「青鞜」編集部を描く二兎社の新作に永井愛が込めたものとは?
大手メディアの報道姿勢、その現場を覆う奇妙な空気の存在に疑問を呈し、鋭く斬り込んだ舞台『ザ・空気』(2017年)と『ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ』(2018年)。二兎社が放った強烈な問題提起二発のその後は、やはりver.3か……!?と思いきや、新作『私たちは何も知らない』はまた別の風合いだった。物語の舞台となるのは、明治44年に発刊された女性文芸誌「青鞜」の編集部だ。「青鞜も、メディアといえばメディアだなと思いましたけどね」と笑う、作・演出の永井愛に話を聞いた。
「青鞜に目を向けたきっかけは、森まゆみさんが書かれた『「青鞜」の冒険女が集まって雑誌をつくるということ』という本です。青鞜は平塚らいてう、伊藤野枝などが作った雑誌ということは知っていたけれど、それが一体どういうものなのか、詳しくは知りませんでした。森さんご自身も地域雑誌を立ち上げて編集されていた人で、当時の女たちがいかにして青鞜を作ったか、それがどういうことなのか、編集部全体のことをきっちりと書かれているんですね。それを読んで、大逆事件などが起こって閉鎖的な方向に進もうとしていた明治のあの時代に、女たちだけで雑誌を作ったんだ……、それってすごいことでは!?とあらためて興味を持ったんです」