『ディスクレーマー』アルフォンソ・キュアロン監督インタビュー「本当に信じられるものは何なのか?」
彼の物語は彼の視点から描かれるのです。一方、キャサリンの物語は“二人称”です。画面にいるキャサリンはだいたいフルショットで、観客は彼女の行動を傍観者として見ています。そして、キャサリンの家族や他のキャラクターを描く時は“三人称”の視点になります。手持ちカメラを使ったり、ズームレンズを駆使しました。さらに劇中に登場する小説の世界を描く際には、温かみのある画面で、とてもロマンティックな物語が語られ、甘い旋律がやりすぎなぐらい鳴り響くのです。
実際の撮影ではスティーヴンの物語をブリュノ・デルボネルが、キャサリンの物語をチーボ(エマニュエル・ルベツキ)が担当しました。ふたりはお互いの撮影現場には一度も足を運ぶことはありませんでした。
時にはそれぞれの物語が“同じ時間”に起こっている場合があります。その時には気温や天気は同じはずです。さらに同じ場所の“現在”と“過去”を描く場合もあります。ですから、ふたりの撮影監督がそれぞれに撮影したものに連続性を持たせなければならない。これは大きなチャレンジでした」
キュアロン監督はなぜ、こんなにも面倒なことをしたのか?理由は、異なる語りの形式を並び立たせることが本作のテーマを描く上で必要だったからだ。