2022年2月15日 12:00
悲しみを抱えた夫婦がたどり着く先は― 『ラビット・ホール』小島聖×田代万里生対談
小島最初にこの舞台のお話をいただいて、戯曲を読み、映画も観ました。その時は、どこか他人事のような感覚でいたと思います。今、稽古を重ねて一つひとつの言葉の意味を深く考え出したら、もうどうしたらいいのか分からないほど、いろんな感情が押し寄せて来て……。子どもを失ってしまった、その悲しみは抱えているけれど、だからと言ってこの夫婦は日々暗い生活をしているわけではない。日常を暮らしながら、ふとした時に感情が揺さぶられる。そういった気持ちの強弱を表すことがとても難しいな〜と思いながら今、稽古をしています。
田代僕は、日常を描いた作品というものをこれまであまり経験したことがなかったんですね。ミュージカルだったらしっかりウォーミングアップをして、体も声も整えて臨みますが、この作品ではあまり気合を入れ過ぎると「声が大き過ぎる」と言われたり(笑)。
共演の皆さんは、日常から稽古に入る、その境目がないくらいに自然にお芝居をされていたので、僕にとっては本当に新しい世界が広がったなという感覚です。作品に関しては、僕も最初は、何かを演じなきゃいけないと思っていたんですが、実際にお子さんがいらっしゃる聖さんをそばで見ていると、だんだん他人事ではなくなって来て。