員予定の嵐のライブ『アラフェス』。新型コロナウイルス拡大にともなうスポーツ観戦やイベントの大規模な自粛が未だ続くなか、開催の可否を占う鍵となるイベントがあるという。「5月とはいえ、数万人規模のライブ開催に対して、一部から否定的な意見が出ているのも事実です。そんな状況下で今、注視されているのが、5万人収容の東京ドームで4月4日と5日に開催されるTHE YELLOW MONKEY公演。同会場では3月末まで全公演が中止、および延期されていますが、イエモンは“日本のエンタメ業界のためにも、俺たちが先陣を切る”覚悟を持っているといわれています」(音楽関係者)万が一、イエモンの東京ドーム公演が延期・中止されたとしても、新国立競技場はイベント会場として比較的条件がよいと語るのは、自治体や企業の危機管理に詳しい日本マネジメント総合研究所の戸村智憲理事長だ。「密閉されたライブハウス等とは異なり、新国立競技場は屋外施設。屋根に覆われている部分もあるとはいえ、風が抜ける構造で換気もしっかり行われますから集団感染リスクは下がると考えられます」主催者側だけでなく、観客の意識も大事だと訴えるのは、内科医で医療ガバナンス研究所の上昌広理事長だ。「熱のある人、風邪の症状がある人はイベントに来ないよう徹底することがいちばん。だから、嵐のメンバーから事前にファンに呼びかけることも大事。ファンとメンバーが一体となり『コロナから参加者みんなを守ろう』という強い意識を共有することに尽きます」開催にあたり入場前の手洗いの徹底、サーモチェック、消毒用アルコールの設置も効果的だという。演出を担当する松本潤(36)は連日、事務所の関連施設にこもり、打ち合わせを重ねているという。「歌う曲目はファンからの投票で決める予定です。去年発売した嵐のベストアルバムは330万枚と’19年のセールス世界一を記録しました。2日間でのべ16万人に直接感謝を伝えられる“二度とない晴れ舞台”に臨む準備に余念はありません」(イベント関係者)メンバーもファンも待ち望む開催に向け、前出・戸村さんは最後にこう呼びかける。「観客のマスク着用の徹底に加え、競技場内だけでなく、最寄り駅での感染対策も必要になります。会場内への出入りも、座席ブロックごとに時間差をつけて行ったほうがいいでしょう。憂いに沈んだ状態で長期間家に閉じこもることは精神的によくない。計16万人のファンには嵐のライブ体験こそ免疫を高める“心の栄養剤”なのです。感染症対策の知見と実践度を高める場として堂々と開催していただきたいです」“日本の活力”が、嵐の手でよみがえることを願うばかりだ――。「女性自身」2020年4月7日号 掲載
2020年03月26日新型コロナウイルスに感染していても、若くて元気な人であれば、風邪のような症状のみで済むことも多いという。だが、高齢者、なかでも持病のある人は重症化しやすく死に至るケースもある。WHOが発表した致死率は2%だ。「医療設備の整った日本での致死率は、1%を切ると思います。若い世代は過度に心配することはありませんが、高齢者に感染させないように、風邪のような症状が少しでも出たら、人との接触を避け、自宅で仕事をすること。一方、高齢の方は、風邪のような症状のある人と接触しない、多くの人が集う場所にいかないように注意した方がいいでしょう」そう語るのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広先生だ。すでに満員電車の危険性は広く指摘されているが、ほかにも感染リスクが高い場所は高い場所はあるという。・カラオケ店:密室で大きく口を開けて唾を掛け合うようなもの。前のグループに感染者がいて清掃がしっかりとなされて場合、ウイルスが残っている可能性もある。・スポーツ観戦:多くの人が密着して、大きな声援を送る。当然、唾も飛ぶ。世界中から人が集う東京五輪は特に危険。・老人ホーム:ここは自分が感染するリスクよりも、他者に感染させた場合のリスクが高い場所。抵抗力の弱い高齢者の場合、感染が死につながる。ウイルスが流行している間は、極力、お見舞いは避けた方がいいかもしれない。・病院:感染症を持った患者がくるため、当然リスクがある。すぐに病院に行く必要がなければ、無理して行くことはない。だが、かといって部屋に閉じこもるのも考えものだという。「高齢者で怖いのは、感染ばかりでなく、不安のためにいつまでも外出できないこと。東日本大震災のときも、若い人は遠隔地へ避難しましたが、高齢者は独居状態で家の中に引きこもり、高血圧や糖尿病が顕著に悪化しました」一刻も早い収束が待たれるが、いったいいつごろになるのか。「風邪やインフルエンザ同様に、冬に流行し、3月になって気温が上がってきたころから、収まり始めるのではないでしょうか。しかし東京オリンピックが行われる8月、南半球は冬。新型コロナウイルスが南半球の国で流行している可能性がある。8月に感染者が来日し、再び国内で流行することも想定しておくべきです」
2020年02月24日「日本にウイルスを上陸させない“水際対策”は早い段階で、破綻していた」そう指摘するのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広先生。新型コロナウイルスの存在が発覚した当初、空港では熱を感知するサーモグラフィという装置を使って感染の可能性がある人を見極めようとしていた。だが、最初に国内で感染が確認された中国人男性は1月6日に入国したとき、解熱剤を服用していたため、空港の検疫をパスしたのだ。「東大医科研の研究グループの調査では、’09年の新型インフルエンザの際には、空港検疫で8人の感染者を見つけた一方で、113人の感染者を見逃したという結果がでました。それほど、信頼できるものではないんです」今回の新型コロナウイルスに関しても、1月の段階で多くの感染者が日本に上陸していた可能性が高い。1月28日、武漢市から来たツアー客を乗せていた奈良県のバス運転手の感染が確認されたのを皮切りに、国内での感染例が続々と明らかになっている。上先生は早い段階から、“疑わしい人”と希望者全員の検査を行うべきだと主張してきた。感染者がクリニックに殺到したら、クリニックを舞台に感染が拡大するという懸念もあるが……。「検体採取キットを送り、患者から検査会社に郵送してもらえばいい。結果は、メールや郵送で伝えることができます。中国では実際に遠隔診断が行われています」だが、こうした提言には日本政府は耳を貸さず、誤った対応を繰り返してきた。その象徴といえるのが、2月19日に下船が認められるまで14日間にもわたって“隔離処置”されたクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号だ。上医師は早い段階から、“全員検査”をして下船させるべきだと主張してきたが、当初、政府は頑なに症状のある人の検査しかしなかった。「欧米などクルーズ船が多く運航している地域では、限られた空間に感染者がいれば、感染拡大することは常識として知られています。イギリス領だった香港では4日で検疫を終了し、乗客を下船させました」その結果、香港では乗員乗客3,600人のうち、感染者は29人にとどめた。一方でダイヤモンド・プリンセス号は、2月24日の時点で600人を超える感染者と3人の死者を出したのだ。「いま明らかになっている感染者は氷山の一角でしょう。自覚のないままに感染した人が相当数いると考えるのが妥当です。水際対策の失敗が明らかになった時点で、より速やかに“感染を広げない”“死者を出さない”対策に舵取りするべきでした」一刻も早い“全員検査”が求められる。
2020年02月24日「すでに日本には、症状が出ていなかったり、風邪と誤認したりしている新型コロナウイルスの感染者が相当数いるとみられています。都心部では満員電車や雑踏を通じて、感染が爆発的に広がっている可能性が高い。日本で感染者が100万人を超えることもありえます」こう警鐘を鳴らすのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広先生。感染者100万人超は“現実的な”数字だという。「新型コロナウイルスの感染力は、インフルエンザと同等か、それ以上とみられている。’08年に行った国立感染症研究所のシミュレーションでは、1人の新型インフルエンザの患者が鉄道を利用するだけで、10日間で10万人以上の患者が増える可能性もあるとの結果が出ました」一刻も早い感染状況の把握が急務なのだが、厚生労働省は一定の基準を満たさなければ検査しないという姿勢を崩さない。2月20日時点では「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている」(高齢者や糖尿病などの基礎疾患等のある人、抗がん剤治療を受けている人などは2日)、あるいは「強いだるさや息苦しさがある」場合に限り、「帰国者・接触者感染センター」に連絡。必要に応じて、ようやく「帰国者・接触者外来」で検査を受けられるという流れなのだが……。「じつは“37.5度”も“4日間”というのも、何ら医学的根拠のない数字。厚労省が定めた日本でしか通用しない基準です。実際に中国では、症状が軽く軽い風邪だと誤認して外出した人からウイルスが広がったり、無症状の人が感染源になったりした可能性が報告されています」すでに日本でも、新型コロナウイルスに感染したまま、通勤をしたり、出張にいったりした人の存在が明らかになっている。「こうした“元気な患者さん”が、広範囲に感染を広げてしまう。感染者が繁華街を歩いていたり、通勤電車に乗りあわせたりしていることを想定する必要がある。すでに国内に万単位の感染者がいる可能性も高いのです。実際に、私が診察を行っている都内のクリニックには、ここ最近、原因不明の風邪のような症状を訴える若い患者さんが増えています。しかし検査条件に該当しないため、人との接触を避けるようにアドバイスするしかありません」ようやく政府は2月18日、国立感染症研究所や一部の民間研究機関に依頼をして、1日に最大3,800人の検査ができる体制を整備したと発表した。「この数では少なすぎる。1日20万件以上も検査できる能力を持つ民間企業もあるのにも関わらず、厚労省は検査数を絞っているように見えます。いま明らかになっている感染者は氷山の一角でしょう。自覚のないままに感染した人が相当数いると考えるのが妥当です。“疑わしい人”や希望者全員の検査が必要なんです」その背景には、自らの管理下で検査を行うことで影響力を維持したい厚労省の政治的思惑や、予算の問題がからんでいるという。感染者がクリニックに殺到したら、クリニックを舞台に感染が拡大するという懸念もあるが……。「検体採取キットを送り、患者から検査会社に郵送してもらえばいい。結果は、メールや郵送で伝えることができます。中国では実際に遠隔診断が行われています」だが、こうした提言に日本政府は頑なに耳を閉ざしたままだ。
2020年02月24日「風疹や百日咳は子どもの病気だと思っていませんか。実は大人もかかるんです。原因は小さいころに打ったワクチンの効果が薄れることにあります」こう話すのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広さん。小学生のころ、はんこ注射などの予防接種を受けた覚えのある人は多いだろう。でも、大人になってもう一度接種した人は少ないのではないだろうか。「平均寿命がまだ短かった昭和の時代なら、子どものときだけでよかったかもしれませんが、長寿社会の現代では通用しません。年齢を重ねるごとに、帯状疱疹(水ぼうそう)や百日咳、破傷風の抗体は減少します。50代以降は感染症の種類によっては、予防接種を受けていない人もいて、より感染リスクは高い。だからこそ“大人の予防接種”が必要なのです」そこで上先生に、50代以上こそワクチンを接種して予防したい感染症を教えてもらった。■百日咳「読んで字のごとく、約3カ月間、咳が続きます。国立感染症研究所(感染研)によると、’16年に感染した2,835人のうち25%は20歳以上。3週間咳が続いている人の約2割は百日咳が関与しているという報告もあります」グローバル化した現代では海外からの持ち込みもあるという。「世界全体の患者数は年間1,600万人。感染力も強く、流行するリスクはつねにあります」ワクチンの効果は4〜12年で下がるといわれている。「米国では成人にも接種が推奨されています」■帯状疱疹原因となるウイルスに初感染すると、全身に発疹が出る水ぼうそうになります。成人は子どもよりも重症化しやすく、髄膜炎や肺炎などを引き起こすこともある」1度かかった大人は感染しないと思っている人は多いが……。「ウイルスはずっと神経に潜んでいて、体内の抗体が減ると、再び暴れだし、激しい痛みをともなう帯状疱疹を引き起こします。抗ウイルス薬で治療しますが、痛みを抑えるのは難しい」50代以上に多く、80歳までに3人に1人が経験するとされるが、ワクチンで予防できる。「米国では有効なワクチンが開発されて、接種希望者が急増。品薄状態にまでなっています」■ジフテリア「鼻や耳などから感染した細菌の毒素が全身に回ると、心筋炎を発症することがあります。毎年の罹患者数は多くないですが、死亡率は約10%と、感染すると命に関わります」年齢が上がると、ジフテリアに対する免疫力は下がりやすく、感染研の報告では40歳を境に、予防に十分な量の抗体を持つ人の割合を示す抗体保有率が低下する。「米国では破傷風と同様、10年に1度の予防接種を推奨しています。40〜50歳をめどに検討してみましょう」■風疹「大人が発症しても症状は軽いですが、妊婦が感染すると、胎児に障害を引き起こすことがある。空気感染で、保菌者が少し離れた部屋にいてもうつります」米国の研究では、定期接種を2回行った子どもでも、成人になる前にワクチンの効果が薄れることが報告されている。「日本では30〜40代を中心に予防接種を受けていない人や1回のみの人がいます。今からでも遅くはないので、まずは不足分の接種をしてはどうでしょうか」紹介した感染症の予防接種はすべて成人でも受けられる。しかし、費用は自己負担しなければならない。「米国では成人も保険適用でほとんどのワクチンを接種できますが、日本はまだ、そこまで制度が充実していません。ただ、たとえばインフルエンザと3種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンを同時に打っても負担額は1万円程度。これで重篤な感染症を予防できると考えれば、高すぎるものではありません」自分だけではなく、大切な家族への感染を防ぐためにも、予防接種を検討してみよう。「女性自身」2020年2月18日号 掲載
2020年02月06日年齢を重ねるごとに減る抗体。風疹は2年から12年で予防接種の効果が下がるそう。子どものころに受けたからといって油断してると、思わぬ感染症にかかるかもしれないーー。「風疹や百日咳は子どもの病気だと思っていませんか。実は大人もかかるんです。原因は小さいころに打ったワクチンの効果が薄れることにあります」こう話すのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広さん。小学生のころ、はんこ注射などの予防接種を受けた覚えのある人は多いだろう。でも、大人になってもう一度接種した人は少ないのではないだろうか。「平均寿命がまだ短かった昭和の時代なら、子どものときだけでよかったかもしれませんが、長寿社会の現代では通用しません。年齢を重ねるごとに、帯状疱疹(水ぼうそう)や百日咳、破傷風の抗体は減少します。50代以降は感染症の種類によっては、予防接種を受けていない人もいて、より感染リスクは高い。だからこそ“大人の予防接種”が必要なのです」そこで上先生に、50代以上こそワクチンを接種して予防したい感染症を教えてもらった。■破傷風細菌が体内に侵入して毒素をばらまくと、体がしびれたり、筋肉が硬直する破傷風。死亡率は30%で、重症化すると、背筋が極端にこわばり、背骨が折れることもある。「米国と比べると日本の感染症は約10倍で、患者の大部分は55歳以上です。ワクチンは30年程度で効果が薄れるといわれている。また、’67年以前に生まれた人は定期接種制度がなかったため、免疫そのものを持たない人もいます」破傷風菌は土の中にいる菌で、全国どこにでも存在する。「菌は手や足の傷口から侵入します。ガーデニングが趣味の人は要注意。50歳以降は米国と同様に、10年ごとに予防接種を受けることをおすすめします」■日本脳炎感染しても発症するのはわずかだが、死亡率は20〜40%と高く、有効な治療法がない。国立感染症研究所の報告では30代後半から抗体保有率が急激に下がる。「さらに注意したいのは、北海道出身者です。日本脳炎ウイルスは豚が持ち、蚊が媒介して人に感染しますが、その蚊が北海道には生息していないとの理由で、’15年度まで“予防接種の必要がない地域”とされ、子どもへの定期接種もありませんでした」■肺炎球菌「高齢者の場合、重症化すると死に至ります。とくに患者の70%以上を占める65歳以上の高齢者には、強く接種が求められています」65歳以上は、成人用肺炎球菌ワクチンの定期接種対象者だ(公費負担、一部自費負担のケースも)。「ところが’14年の調査で、65歳の接種率はわずか約40%です」紹介した感染症の予防接種はすべて成人でも受けられる。しかし、肺炎球菌を除いて、費用は自己負担しなければならない。「米国では成人も保険適用でほとんどのワクチンを接種できますが、日本はまだ、そこまで制度が充実していません。ただ、たとえばインフルエンザと3種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)ワクチンを同時に打っても負担額は1万円程度。これで重篤な感染症を予防できると考えれば、高すぎるものではありません」自分だけではなく、大切な家族への感染を防ぐためにも、予防接種を検討してみよう。「女性自身」2020年2月18日号 掲載
2020年02月06日「武漢市内の駅構内では、マスクをしたスタッフが消毒する姿を見かけるし、街中では薬局やコンビニなど、いたるところでマスクが売り切れ状態。異様な雰囲気です」(中国に詳しいジャーナリスト)中国・武漢市から感染が拡大している新型コロナウイルス。日本でも16日、武漢に滞在していた30代男性の感染が認められた。その後、タイ、韓国、台湾、そしてアメリカでも感染者が出たことが報じられている。20日に北京市と上海市で感染例が確認されてから、日を重ねるごとに数百人単位で感染症の数は増加し続けている。この現状について、国立国際医療研究センターの忽那賢志が解説する。「感染者の多くは武漢で発症しており、ほかの地域で発症した人でも、武漢に渡航歴がある人に限られていたのですが――。21日に北京市で発症した患者の1人は、武漢に滞在していませんでした。つまり、別人からの“二次感染”が強く疑われており、“人から人へ移るウイルス”であることがわかったため、さらなる警戒態勢に入っています」アメリカに住む内科医の大西睦子さんが、現地の対応を語る。「CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、武漢からの飛行機の受け入れをロサンゼルスやニューヨーク、シカゴなど5カ所に絞り込みました。空港内では、症状や発熱のチェック、多くの感染者を出した生鮮市場への訪問の有無を問うアンケート調査も行われています」日本でも24日、外務省が武漢市含む湖北省全体への「渡航禁止」を勧告。各国が厳戒態勢を敷いているが、25日から中国圏は「春節」と呼ばれる大型連休に突入している。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんは、こう警告する。「春節では、中国国民の富裕層の大多数が旅行へと繰り出します。人気旅行先である日本にも、多くの中国人が来るでしょう。日本で新たな感染者が出ることも想定しておくべきです」危惧される日本国内での流行の被害に遭わないために、私たちはどのように対策すべきなのか。前出の忽那さんに、新型コロナウイルスについての疑問をぶつけてみた。【疑問1】どんな症状が出る?「潜伏期間は7日間ほど。初期症状は発熱やせきなどです。そしてだんだん呼吸困難に見舞われ、肺炎を引き起こします」(忽那さん・以下同)【疑問2】感染力は強いの?「人から人へ二次感染する原因は、くしゃみやせきなどによる飛沫感染と思われます。現在報告されている、二次感染に関しては、1〜2メートルほどの距離で、長時間一緒に過ごした濃厚接触によるものです」【疑問3】死に至るケースもある?現在のところ、致死率は約3%。ちなみにSARSの致死率は9.4%、MERSは約34%。2つと比較して、今回の新型ウイルスは致死率は低いとされているが、現在重症化しているケースで死者が増えれば、致死率も上がる。「特に注意したいのは高齢者です。1人目の死者である61歳男性は、肺疾患と悪性疾患の持病があり、4人目の89歳男性は、糖尿病や心疾患の持病がありました。持病のある高齢者が重症化しやすい傾向にあります」【疑問4】どんな治療法がある?「基本的には、熱があれば解熱剤、脱水があれば水分補給などといった、対症療法にとどまってしまいます。特効薬はなく、抗生剤も効き目がないのです」せき、発熱などの違和感を感じたら、すぐに病院に連絡をとり、そのうえで通院し、診察してもらうようにしよう。「女性自身」2020年2月11日号 掲載
2020年01月30日中国国内での感染者・死者が増え続けている新型ウイルス。どのようにすれば感染を防げるのか?感染症医たちが疑問に答える!「武漢市内の駅構内では、マスクをしたスタッフが消毒する姿を見かけるし、街中では薬局やコンビニなど、いたるところでマスクが売り切れ状態。異様な雰囲気です」(中国に詳しいジャーナリスト)中国・武漢市から感染が拡大している新型コロナウイルス。日本でも16日、武漢に滞在していた30代男性の感染が認められた。その後、タイ、韓国、台湾、そしてアメリカでも感染者が出たことが報じられている。20日に北京市と上海市で感染例が確認されてから、日を重ねるごとに数百人単位で感染症の数は増加し続けている。この現状について、国立国際医療研究センターの忽那賢志が解説する。「感染者の多くは武漢で発症しており、ほかの地域で発症した人でも、武漢に渡航歴がある人に限られていたのですが――。21日に北京市で発症した患者の1人は、武漢に滞在していませんでした。つまり、別人からの“二次感染”が強く疑われており、“人から人へ移るウイルス”であることがわかったため、さらなる警戒態勢に入っています」アメリカに住む内科医の大西睦子さんが、現地の対応を語る。「CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、武漢からの飛行機の受け入れをロサンゼルスやニューヨーク、シカゴなど5カ所に絞り込みました。空港内では、症状や発熱のチェック、多くの感染者を出した生鮮市場への訪問の有無を問うアンケート調査も行われています」日本でも24日、外務省が武漢市含む湖北省全体への「渡航禁止」を勧告。各国が厳戒態勢を敷いているが、25日から中国圏は「春節」と呼ばれる大型連休に突入している。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんは、こう警告する。「春節では、中国国民の富裕層の大多数が旅行へと繰り出します。人気旅行先である日本にも、多くの中国人が来るでしょう。日本で新たな感染者が出ることも想定しておくべきです」危惧される日本国内での流行の被害に遭わないために、私たちはどのように対策すべきなのか。前出の識者たちに、新型コロナウイルスについての疑問をぶつけてみた。【疑問1】ワクチンは完成するの?「SARSが流行したとき、中国政府が情報公開を控えたことで、世界で約800人の死者を出してしまいました。その過去があってか、今回中国政府は早々にウイルスのゲノム情報を公開。しかし、世界の医療機関が取り組んでも、完成は早くて1〜2年後になってしまうでしょう」(上さん)【疑問2】空港の検疫で感染者は止められる?「日本の空港では、発熱チェックなどで検疫体制をとっています。しかし、先日国内で発見された感染者は、解熱剤を飲んだことで、検疫をパスしてしまっている。空港ですべての感染者を止めるということは、非常に難しいのです。医療機関や高齢者施設は“日本国内にも感染者がいる”ということを前提に、重症患者は隔離するなど、院内感染を防ぐことが最重要課題となります」(上さん)【疑問3】では、予防に有効なのは?「現段階で、“これが新型ウイルス対策になる”という特別な対策はありません。ただ、飛沫感染ということもあり、インフルエンザが流行している季節でもあるので、人混みを避け、マスクをすることが大事です。また手洗い、うがい、アルコール消毒を丁寧にすることが、ウイルス対策になります」(忽那さん)感染者は日増しに増えているものの、感染ルートはたどれている状況だ。「広範囲で一気に流行する、という過度の心配は不要だと感じています。ですが、感染対策は入念に行うようにしてください」(忽那さん)「女性自身」2020年2月11日号 掲載
2020年01月30日放漫経営がはびこり、全国で97%強の公立病院が赤字となるなかでも、黒字化を遂げる公立病院がある。そんな病院の経営努力は私たち利用者にもメリットがあるようでーー。先月、厚労省が再編。統合の検討が必要な全国424の公立・公的病院を実名公表し、波紋が広がっている。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが解説する。「リストに挙がった病院の近隣に住む人たちの不安は広がり、病院からは実名公表は乱暴だと、反発の声も上がっているようです。確かに不採算であっても周産期、救急、小児、僻地医療などを守るのは公立病院の使命です。一方で、赤字が出ても税金で黒字化されるからという“甘え体質”があることも否めません」では、赤字の公立病院はどれだけあるのか。ウェブサイト「病院情報局」が発表する、公立病院が医業収益だけでどれだけ自立しているのかを示す「純医業収支ランキング」によると、全国776の病院のうち、なんと赤字病院は756、合計赤字額は5,600億円を超える。一方で、全体のわずか3%にも満たないが、黒字を達成している病院が20ある。【1位】群馬県・公立七日市病院/収支率:7.00%、黒字額:1億2,500万円【2位】岐阜県・大垣市民病院/収支率:5.60%、黒字額:18億1,900万円【3位】新潟県・南部郷厚生病院/収支率:3.30%、黒字額:700万円【4位】鹿児島県・垂水中央病院/収支率:3.10%、黒字額:6,400万円【5位】岩手県・岩手県立中部病院/収支率:3.00%、黒字額:3億5,500万円【6位】鹿児島県・霧島市立医師会医療センター/収支率:2.70%、黒字額:1億3,500万円【7位】愛知県・春日井市民病院/収支率:2.20%、黒字額:3億4,200万円【8位】岐阜県・美濃市立美濃病院/収支率:2.10%、黒字額:5,200万円【9位】愛媛県・宇和島市立津島病院/収支率:2.00%、黒字額:2,400万円【10位】大分県・大分県立病院/収支率:1.80%、黒字額:2億8,600万円【11位】京都府・京都中部総合医療センター/収支率:1.50%、黒字額:1億5,000万円【12位】群馬県・公立富岡総合病院/収支率:1.30%、黒字額:1億1,700万円【13位】石川県・公立羽咋病院/収支率:1.30%、黒字額:4,200万円【14位】三重県・松阪市民病院/収支率:1.20%、黒字額:1億1,300万円【15位】山口県・光市立大和総合病院/収支率:0.80%、黒字額:1,800万円【16位】岡山県・備前市国民健康保険市立吉永病院/収支率:0.70%、黒字額:1,200万円【17位】三重県・市立四日市病院/収支率:0.60%、黒字額:1億1,700万円【18位】滋賀県・近江八幡市立総合医療センター/収支率:0.60%、黒字額:6,700万円【19位】群馬県・伊勢崎市民病院/収支率:0.10%、黒字額:700万円【20位】岩手県・岩手県立中央病院/収支率:0.00%、黒字額:600万円そこで、今回、赤字経営が常態化する公立病院のなかで、業績を回復させる病院の秘密に迫った。ランキング入りした富岡地域医療企業団が擁する公立富岡総合病院と公立七日市病院は、経営努力により黒字化を達している。「現場の事情を反映した効率性の高い、柔軟な経営を行うため、平成30年より、経営と医療現場のどちらにも精通した者をトップに据えて、経営を見直しました」こう語るのは、公立富岡総合病院の事務部長・新井良一さんだ。「診療費の改定は2年ごとに行われ、非常に複雑なため、これまで請求漏れなど取りこぼしがありました。そこで、事務と医療現場の連携を深め、適正な請求ができるようにしております」医療機材の購入に関しても。「相見積もりを取り、価格交渉しています。ときには、『安すぎる』と業者が私のところまで不満を漏らしに来ることもあるほどです」ほんの3キロほど離れた両病院ならではの連携も功を奏している。「それぞれの病院で異なっていた白衣を統一し、一括リースすることで、コストを抑制しました。医薬品や診療材料なども、両病院でまとめて購入しています。また、安全を確保しつつ、後発医薬品への切り替え、診療材料の見直しなども進めています。さらに、簡易的なものを除き、検体検査は富岡総合病院で行い、検査装置や技師を集約しました。一方で、結果のやり取りはパソコンで行うため、検査時間は今までとほとんど変わりません」経営が改善し黒字化されると、精度の高い最新医療機材の購入など、市への申請がしやすくなる。「平成29年度には、PET-CT装置の導入で、がんの早期発見から治療までの万全なフォローアップ態勢を整えました。今年度もCTを上位機種に更新。血液浄化室の近くにも人工透析患者専用の駐車場を整備し、利用者の移動の負担が減るようにしています」平成29年度、18億円もの黒字化に成功しているのは大垣市民病院。経営アドバイザーを務める千葉大学医学部附属病院副病院長の井上貴裕さんは、黒字化の要因に高い生産性を挙げる。「病院は収入に対する人件費率が55%を超えると、赤字になりやすいといわれていますが“大垣”の場合、人件費率は約40%と低い。では、給料が安いのか、というとそうでもなく、職員を適切に配置することで、医療の質を保ちながら、医師や看護師1人が受け持つ患者数を多くして、高い生産性を維持しているのです」さらに、ベッドの回転率を上げる努力も行っているという。「病気ごとの平均在院日数までに、70%の患者さんが退院できることを意識して、新規患者を受け入れる態勢にしています」無駄な入院がなくなったことで、救急搬送をより受け入れられるように。また、入院期間の短縮、差額ベッド代などの節約といった形でも患者に還元されている。井上さんは、経営参加している市立札幌病院でも累計赤字を10億円も減らしている。「公立でも、十分に経営努力できる余地はあるのです」患者にもメリットのある公立病院の経営努力。赤字病院にもぜひ、経営にメスを入れてもらいたい。
2019年11月01日先月、厚労省が再編。統合の検討が必要な全国424の公立・公的病院を実名公表し、波紋が広がっている。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが解説する。「リストに挙がった病院の近隣に住む人たちの不安は広がり、病院からは実名公表は乱暴だと、反発の声も上がっているようです。確かに不採算であっても周産期、救急、小児、僻地医療などを守るのは公立病院の使命です。一方で、赤字が出ても税金で黒字化されるからという“甘え体質”があることも否めません」では、赤字の公立病院はどれだけあるのか。ウェブサイト「病院情報局」が発表する、公立病院が医業収益だけでどれだけ自立しているのかを示す「純医業収支ランキング」によると、全国776の病院のうち、なんと赤字病院は756、合計赤字額は5,600億円を超える。一方で、全体のわずか3%にも満たないが、黒字を達成している病院が20ある。【1位】群馬県・公立七日市病院/収支率:7.00%、黒字額:1億2,500万円【2位】岐阜県・大垣市民病院/収支率:5.60%、黒字額:18億1,900万円【3位】新潟県・南部郷厚生病院/収支率:3.30%、黒字額:700万円【4位】鹿児島県・垂水中央病院/収支率:3.10%、黒字額:6,400万円【5位】岩手県・岩手県立中部病院/収支率:3.00%、黒字額:3億5,500万円【6位】鹿児島県・霧島市立医師会医療センター/収支率:2.70%、黒字額:1億3,500万円【7位】愛知県・春日井市民病院/収支率:2.20%、黒字額:3億4,200万円【8位】岐阜県・美濃市立美濃病院/収支率:2.10%、黒字額:5,200万円【9位】愛媛県・宇和島市立津島病院/収支率:2.00%、黒字額:2,400万円【10位】大分県・大分県立病院/収支率:1.80%、黒字額:2億8,600万円【11位】京都府・京都中部総合医療センター/収支率:1.50%、黒字額:1億5,000万円【12位】群馬県・公立富岡総合病院/収支率:1.30%、黒字額:1億1,700万円【13位】石川県・公立羽咋病院/収支率:1.30%、黒字額:4,200万円【14位】三重県・松阪市民病院/収支率:1.20%、黒字額:1億1,300万円【15位】山口県・光市立大和総合病院/収支率:0.80%、黒字額:1,800万円【16位】岡山県・備前市国民健康保険市立吉永病院/収支率:0.70%、黒字額:1,200万円【17位】三重県・市立四日市病院/収支率:0.60%、黒字額:1億1,700万円【18位】滋賀県・近江八幡市立総合医療センター/収支率:0.60%、黒字額:6,700万円【19位】群馬県・伊勢崎市民病院/収支率:0.10%、黒字額:700万円【20位】岩手県・岩手県立中央病院/収支率:0.00%、黒字額:600万円「“公立病院だから、赤字があって当たり前”という考えが、コスト意識の低さを招くんです」そう語るのは大阪急性期・総合医療センターなど5つの病院を統括する大阪府立病院機構の理事長・遠山正彌さんだ。「公立病院の場合、医療機器は民間病院と比べ、割高な見積もりになることもありますし、たとえ安くても、維持費を高く設定されていることもあります」ほかにも、経営赤字を招く公立病院ならではの理由があるという。「公立病院の事務員は役所からの出向です。なので、せっかく病院経営を学んでも、2〜3年で異動になるため、人材が育てにくい。また、医師の給料は成果にかかわらず、年功序列で上がっていくので、医師のモチベーションが低いケースも。かつては、自分の診療科のベッドが埋まると、他科のベッドを調整せずに、入院を断ってしまう医師もいました」そこで、遠山さんはまず“患者ファースト”の精神を徹底した。「医師の個人的な都合が反映されないよう、すべてのベッドを管理する担当者を立てました。また、救急は基本的に断らず、国際がんセンターでは、紹介状なしの駆け込みでも受診できるようにしています」まず患者の信頼を回復。コスト意識を持たせ、5つの病院で130億円あった赤字は、約半分まで減ったという。
2019年11月01日