「奈美恵のおかげで今の私がある」“戦友”が辿り着いた現在
居場所がなくなったアンナさんは、横浜に引っ越し、’88年に正幸さんと離婚した母と暮らし始めた。鬱々とした日々だった。父とはもうやっていけない。アクターズをやめたい。でもやりたいことが見当たらず、横浜校でレッスンを続けていた。
ダウン症の子どもたちと出会ったのは、そんなころ。日本ダウン症協会からの依頼があり、’02年8月のイベントで、子どもたちが踊るダンスを教えることになったのだ。
「最初は不安もありました。
正直、怖さもありました」
ダウン症児は体力がない。心臓が弱い。激しい運動は避けるべき。そんなネガティブな情報しか入ってこなかった。ところが、最初のレッスンで、不安は一気に吹き飛んだ。アンナさんは、まず、お手本として踊ってみせた。すると、子どもたちはあちこちで立ち上がり、勝手に踊りだしていた。笑顔がはじける。
いつまでもダンスをやめない。
「よっぽど楽しかったんでしょう。私は忘れかけていたんです。ダンスって楽しいんです。それを子どもたちが思い出させてくれました」
イベント終了後、生徒やお母さんたちの前で、「これから、この子たちのために生涯かけて、一緒にダンスをやっていきます」