2023年7月12日 12:00
「俳優が演じることで“本音”に迫ることができる」監督が語る『遠いところ』
「自分の母親もシングルマザーでしたし、自分の父は母のことも僕のことも殴ったりしていたので、ここにある話はすごく身近にあることだと思ったんです。今回の舞台は沖縄ですけど、そこにある問題は一緒なんですよね。でも、なぜ沖縄という場所でこのような状況が可視化されているのか……なぜかはわからないですけど『自分がやらなければならない』という使命感のようなものが途中から芽生えていました。
僕はおばあちゃんが子供の頃から週1で映画に連れて行ってくれて、思い返すとあの経験があったから自分はいま映画を撮っていると思うんですけど、そんな経験すらない彼女たちはこの先、どうやって自立するんだろう? いまはスマホ一台で実家を出られる時代ですから、“自立とはいったい何なのか?”について考えますし、核家族化が進む中で、困った時に誰に頼るのか? という問題もある。だから、沖縄の問題ではあるんですけど、現代の日本そのものにコネクトできる題材だと思いました」
そこで監督は映画の基本的なあらすじ(プロット)を用意して、沖縄で長い時間をかけて調査と準備を行なった。その過程で作品は当初の想定とは異なる形で姿を見せ始める。
「最初はジャーナリストを主人公にしたプロットを用意して沖縄に行ったんです。