村上春樹の世界を表す、新しい演劇表現を目指して 那須凜が挑む日英合作『品川猿の告白』
と感じると思いますけど、観ていくうちに違和感がなくなってくるのではないかなと。マシューさんは“ヒューマンランゲージ”と呼んでいるんですけど、村上春樹の世界ではすべての言語が平等に通じ合う、そういった感覚にお客さんがなってくれたらいいなと思うんですよね。
――国内でも海外でも熱く支持されている村上春樹さんの作品世界については、どのような印象をお持ちでしたか?
私もこれまでに何作品も読んでいて、とても面白い世界だなと感じています。ただ、村上文学を舞台化したものをいくつか拝見してきて思うのは、村上さんの描く世界を舞台で伝えるのは、やっぱりものすごくハードルが高いんだなと。なので私は最初、村上作品の舞台化に対して、あまり前向きな気持ちではなかったんですね。でもマシューさんはとても村上春樹の世界を愛していて、ほとんどの本を読んでいらっしゃるそうなんです。そしてこの『品川猿の告白』を、単に小説を舞台にしたいだけではなく、村上春樹さん独特の抽象的でありファンタジックな世界観、でもそれは潜在意識に根差したものであるということを絶対にこぼすことのないように、ヴァニシング・ポイントの解釈で作り上げたいと。