「中学生のころかな、友達は『もう親が買ってきた服なんてダサくて着れねえよ』って言ってたけど。僕は母がくれるライダースジャケットとかラバーソールとか古着とか、むしろ喜んで着てましたね。ファッションだったり、音楽だったり、そういうセンスという面は、母からの影響が、とても大きかったと思います」(忠信さん)
忠信さんの言葉に、順子さんはうれしそうに「うん、うん」とうなずいている。ところが……。
「でも、幼い僕と兄ちゃんを家に置いて、夜中に父と踊りに出かけちゃったり……とんでもないっていうか、ちょっと普通じゃない母親ではありましたよね(笑)」(忠信さん)
「普通じゃない母」は神奈川県横浜市で生まれ育った。ベトナム戦争真っただ中の’60年代後半。米軍住宅が林立し、米兵であふれかえった本牧や中華街が彼女の青春の舞台。10代のころの順子さんは“武勇伝”がいまに語り継がれるような不良少女だった。
若くして結婚し、2人の男の子に恵まれた。