「日本一クレームがくる辞書」『広辞苑』改訂担当者の苦難
製本機械の限界である8センチという厚さに収まるように薄い紙にしたうえで、言葉の意味の説明の字数を削り、表現を磨く作業を続けたからです」(平木さん)
入社2年目から、辞書作りひと筋。三浦しをんの小説『舟を編む』(光文社文庫)の、辞書編集部員である主人公のモデルともいわれる平木さんは、辞書の話になると、少年のように目を輝かせた。
言語学者で杏林大学の金田一秀穂教授(64)は、辞書作りの大変さについて次のように語る。
「いろんな辞書を作っていた父(国語学者の故・金田一春彦氏)は『愛』という言葉がいちばん大切だと話していました。普通の人は、辞書の最初のページに出てくる『愛』を調べて、その説明が、その人にぴたっとハマると、喜んでくれるはず、と。そこで父は一生懸命、愛について考えていました。でも『愛とは何か?』と言われたら、膨大な説明が必要。ページ数が限られているなか、すべて書くわけにはいかないから、いつも頭を悩ませていました」
第七版の執筆者の1人として名を連ねている、日本語学者の顔をもつ自称“辞書芸人”で漫才コンビ「米粒写経」