2023年7月12日 12:00
「俳優が演じることで“本音”に迫ることができる」監督が語る『遠いところ』
「ノンフィクションやドキュメンタリーでは実際に女の子だったり当事者に話を聞くことで、事実関係の部分を突き詰めて語ることができると思いますが、彼女たちは本心や本音までは話してくれないんです。だからこの映画では、脚本をもとに役づくりするのではなく、俳優さんにも実際に現場に入ってもらって、僕らと一緒にフィールドワークすることで、俳優とそこにいる女の子たちをコネクトさせて、彼女たちの本音が見えてきたところで映画づくりを始めました。
俳優さんが演じることで、彼女たちの奥底にある本音に迫ることができる。これこそが映画にしかできない、ドキュメンタリーや学術的な研究ではできないことだと思います」
「人間を描くことが自分の映画の根幹にある」
監督が語る通り、本作は調査した事実の再現ではない。作り手の訴えたいことを役者に代弁させることもしない。俳優が過酷な環境で暮らす人々と並走し、そこで生まれた感情を漏らすことなくレンズで掬い取ろうとしたのだ。
そのため、本作ではカメラは俳優と距離をとり、劇的な盛り上げや観客の感情を誘導するようなことはしていない。時に残酷にも思えるほどフラットなポジションにカメラを置くことで、彼女たちの生々しい感情が容赦なく描き出されるのだ。