2023年10月2日 12:00
【おとなの映画ガイド】真木よう子、井浦新ならではの大人の色気漂う空気感、 謎のリリー・フランキー…人間の心の奥底に迫った今泉力哉監督の異色作『アンダーカレント』
いわば、未来の映画化を先取りしたような”当て書き”だったのだが、どこか不真面目そうで、いいかげんに見えるけれど、本質を見ているあたり、まさにリリーさんがまとう雰囲気を体現している。
夫のことはわかっていたつもりだと言うかなえに、山崎が問いかける。
「人をわかるってどういうことですか?……」
逆にいえば、人は、どんなに親しい人でも、家族でも、自分のことですら、本当にどこまでわかっているのか。
いつもの軽やかな今泉監督作品とは、全体の雰囲気も多少異なる本作なのだが、リリー・フランキーが登場するとどこかユーモラスに変調するのは、今泉作品っぽい、とも感じられる。
月乃湯で働くことになった堀とかなえの関係も微妙な雰囲気を漂わせる。多くを語らない井浦には男の色気を感じる。真木よう子の持つ色っぱさも含めて、このふたりには、おとなの緊張感がある。この距離、例えば、個人的には、ミア・ファロー主演の『フォロー・ミー』を思い出した。
映画の舞台挨拶での、真木よう子と江口のりこのやりとりが、ワイドショーやネットで話題になった。ふたりは旧知。真木が江口のことを「親友です」と話したのに、江口が「つきあいが古いだけで、親友ではありません」