2018年3月31日 16:00
突然の左遷を好機へと変えた「服薬補助のゼリー」女性開発者
1つ目は、英会話教室に通うこと。2つ目は、製剤の学問をさらに深めることだった。
現在、龍角散の顧問を務める名城大学名誉教授・砂田久一さんは、「福居さんに初めてお会いしたのは、服薬補助ゼリーを販売したころでした。彼女は、それまでの実験データのことを一生懸命、話すんですね。『そんなにデータがあるなら、学術論文にしないといけないよ』と話しました」と語る。
福居さんは毎週末、新幹線で名古屋に通い、砂田教授の指導を受けた。
「ホテル代も新幹線代もかかるから、学費はタダでお願いしたいんですけど」
そんなずうずうしい願いまで受け入れてくれた砂田先生のもとに、会社に隠れて、福居さんは通い続けた。2年をかけて、薬の効能などを表す計算式を作り、英語で論文を書いた。
同じタイミングで、本社への異動も決まった。藤井社長が、問題のあった古参の役員を罷免し、経営陣を一新したのだ。’02年10月、本社に戻ってからも、福居さんは砂田教授の薬品物理化学教室に通い、’08年までに5本の論文を英語で仕上げて、博士号を取得した。