村上春樹の世界を表す、新しい演劇表現を目指して 那須凜が挑む日英合作『品川猿の告白』
日本初演の後はグラスゴーへ
――村上文学のファンの方々も、期待を込めてこの舞台を注視しているのではないでしょうか。
きっとそうですよね。「村上春樹作品の大ファンの人たちのことを“ハルキスト”と呼ぶんですよ」とマシューさんたちに教えたら、それは知らなかったと言っていました(笑)。実はグラスゴーでのワークショップで、マシューさんが「上演出来ないかもしれない」と言うくらい、行き詰まった時があったんですよ。原作をリスペクトしながらも、舞台を面白くするためにこんなふうに改訂していいのだろうかと、すごく葛藤していたんですね。でも最後にはマシュー自身が「原作に最大限のリスペクトを持つ、それは当然のこととして、ここから原作に立ち戻ることはやめよう。僕たちの『品川猿の告白』を作ることにシフトしましょう」と心を決めたので、私たちも覚悟を決めて動き出しました。批判や不満は出て来るだろうと思いますけど、それよりも「村上春樹の世界を表す、こんな新しい演劇表現があるんだ!」と感じていただける割合の方が絶対に多いと思うので、それを信じて突き進みたいと思います。
――日本初演の後は、グラスゴーでも上演が予定されていますね。