2024年4月5日 17:00
『ブランクーシ 本質を象る』アーティゾン美術館で開幕 パリのアトリエをイメージした展示空間も
男女の堅い結びつきを単純化したフォルムで表した造形は素朴で、親密で、一度見たら忘れられない存在感を放っている。
展示風景コンスタンティン・ブランクーシ《眠る幼児》1907 年(1960/62 年鋳造)豊田市美術館
隣に置かれた《眠る幼児》もまた、転換期の画期的な作品だ。彫刻は伝統的に台座の上に立てて提示されるが、ここでは重力から解放された眠りの状態にある幼児の頭部だけが直置きされている。そして、この独立した頭部像とその新たな提示の仕方は、続く《眠れるミューズ》にも引き継がれていく。
展示風景右手前に、コンスタンティン・ブランクーシ《眠れるミューズ》1910-1911年頃大阪中之島美術館(同作品は、5月12日までの展示)
ごくわずかな顔立ちの痕跡をもつ卵形の頭部。仮面を思わせる頭部像は、突然生まれたものではないという。当時のパリで関心を集めていたアフリカ美術の仮面や、ギメ美術館で見たインドや東アジアの仏頭なども源泉となった。そしてこのミューズ像は、素材やフォルムを少しずつ変えて展開されていく。そのいくつもの作例を自由に回遊しながら見られるのも、この広い展示室の魅力的なところだ。
展示風景コンスタンティン・ブランクーシ《ミューズ》1918年(2016年鋳造)