藤原季節「この物語にすごく救われた」映画『DIVOC-12』インタビュー
――それが演出にも反映されているのですか?
出会った瞬間から演出が始まっているような感じでした。この人の前では絶対に嘘がつけないから、もし僕が歩の状態でいられなかったらおしまいだ、と思って。カメラの回っていないときでも、(撮影期間中は)ずっと歩の状態でいました。
多幸感に満ち溢れていた
――車内で人の死に際の話をしながら、冬海さんとハーゲンダッツを食べるシーンがとても良かったです。あのときはどんな感情で演じられていたのでしょうか?
これは歩のバックグラウンドに関わるのですが、映画の中で描かれてはいないんですけど、このお話はもともと三島さんが東北で震災のボランティア活動をしているときに思い付いたものでもあって、歩は東北出身で、親族を震災で亡くしているんです。
もともとは長編で撮ろうと思っていたものを、今回、短編にしたこともあって、そういう過去は描き切れてはいないですけど、それでああいう言葉を言っているんです。だから、観ている方には歩のバックグラウンドは伝わらなくても、何か誰かの心に残ればいいな、とは思っていました。
――それまでは歩に無機質な感じがあったのですが、あの瞬間、歩の人としての片鱗が見えた気がしました。